くじびき勇者さま(2)誰がお荷物よ!?

やはりと言うか「仕様です」というか、表紙を見ると「くじびき勇者様」の文字が大きく、背表紙(でいいんかいな?)を見ると「誰がお荷物よ!?」の文字が大きいというカタチですね。ま、その分混乱は少ないですが。

ストーリー

大事な事は「くじびき」で決めるというかなりの謎宗教「ソルティス教」を国教とした「サクラス帝国」という国があった。その国で「ドラゴン病」と呼ばれる危険な病気の流行の兆しが見られたのだが、先に送っていた調査隊が全滅。あらためて「ドラゴン病」の状況を探るためにくじが引かれて、その大役に勇者として「信心深い」剣士のナバル、その従者に「エセ修道女(つまり神さま信じてない)」メイベルが選ばれてしまった。
行くべき場所は決まっているのに、進む街の方向まで「くじびき」で決めるという念の入りようで、目的の場所とほぼ正反対に向かう事になってしまった二人なのですが、当然デコボココンビなので、その旅がスマートに行く訳もなく・・・という異世界ファンタジー作品の第二巻。

今回は街から出ます〜

舞台となる「フォルティアース大陸」の一部を移動する話ですが、旅行記と言った方が近いかも知れないですね。
「くじびき」で行き先と真逆に出発した彼らは、彼らの動きを妨害しようとする「ドラゴン教徒」の裏をかく事に成功はしますが、遠回りになるのは間違いない訳でして、のんびりたらたらと進んでいく事になります。
この辺りは見事なまでに敵が馬鹿として書かれている(そうだよね!?)ので、ちょっと緊張感という意味では全然ないです。それが持ち味と言われればソレまでなんですが、それにしたってドラゴン教徒、馬鹿だろ・・・。

雑学集か!?

上記の通り、勇者として選ばれた剣士ナバルは信心深いソルティス教徒ですが・・・。
あー、こういう馬鹿とは俺は行動できないとか心の底から思ってしまった。人間的にはなかなか出来た奴ではありますが・・・まあ、神さまが実在している世界かもしれないから、あんまりその辺りは突っ込むのは止めておこう。とにかく、イカレ宗教にどっぷり浸かっている所を除けば、ナバルはなかなかの好漢です。
ところで。
問題なのはメイベルの方でして、あっちで地学、こっちで気象学、分かっているのかいないのか特殊相対性理論に足を突っ込み、はては力学、などなどなど・・・作者のそちら方面のうんちくをキャラの姿を借りて語りに語って、一体なんなんだ!? という感じですか。「オイ、雑学王の話を読みたいんとちゃうで!」 と感じる事しばし。
まあ味付けとして悪くは無いんですが、ちょっと「このネタをメイベルに喋らせたいからこういう展開で行こう」という話作りになっている感じがして、途中から何を読んでいるのか分からなくなりました・・・。
その手の雑学ネタを仕込みたいのは分かるんですが、仕込み過ぎ。程度ってもんがあるだろ! というのが率直な感想でしょうか。
おかげで話の本筋がなんだか迷走気味です。敵として出てくるドラゴン教徒の描写は少ないし、科学的なアプローチの描写は多いのでそっち方面からの理解は出来ますが、その実雰囲気はあまり伝わってきませんでして。
話の途中「霧の砂漠」という所を通過するんですが、その霧が現れる気象学的な説明やらは十分なんですが・・・こういっちゃあなんですが、味がない。
なんですかねぇ・・・想像できない訳ではないですが「ビーカーとフラスコとシャーレとピペットと試験管とアルコールランプを使って作ったみそ汁みたいな感じ」とでも言えばあっているかなあ?
好きな人は好きになれそうな話ですけど、叙情的な描写が好きな私にとっては、なんというか隠し味に欠ける作品でしたねえ。

その反面

魔法や剣での戦闘シーンでは「メイベル雑学」の描写の濃さを潰すかのように薄い描写の連発でして、戦いの緊張感はやっぱり無いです。
「銃と剣が対等に戦える世界」というのはいいけど、別にそれを成立させる技術的な側面を知りたくてこの本を読んでる訳じゃないんだよなあ・・・ぶっちゃけ「楽しい」ではなくて「興味深い」本です。
・・・私個人としては「ライトノベルに求めているもの」と全く違うなあ・・・というか「ファンタジー作品」と思って読んではいけない。「楽しく学べる雑学」とかってタイトルなら「おお、納得」って感じです。

総合

ギリギリ星3つ。
まあ3巻までは手元にあるので、読みはしますけど、一体どうなる事やら・・・読者を選びそうな作品ですね。

この1巻と同じくらいしか盛り上がらないなら多分3巻位で挫折しそうです。

なんて1巻の感想で書いていますが、そうならないように祈りたいです。
牛木義隆氏のイラストは1巻と同じクオリティを保っていると思いますが、ちょっとメイベルのアップだけの絵が多かった様な気がするな。

感想リンク

ウパ日記  Alles ist im Wandel  booklines.net