鋼殻のレギオス(6)レッド・ノクターン

ストーリー

レイフォンたちの所属する園都市ツェルニの謎の暴走は止まらず、そしてニーナが行方不明の状態が続いている中、レイフォンとフェリは出現する汚染獣たちとの戦いに駆り出され続けていた。そしてその背後にちらつく廃貴族たちの思惑の影。ニーナが姿を消しているまま、二人は戦いに対する意義を見いだせない戦いに身を投じていく事になるのだが・・・しかし、そんな心の迷いを状況が許さない。
また、レイフォンの元へと向かっているリーリンも全く別のトラブルに巻き込まれ、ツェルニのような学園都市であるマイアスに強制的に滞在させられる事を余儀なくされていたのだが、彼女の前に姿を現したのは、そこにはいないはずの彼女だった。
タイトルの付け方も「声」関連から「音楽」関連へと変わり、第二部となった「鋼殻のレギオス」シリーズの第6巻。

ん〜?

物語としてはレイフォンたちの学園都市ツェルニ視点と、リーリンのいる学園都市マイアスがそれぞれ別々に語られる構成。
ただ、個人的にはレイフォンたちの動きは前巻までの流れがあるので比較的容易についていけるのですが、リーリンサイドの話はかなり理解に苦しんでしまった。
とにかくこの巻では学園都市マイアスで、新しく謎の目的を持った集団「狼面衆(ろうめんしゅう)」という集団が登場するのですね。
彼らの行動原理はなにやら怪しげな言葉を見る限り色々と隠されている事があるようなのですが、

「自律型移動都市そのものが必要となくなる」
オーロラ・フィールドがそれを可能とする」
リグザリオの思想など」
イグナシスの夢想の前には塵と同じ」

・・・なんだかさっぱり分かりません。
このあと現地に居合わせた某人物がリグザリオについては語ってくれるのですが(だたしかなり情報としては不明な点が多い)、イグナシスについては何だかサッパリ分かりませんでした。当然オーロラ・フィールドとやらも分かりません。
なんだか作者にあとがきによると、雑誌連載分の短編があるようで、しかもそれはまだ文庫としては発売されていないとか?・・・それを読まないと分かりにくいって事らしいですかね? ・・・それってどうなの? なんだか楽しみを奪われてしまったような気分だなあ。

今回は

廃貴族や、電子精霊や、さらには遠くレイフォンとリーリンの出身地であるグレンダンにいるアルシェイラの思惑、リーリンと現在行動を共にしている天剣授受者・サヴァリスの本音、リーリンの持つ「何か」や、さらには言葉を話す汚染獣などまでもが現れ、そしてそれが入り交じりまくってちょっと分かりにくいですね。
ただし、レイフォンサイドの面々は基本的に変わっていないので、そちらについてのエピソードについては比較的入り込みやすかったですね。・・・しかしレイフォン、強いけどこうして問題が表面化すると、1巻のときから何も進歩していないような気がするのが凄いな・・・。今回のレイフォンは正直良い所無しですねえ・・・。ちょい情けない。

レイフォンの抱える

問題の大本「目的意識の喪失」に関する悩みというのはいかにも若年層な悩みで、ラノベで扱うにはばっちりのテーマかもしれないですね。

「仕事しない」=「メシが食えん」=「死ぬ」=「まだイチャイチャし足りない状態で死ぬのはイヤ」

の等式が完全に成立している何の才能も無いオッサンである私には、ちょっと弱い悩みのように感じなくもないのですが、まあやっぱりレイフォンの倍以上歳を食っている私でも、

「お腹いっぱい」=「貯金有り」=「何のために働いているんだっけ?」=「あとはイチャイチャがあれば別に働かなくてもいいか?」

とか思う事はある訳で・・・。
既にイチャイチャ成分が補給されているレイフォンが目的を失っても不思議は無いです(もの凄い理解の仕方ではある)。まあ冗談はさておき、この手の問題は生きている限り常につきまとう問題かもしれないですね。

あと

見所としてはリーリンと某人物の会話がかなり際どくて面白いですね。個人的には恋愛関係の要素については泥沼の様な展開を希望しているので、さっさとゴリゴリとやりあう関係になってほしいものです。

総合

星3つ。
キャラクター描写は相変わらず良いけどちょっと不明確な部分が多くなり過ぎたかな? ニーナ行方不明になったので精神的船長が不在、そのまま読者も作品内で舵取り無しで五里霧中って気分です。
それから「この言葉は既出?」とか「コイツ誰だっけ?」と思う事がしばしばあったので、その辺りへのフォローが欲しい所です。まあ今時はwikipediaの鋼殻のレギオスの項目を見れば一通りは分かりますが、ネタバレの可能性も大だし、ネット環境が無い所で読んだりするのも当たり前なのだから、ちょっと配慮を見せてほしい所。そろそろ巻末に設定用語集をつけてほしいと思い始めた今日この頃。