ロマンティック・クリムゾン

むう、ポリフォニカのメインの話のはずなのに、この普通感はなんだ!?

ストーリー

主人公のフォロンは強大な力を持つ精霊・コーティカルテと契約をしている神曲楽士。フォロンは神曲楽士としてツゲ神曲楽士派遣事務所に勤めているのですが、そこにある時一つの仕事が舞い込んできます。カティオムという少年からの依頼でした。それは「シェルウートゥという人の事が好きになってしまったけど、どこの誰だかも分からないので、調べて欲しい」という探偵のような仕事だったのですが、そこには人と精霊の間にある大きな溝をさらけ出す依頼となって行くのでした・・・。
シェアードワールド神曲奏界ポリフォニカ」で繰り広げられるアクションストーリーの第2巻。

おうおう

1巻と印象が変わった所がありますね〜。

  • フォロンは・・・時間の経過のせいか、神曲楽士として働く姿がどうに入って来てますね。発言なんかもなかなかしっかりとした結果を求めるプロっぽくなって来ていて、1巻の時に目立っていた弱々しさがちょっと無くなった感じがしますね。仕事中に理由があって「中止だ」なんて発言は、慣れてこないとなかなか出来ませんしね。ただ、報告/連絡/相談は社会人の基本だからね? ・・・まだまだ未熟で色々悩んだりしているみたいですが、まあこの調子ならどんどんしっかりしていってくれそうな気配が。
  • コーティは・・・えー、その強さとかより駄目さ加減が俄然ピックアップされているような気がします。これはもう引用しないとイカンでしょうな。

「よし。フォロン――今すぐこの事務所を辞めろ」
「はあ?」
「手遅れにならない内にこの事務所を辞めるのだ。さもなくばあの厚かましい金髪娘はいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでも、お前についてくるぞ!?」

「……しようと思えば出来るんだからな」

「フォロン」
「……何?」
「抱っこ」

なんというか、上級の精霊は嫉妬深いですな。とにかく「独占したい」「独占したい」「独占したい」「独占したい」独占禁止法があったらとっくの昔に逮捕です。……神曲楽士と精霊の関係は男女関係に近いですねえ。
ポリ黒とかのマナガとマティアの関係はそうは見えないので今までそうは思っていなかったんですけど、ポリ白を読んだりすると「ああ、こいつらバカだ……しかも犬のようになつっこい手に負えないタイプのバカだ……。しかしそれがいい」とか思うようになりました。
コーティカルテは犬というよりはネコ科の生き物っぽいですけど、まあそんな事は些細な話かも知れませんな。

ところで

話の方はまたしてもえげつない背景があったりする訳ですが、その辺りはこの紅シリーズ(赤?)と黒に共通して流れる大きな流れがあるみたいなんで、基本的に変わらないですね。
しかしまあ、黒は警察、こっちはただの神曲楽士のいる事務所なんでなんでもあり、という所が大きな違いでしょうかね。「なんでもあり」な代わりにこの作品特有の特色を打ち出すのに苦労している感じもあるような無いような・・・ポリフォニカシリーズの中心の話になっている関係上、なかなか無茶もし辛いでしょうし、その辺は作者の苦労が見え隠れするような感じもしたり。
作品単体では黒や白と比較した場合に評価がきつめになってしまっていますが、基本をしっかり押さえて大きな脱線もしないようにしつつ(中心の話が波瀾万丈の展開だと周りが困るでしょうし)、一本の作品として成立させている作者の能力には敬意を表したい所ですね。

総じて

星3つかな。
でもこのままでも良いかなって気もしないでもないです。ポリフォニカシリーズの中心の作品として淡々と続けていくのもありかもね・・・なんて思ったり。
この話だけで言えば、恋愛ものという背景は結構好きですし、コーティカルテのはっちゃけっぷりが読めたのは収穫でしたね。実際にはキネティックノベルとして展開している最中にその辺りは実は十分書かれているのかもしれませんが、本から入った私にとっては初めてでしたし、そのあたりは美味しく頂かせてもらいました。
神奈月昇氏のイラストは・・・やっぱり微妙に好きになれないなあ。ヘタなんと違うかなあ・・・。場面の選択はそれ程悪く無いと思うんだけど、動きが無いというか、緊張感のあるべきシーンで緊張感が出ていないというか。
キャラの描き分けが上手く無いと思う。口絵カラーの登場人物の集合イラストも、なんか誰が誰だか分かりにくい。多分みんな同じ表情をしているような気がするなあ。