スプライトシュピーゲル
スプライトシュピーゲル I Butterfly&Dragonfly&Honeybee (1) (富士見ファンタジア文庫 136-8)
- 作者: 冲方丁,はいむらきよたか
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2007/01/01
- メディア: 文庫
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とても血塗られていて、同時に物悲しい物語ですね。
ストーリー(敢えて基本をオイレンと同じに)
「機械化児童」
国際都市ミネアポリスにおいて政府の障害認定を受けた子供は児童福祉局=通称<子供工場>で機械化されて、労働児童(ミネアポリスでは11歳から労働可能なように法整備されている)となった少年少女達は才能を認められた場合、特殊転送式強襲機甲義肢――通称<特甲>が与えられ、治安の維持にあたらせた。
また、戦争などで文化の意地が困難な他国の文化を受け継ぐ様な形で「他国文化」の「名前」を付ける事によって保全金、ちなみに日本名を名乗った場合、毎月の保全金+社会保障が支払われるという。
そして「妖精(スプライト)」はそんな機械化児童である三人の少女コードネーム「紫火(アメテユスト)」「青火(ザーフィア)」「黄火(トパス)」で構成されたMSS(公安高機動隊)の要撃小隊である。
そんな少女三人が治安維持とカウンターテロリズムのために活躍する・・・暗くて、えぐくて、血みどろで、救いが無いような、あるような、そんな物語。
やっぱりヘビーなのね・・・
本編はメインの登場人物紹介するような3話と、ストーリーの締めくくりと世界観を象徴するような2話で構成されていて、カウンターテロが敵という意味では「オイレン」と同じですが、「スプライトシュピーゲル」の方が宗教テロの匂いが強いですね。「オイレンシュピーゲル」は民族紛争の政治テロが中心です。
1話目にスプライト達の初めての活躍を描いた後、一人一人が主人公となって語られる話が続きます。
- 「紫火(アメテユスト)」=「紫の少女」=鳳(アゲハ)を主役に。
「さ――あ! ご奉仕させて頂きますわよ――っ!」
- 「青火(ザーフィア)」=「蒼の少女」=乙(ツバメ)を主役に。
「ドキドキするっしょーっ!!」
ドキドキするのは全身に取り付けられた灼熱の刃――灼刃(ヒートブレイド)
- 「黄火(トパス)」=「黄の少女」=雛(ヒビナ)を主役に。
「いじめないで、いじめないで、ボクをいじめないでぇーっ!!」
いじめられない為にバラまく大量の爆発物。
とにかく
「オイレンシュピーゲル」シリーズを読んだ人なら分かると思いますが、3人の少女が3人ともそろってろくでもない過去を背負っています。本当に心の底から最悪な過去です。
しかもこの話の不愉快な所は、作者の手による相変わらずのリアリティを追求した文体で持って、「無さそうな未来」を「ひょっとしたらありそうな未来」に変えてしまう所です。
・・・これが夢のある希望に満ちた未来像なら良かったですが。
読みやすさから言えば
「オイレンシュピーゲル」シリーズより読みやすい印象がありますね。
MSS(公安高機動隊)の要撃小隊の「妖精」達の最初の活躍から描かれる事と、鳳(アゲハ)が明らかにチームの精神的支柱となっていることで、視点が一点に集中しているためではないかと思います。
また、
- 取り扱われる未来技術が「脳」に関わる不愉快だけど分かりやすい技術であること
- オイレンと同じ「プリンチップ社」製ということ
- <クソッタレ>トラクルおじさんが登場している
などなどで悪役が目に見えやすいという事もありますかね。
また、えげつない展開は展開ですが、グロいというより悲しい印象を受ける作品になっていますね。これは恐らく、鳳(アゲハ)の心の動きを追いかけている所が大きいのかも知れません。
総合
星4つですかね。
シュピーゲルシリーズを読み始めるのであれば、こちらのスプライトシュピーゲルから読み始めて、オイレンの1、2巻へと続くのが良いかも知れませんね。
多分入り込みやすいだろうという理由としては、ヒロイン達がオイレンとくらべて(まあこういう比べ方もなんですが)<可愛い>という事がありますかね。オイレンは<色っぽい>です。
・・・まあ、この辺りは完全に好みですけどね。
イラストは禁書のはいむらきよたか氏ですね。・・・正直、単純にイラストの好みで言えば、オイレンの方が好みかなあ?