ギロチンマシン中村奈々子 義務教育編

ギロチンマシン中村奈々子―義務教育編 (徳間デュアル文庫)

ギロチンマシン中村奈々子―義務教育編 (徳間デュアル文庫)

ストーリー

時は未来。人類は自らが作り出したロボット達に叛旗を翻され、滅びに瀕していた。ロボット達の頂点に君臨するのは「チェシャ・キャット」と名付けられた人間によって自我を与えられた一台のロボット。それまでに生活のほとんどをロボットに任せていた人間たちは抵抗勢力として余りに脆くなっていた。
その未来の現在。一人の少年兵士がある南の孤島に漂着した。その島はロボットたちの支配する<学園>と呼ばれる教育施設。少年は「チェシャ・キャット」の謀殺の使命を追った人間側の兵士なのだが、主人公はロボットと勘違いされたまま<学園>ロボ娘加藤千紗(かとうちさ)に助けられ、孤島にある奇怪な<学園>の存在意義について知るのだった。千紗が言うには<学園>はロボットたちが「人間らしさ」を獲得するために勉強する施設だと言うのだが・・・。

前置きですが

主人公の名前が「山田太郎」です・・・。とっさに偽名を使ったせいですが、最後までそれで通すってどうなの!?

中村奈々子はギロチンマシン

どうも奈々子は<学園>において最強の攻撃力をもったロボットらしく、両腕が完全に機械化されて、みるからにえげつない刃物がついていますが、メンタリティーに関して言えば普通の何も知らない少女そのものです。偶然であった主人公に異常なまでの興味を持ち、彼に接近してくるんですが・・・。

「あなたは、わたしのものなのです! それを忘れないでくださいね!?」

主人公、一方的に所有宣言されます。そしてロボットのくせに何故か風呂場にて、

「やぁぁぁんん見ちゃ駄目ですぅぅぅ!」

全裸を見られて大慌て。一体どんなロボですか。・・・まあもちろん秘密がある訳ですけど。

加藤千紗は眼鏡ドジッ娘

妙に人間以上に人間らしい感性をもったロボットですが、両手両足はいかにもな感じでロボです。球体間接の持ち主ですが、やる事成す事全てプチ人間臭い。主人公に懇切丁寧に施設の存在意義を語ってくれたのは彼女ですね。

「そう! あたしたちロボットは、人間をまだ完全に把握できていないのではないか!? 追いつめられたときなどに、人間が発揮するあの得体の知れない爆発力はなんなのか!? 彼らがたまに口にする努力や愛――友情や根性といったものの正体はなんなのかっ!?」

いや〜、ここにいてくれてありがとう。読者的に。まあ作者も喜んでいるとは思うけど。だって便利だし。これ以外にも、

「それはいいとして、昨日、奈々子が山田の部屋にいたのはなんで? しかも薄暗いところで抱きあったりして……。れっ、恋愛――他人を好きになるって気持ちはね、山田が会得できなかった怒りの感情よりもずっとずぅっと難しいんだよ! 迂闊に初心者が手をだしても成功しっこないんだから!」

ロボットの恋は最終奥義っぽいです。

恐怖の赤ずきん

主人公は「チェシャ・キャット」に接触するための一つの方法をとるために学園内で「赤ずきん」と呼ばれる存在と会う事にするのですが・・・これがまた強烈ですねえ・・・。

<口から糞を垂れる前にまず君たちが名乗りたまえよ。その糞みたいな名前をね。犬の糞と猫の糞の判別ができても嬉しくはないが、何も分からんよりはいい>

外見はその通り名のとおりに赤ずきんちゃんみたいなんですが・・・もの凄いギャップだナニコレ?

<わかったぞ。君はロリコンなのだね。私のような可憐なロリっ娘に欲情するようなペド野郎か。ふふ、哀れな生き物め。いいだろう――存分に萌えるがいい、萌えるがいいよ。ふはははっ!>
英雄と呼ばれるお子様は、挑発的にM字開脚をすると高笑った。

ええ、萌えてません。萌えてませんよ・・・・・・萌えてませんったら! 幼女に口汚く罵ってもらって萌えたりしたらなんかすっごくアブナい人みたいですから決して萌えたりときめいたりしてません。断じて。ダメ、ゼッタイ

相変わらずの日日日って感じで

非人間的/欠落多数/欠陥製品指数が非常に高いのですが、そのキャラ造形の特徴として元々ある「欠落」が「ロボット」という「感情的に人間未満」という辺りと相性がいいのか、個人的には「アンダカの怪造学」よりキャッチー(古い?)な感じがしますね。合っているというか。
もちろんそれなりに物語の背後には色々真面目(っぽい)テーマがあったりしますが、あくまで「っぽい」ですね。適当に流しながら読める作品です。特に赤ずきんちゃんが登場してからは物語が一気に加速しますので、テンポよく最後まで読めるんではないでしょうか。

総合

星4つ。
話のどうにもならない軽さがどうしても引っかかってしまって、楽しんでいるわりにはとどめの一撃が出ないって感じですね。ひょっとしたらこの人の作品はどれを読んでも星4つ以上はないかも知れない・・・。
イラストは大出長介氏ですが、作品のイメージと結構あってますね。動きもあれば絵柄も良い。うんうん、よしよし。