BLACK BLOOD BROTHERS(4)

BLACK BLOOD BROTHERS〈4〉ブラック・ブラッド・ブラザーズ 倫敦舞曲 (富士見ファンタジア文庫)
BLACK BLOOD BROTHERS〈4〉ブラック・ブラッド・ブラザーズ 倫敦舞曲 (富士見ファンタジア文庫)あざの 耕平

富士見書房 2005-11
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この話は特区での話から時代を遡る事約100年、イギリスのロンドンを舞台にした話となっています・・・。

ストーリー

非常に簡単に説明すると・・・。
「イギリスに留学中であった大日本帝国海軍少尉・望月次郎は如何にしてアリスと恋に落ちたか」です。
そこには本編の時間軸では名前しか出てこない賢者イブである所のアリスがそのまま登場します。そして、ジローの前に現在立ちはだかる敵として存在しているカサンドラ——カーサの姿と、その従者として行動していたケイン・ウォーロックの姿が。
それは、とてつもなく残酷で罪深く、絢爛な激しい恋の物語。

生前の(?)

ジローの姿を見る事が出来る貴重な話ですね。
望月次郎は望月ジローと実はあまり変わりません。海軍の将校として留学しているので見事な軍服を着てこそいますが、性格や行動はあまり今と変わらない様な感じですね。えー、本当に彼は100年間何をやっていたんでしょうか? しかしその青臭く変わらない所が彼の魅力ですね。
しかし、この時代ではその年齢に相応しいといえる行動ですので、なんというか見事に青臭いです。迷ったり、自信を失ったり・・・その辺り今でも変わりませんが、この時代の彼は確かな若さに後押しされて、清々しい程の猪突猛進っぷりを見せてくれます。

アリスですが

まさしく天然の悪魔でしょうか。
絶対敵に回したく無いタイプの致命的なキャラクターですね。存在自体がもう世界ビックリショー的な色合いが濃いですが・・・しかしそれでも澄んでいて、美しい。
遠い歴史の果てから、喜びも悲しみも愛も憎しみも何もかもを見続けて来た孤高の深淵とも言える彼女が、真っすぐ一筋の刃が天に昇っていくような生き方を選んだ望月次郎と恋に落ちたのは、必然だったのかも知れません。

「わかっていたの、本当は。認めたくなかった、辛いから。なんて浅ましい。なんて愚かしい。なんて罪深い。そして、ああ、なんて嬉しいんだろう。——ねえ、ジロー。わたし嬉しい」

アリスという存在の全てはここに集約されるのではあるまいか、と思える台詞です。彼女には見えているのでしょうか? 何もかもが。その上でのこの激しい囁きだとしたら・・・いやはや、こういう表現を生み出した作者に脱帽です。

そして見逃せないのが

カーサです。このあたり実は短編集に挟まれた書き下ろし作品とかを見ても分かるんですが、彼女の心が嫌って言う程分かるようになってきました。明言する事は避けますが、彼女は多分——失敗した葛城ミミコなのですね。

総合

星4つ。
あまり語らないつもりでしたが、結構思いのまま書き散らしてしまいました。星が一個減った理由は「本編のおあずけを食った」からです。半ば嫌がらせの星減らしですかね・・・。まあ話自体は非常に良くできていて、良質なボーイ・ミーツ・ガール(年齢は?だけど)として読み進める事が出来ます。
こんな激しい恋って・・・いいねえ・・・アリスもジローも、後悔だけはあるまいて。