BLACK BLOOD BROTHERS (S)(3)
BLACK BLOOD BROTHERS〈S3〉ブラック・ブラッド・ブラザーズ短編集 (富士見ファンタジア文庫) | |
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ストーリー
BLACK BLOOD BROTHERSの本編3〜5巻の間の空白の1年間を埋める短編集です。
この第三巻もコメディとシリアスの配合加減が結構絶妙でして、しかもそれぞれの短編は独立しているように見えて実は繋がっている形で構成されています。特に後半ですが。
必見と思われるエピソードはもちろん(というと変ですが)ゼルマン関連の2つのエピソードですね。特に今回は話と話の間に挟まれるインターミッションの出来が良く、時に深い味わい、そして笑いがあります。書き下ろし「失墜の摩天楼」も非常に良いですね。特にカーサが。少なくとももっとこの時代の書き下ろし短編集を出して欲しいという感じでしょうか。
各話の紹介
強い吸血鬼の育て方
全開ギャグ。ほんの些細な一言で、コタロウに血の雨が降る! 明治の男にそういう冗談は通じなかった!
「えー? やだなあバウワウったら。ぼくはいつだってドント・ウォーリーさ」
ぬいぐるみ(クマ型)と話をし始めるコタロウに未来はあるのか!? ・・・どうでもいいけどジローとコタロウ、何カ国語話せるんでしょう・・・? ちなみに実力の違いだけで考える事はセイも一緒だって所がポイントだ!
宝くじ狂想曲
ある意味、涙、涙の物語。こんなに悲しい話は無いかも知れない。
つーか、宝くじ買う金があったら貯金しよう。それが堅実な生き方だよ! 「ご利用した瞬間に計画的じゃない」って事を忘れずに生きて行きましょう! 大丈夫、明日は良い事があるさ!
力と誇り
「金がある奴がいつだって強い」という話・・・ではなかった。本編でもうちょっと頑張って欲しい吸血鬼のケインがメインを張っている話です。
「ご亭主! こちらに熱燗をもう一本!」
ジロー、その金はどこから?
自由と虚ろ
貴重とも言えるゼルマンの日常と内面を描き出した作品。微妙にエロス。
まさしくゼルマン様の魅力たっぷりな一編。強大な力を誇る彼が自分の力で手にした自由。その代償とは。本編へのある種の伏線としても機能している、とても奥行きのある魅力的な作品です。ゼルマン様ファンは必見。
ある吸血鬼の僕
吸血鬼の僕(しもべ)と言って思い出せるのはもう彼女・白峰サユカしかいないですね。ゼルマンとセットで実にいい味が出ている彼女です。
・・・サユカも大変な人物を主に選んでいますが、よ〜く考えると大変な思いをしているのは実はゼルマンだったりして? という微妙な落としどころに着陸するイカす話。知らぬはゼルマンばかりなり。
いつか来る、その日のために
「オトナの秘め事」に興味を示すコタロウに「秘め事」をじゃまされて欲求不満の女性が一人。その名は葛城ミミコ・・・ああ、原始的な欲望を前にして醜い争いが・・・なんてはしたない! ・・・なんて言いつつも、本編への布石にもなっている侮れない話。オマケ的位置づけのおみくじネタが実に良く出来ています。
総合
星5つ。
短編集で星5つ付けるのはGOSICK以来かな? でもそれだけの価値があると思いますね。この本を読んだ後はキャラクターに対するイメージがグッと深まって、本編も違った見方や違った楽しみ方が出来そうです。
短編全体の作りも良いですが、やはり書き下ろしの「失墜の摩天楼」が見逃せないですね。