アンダカの怪造学(2)モノクロ・エンジェル

アンダカの怪造学(2) モノクロ・エンジェル (角川スニーカー文庫)
アンダカの怪造学(2) モノクロ・エンジェル (角川スニーカー文庫)日日日

角川書店 2005-11-30
売り上げランキング : 182286

おすすめ平均 star
star常に前向き、正統派学園ファンタジー

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

無難に、と言ったらおかしいですが、面白いですね。

ストーリー

空井伊依(すかいいいより)は「アンダカ(虚界)」から怪造生物を呼び寄せて研究したり、その力を使って何かを成そうとする学問、怪造学を志す少女で、古頃怪造高等学校に通う生徒。
前作で大切なものを失いかけた彼女は周囲の励ましや優しさを受けて立ち直りつつありました。心に出来た隙間は埋め難かったのですが・・・それでも伊依は諦める事無く「自分の怪造学」の信念を追い続けていました。
そしてそんなある日、小さな天使の様な怪造生物が傷つき、逃げ惑っている所に偶然出くわした伊依は、その怪造生物を追う一人のサムライガールと出くわします。
戦橋舞弓(たたかはしまいゆみ)と名乗るその刀を振り回す爆裂少女は、その天使の様な怪造生物を滅ぼさないと世界が七日後に滅ぶと言う。しかし怯える怪造生物を伊依は渡す事が出来ない・・・もう二度と悲劇を繰り返さないために。
少女二人の信念が衝突し、そして真なる悪を追い求めようとする奇怪な召喚魔法世界の第二巻。

いやまた

濃いキャラクターが出てきましたね。
一巻の段階で出ているキャラクターだけでも十分に濃い連中ばかりなのですが、それを上回るような勢いで戦橋舞弓が濃い。「いかにも」って感じのラノベ的魅力に溢れてますね。

「言っただろう。私は考えるのが苦手だ。それは間違えて現代に生まれてしまった原始人のように深刻に苦手なのだ。わかるかな、伊依、私と君の役割は言わば——君が頭脳、私が手足。それが適材適所というものだよ」

大いに真面目にこのように自分自身を評価する存在というのがもう既に変であり、これが刀も振れば弓を射る事もし、挙げ句べらぼうに強く頭が悪く、完全なる騎士道/武士道精神を持つハイブリット的変態です。
正義の味方になりたい(しかも特撮っぽい感じの)彼女は人に「二つ名」とかも付けたい人。挙げ句、登場シーンは派手に過激に、という信念を持っていたりします。
・・・で、当然の事ながら舞弓は伊依にも「二つ名」を付けたがる訳ですが・・・まあその辺りの気の抜けた会話をどうぞ。

「まあ——名前はなんでもいいよ。できれば伊依って呼んでほしいけどね」
「そうか。できれば私も”戦士さん”などと呼ばれてみたいのだが」

実は伊依と舞弓の出会いは間違っても平和的なものではなく、舞弓はそれなりにシリアスなキャラとして描かれたりしているんですが、この会話のあたりまで来るとかなりその人格が怪しくなってきていて、

「ちなみに私が考えるにこの呼称には段階があって、初見では”戦士さん” 優秀なら”優しい戦士さん” 深い関係になれば”私の戦士さん” とこんな感じだ」

で、読者は確信に至る訳ですね。「ああ本当のイノシシ的馬鹿者だ!」と。
いずれにしても伊依は彼女と協力して「世界が滅ぶ」とまで言われる問題に立ち向かう事になるのですが、その展開も幾つか見え見え指数が高い箇所こそあれ、楽しめる出来となっています。

しかし変人だらけですね

名前が変なのは一巻の時にも書きましたけど、実際にさらに環をかけて変なのはその内面ですかね。
主人公の空井伊依はまともな部類としてしまっていいでしょうが、その父の空井滅作(すかいいめっさく)の脳ミソお笑い感、、同級生の親友の魅神香美(みかみかみ)の天然グロ嗜好、同級生の美咲次郎花(女)の本気レズ疑惑と方言、ベッドから姿を見せずに常に筆談、伊依のルームメイトの片津理夢(かたつりむ)。
・・・。
奇人変人大集合です。ここはどこのアブナい病院なのでしょうか? って感じのラインナップですね。しかしそれでも面白いのが不思議です。

脱線も多いですが

話の本筋はやっぱり王道ですね。
少女の夢と希望と愛と友情、挫折と再起、信念と根性などなど。ねじくれ曲がったキャラが多いせいか妙な話って感じもしますが、やっぱり王道。「安心して読める感」が凄いですね。
グロ的展開があるようでないという、ひょっとして小学生にだって安心してお薦めできるシリーズではないのかね? なんて思ったりもしますね。・・・今時の少年ジャンプの方がよっぽどエグいでしょうしね。

総合

星4つ。普通に(やっぱり変な言い方ですが)面白い。
物語全体の構成はシンプルですが、キャラクターが実に魅力的。変人たちを良く作り出していると言って良いのではないでしょうか。変人ながらも愛すべき隣人とでも言いましょうかね。まさに現界と虚界の関係みたいです。
ただ、ある意味無意味なキャラが溢れているので、もう少し上手く使い回せないかな〜なんて思わなくもないので、そこら辺が減点材料ですかね。
エナミカツミ氏のイラストはやはり良いですね。文句無しです。

感想リンク

booklines.net  ラノベ365日