ぼくと魔女式アポカリプス(3)

ぼくと魔女式アポカリプス 3 (3) (電撃文庫 み 7-6)
ぼくと魔女式アポカリプス 3 (3) (電撃文庫 み 7-6)水瀬 葉月

メディアワークス 2007-06
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おすすめ平均 star
star自傷もさすがに、切り過ぎじゃね?
star打ち切り最終巻?→商業的に失敗か?
starかなりグロ

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表紙は相変わらずエロいですね。でも「れでぃ×ばと!」とかと比べたらどっちがエロいんだろう?

ストーリー

前巻でレンテンシアから伝えられた「第三の選択肢」を胸の奥に秘めた主人公・宵本澪(よいもとれい)は砧川冥子(きぬたがわめいこ)とレンテンシアの協力の元、恐るべき敵・蘭乱爛崎寝々(らんらんらんざきねね)をなんとか倒したのだが・・・その直後から物語はスタートする。蘭乱爛崎寝々の遺体が何者かによって奪い去られたからだ。
代替魔術師>と<導き手>達の求める巨大な魔力である根源闇滓(ルート・アンシイ)をそのまま奪おうとする新しい何者か。しかし宵本澪はその遺体を奪い去った小柄な人影に見覚えがあったのだった。
身近な世界をぎちぎちと音を立てて浸食する魔術師達と人間達の狂気、狂気、狂気。血まみれで語られる暗黒の魔術師たちの戦いを描いた作品の第三弾。

2巻でぶっち切れていますけど

この3巻は全体で見た場合に、さらに不快指数が上がっています。
その原因を作り出しているのが新キャラ3名ですけど・・・そのうち2名を紹介します。

沁・仙天威/仙天花(しん・せんてんい/せんてんか)

サイアクです。
こういうキャラクターを思いつく作者の脳髄はきっとレントゲンとったら怪しい影が写るんではないかという位にサイアクです。外見こそカラーイラストにでかでかと出ているように非常に美しい女性ですが、中身が完全に異常者です。恐らくは近親相姦&レズビアン(「喉が渇いた」という理由でお互いの唾液をすする)ですが、しかしそんな事は些細な事です。

『同胞に仇なすは人にあらぬ猪(ブタ)、誅すべからず——屠殺せよ!』

「猪(ブタ)を見つけた! 猪を見つけた! 屠殺を!」
「そして解体を!」

究極の選民思想の持ち主と言うか、狂信的民族主義というか・・・少なくとも2巻で出てきた蘭乱爛崎寝々と同じか、あるいはそれ以上の問題児です。その究極の発言がこちら。

「これまで解体したことがない。白状イング! 昔から、実に屠殺したかった!」
「今まで同胞を決して害することのなかった、よって猪として認定することができなかった——赤ん坊というモノをね!」

・・・時として、人間の想像力は現実に勝ることがありますが・・・このキャラクターたちの存在はどうなんでしょうね? 実在する存在以上に狂気を孕んでいるんでしょうか? 現実がこのキャラクターに負けていることを祈ります。

とにかく

今回は上記のアレ二人以外に、良く見知っている人が敵に回ったことで、やはり困難な道を歩まなければならなくなった主人公の宵本澪です。しかし一応行動の基本は2巻までで固まったと言って良いのでしょうか。困難な道と知りつつ——今回、彼の行動にはブレがありません。
強いて言えば、今回は砧川冥子の胸の内が語られる話と言っても良いかもしれません。彼女が一人静かに胸の内の固い決意を見せてくれる話でもありますね。

「大事なものって、何だ?」
砧川は答えなかった。ただ、微笑んで、
ぼくを見た。
ぼくを見た。
ぼくを、見た。
そして微笑のまま、目を逸らした。

「すべきことは決まっていますから。わたしが、何をさておいても、果たさなくてはならないこと。一つに決定している、これからすべき目的。それは宵本くんと同じだと思います。だから迷いに繋がる緊張はありません」

砧川冥子の存在が、ここに来て「確かにヒロインである」思えた瞬間ですね。積み重ねて積み重ねて、そうして辿り着いたこの一言、でしょうか。

前巻でも

書いたような気がしましたが、粘着質で腐った情景を好んで描くこの作者の描写は好きではありません。血まみれです。
しかし、その不愉快とも言えるイマジネーションの数々が読ませる原動力になっているのは間違いがないし、話の展開を心地よい方向に曲げようとせず、醜悪に、醜悪に、ただひたすら醜悪に突き進んでいくこの話がキライにはなれません。
この話はケダモノ達の争いを描いた作品です。ある意味では人間の定義から外れた存在しか登場しないと言って良いかも知れません。ですがそれ故に登場人物たちが大切な最後の一線をはっきりと持っており、それが作品の中で一瞬だけ強く輝くような気がします

総合

星4つ。
正直なところ上で書いた問題児の登場はストーリー作りという意味では都合が良過ぎましたが・・・それでも面白かったですね。
最後の最後にはやはり大切なものの為に人は殉じて行くのでしょうか。人外と言える者達が多く登場するからこそ、正気と狂気の境目が曖昧な作品だからこそ、その最後の宝石のような「何か」が見えました。
しかし——どう考えても万人にお勧め出来るような作品ではありません。少なくとも憂鬱な時に読む本ではないでしょうね。

追記

え、打ち切りって・・・本当!? え、そんなバカな・・・?