ライタークロイス
- 作者: 川口士,柴倉乃杏
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2007/07
- メディア: 文庫
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ちなみに本のタイトルになっている「ライタークロイス」というのは「騎士勲章」という意味です。
ストーリー
帝国の騎士達は聖獣を駆り、化け物を討つ。
その光景はある少年の記憶深くに焼き付いた。そして年月は流れ、少年は17歳の青年となって帝都を訪れていた。自らも騎士となるために。青年の名はカイン=パルス。生まれ故郷の師匠に槍術を叩き込まれ、そして騎士になるべく騎士登用試験を受けるつもりだったのだが、何故か上手く話が進まない。帝都に到着するなり複数のトラブルに巻き込まれ、逗留する場所にすら困るような状況だった。
ただしその不運の埋め合わせをするかのように新しい出会いに恵まれるカインだったが、その仲間たちが新たなトラブルを連れてくるような始末で・・・カインは無事騎士になる事ができるのか? というかそれ以前に試験をまともに受ける事が出来るのか?
気がついた時には大きな陰謀にすら巻き込まれているカインの奮闘を描くファンタジー作品。
キャラクター:実に良いです
カイン=パルス
騎士になる事を夢見る青年ですが・・・腕も立ちますが、飛び抜けて強い訳でもなければ、誘惑に負けない強い心を持っている訳でもない普通と言えばどこまでも普通の青年です。強いて言えば時々馬鹿みたいに人が良くて、自分に余裕も無いのに人を助けてしまったりする所があります。
「放っておけなかったんだ。それで、つい」
「……なんとかするよ」
その穏健な性格によるものでしょうか、どうも人を惹き付ける所があるらしく、出会いに恵まれますね。
・・・どう考えても勇者とかってイメージの主人公では無いのですが、不思議な魅力がありますね。読者の期待を裏切らない安心感? でしょうか。
イングリド=マルバ
カインにとっての貴重な出会いとなる一人ですね。ごっついイイです。
カインが騎士試験が終わるまで厄介になる予定だった屋敷の侍女なのですが・・・とある事情でカインと出会った時は途方に暮れているのですが、カインの助けもあって持ち前の生活力をメキメキと発揮。カインが彼女を助けるどころか・・・という女傑(?)です。
このキャラクターを知る事になり、思った事が一つ。
メイドの時代は終わった。これからは侍女だ(違うのかソレ)。
とにかく味わい深いキャラクターでして、本心の見えにくい事から始まって、侍女と思えない程のプライドの高さと忠誠心を誇り、受けた恩は忘れず、直感に優れるという侍女にしておくには惜しい素材です。
「奥様は、旦那様から何かを聞き出そうとする際、よく二階の部屋の窓枠の上にお立ちになられておりました。そうすると、十数える前に旦那様は全すべてを白状されます」
「では、一つ試してみましょうか」
クールな感じですが、とんでもない事を平気でやる女性です。たまんねえ。
アルファ=イシュトー
カインが帝都に訪れたその日に出会う(イングリドもそうですが)身分の高そうな女性。
彼女もまた騎士になる事を目指しているようですが・・・イングリドとはまた違ったタイプの女傑です。武術の腕からしてカインより高いというのがその証明でしょうか。また、肝っ玉も座っています。
「私は負けるのが大嫌いだ」
「嫌われてはいないと思うけど、わからないよ。そもそも、僕はこれまで女性に好きだとか言われたことがないんだ」
「そんなことを口に出していると、脈ができる前から消滅するぞ」
うっ・・・キヲツケマス・・・。
「察しろ」
あれ? 妙な既視感があるんですが? ・・・彼女*1に似てるタイプ? そうすると・・・? 面白いですね。
レイク=ロノベ
結構大事なキャラだけど、野郎だからどうでもいいや(酷い)。
見所は
カインが騎士になるための試験にどう向かって行くか、というのがメインなのは事実ですが、裏で展開するイングリド vs アルファの戦いが実にアツい話です。
あくまで不幸な出会いが原因だと思うのですが、カインを間に挟んだ恋の鞘当てのように見えるような気もしたり・・・とにかくのっけから非常に相性が悪くてもう、最高です。
「率直に申し上げれば、あなたからの好意は銅貨の一枚であれ、お受けできかねます」
「よい度胸だな。——カイン、私はたったいま、終生こいつを嫌い抜くと決めたぞ」
「お客様が来ています」
「誰が?」
「笑わない女です」
「それは卿の事だろう」
根性の太い女同士の正面衝突。こりゃたまらんわい。
総合
星4つは安心して付けられる感じ。
カインの騎士試験がもう少しドラマチックだったら星5つにしたかもしれない。とにかくキャラクターの魅力が良くて、どんどん先へ先へと読みたくなりましたね。話の作りから言ってこの一冊で完結するような展開ではないんですが、普通に2巻が楽しみです。
イラストは柴倉乃杏氏ですが・・・なかなか良いのではないでしょうか。ちょっとキャラクターの書き分けになんとなく難がありますが、動きとかアングルとかが凝っていて楽しいですね。
感想リンク
booklines.net Alles ist im Wandel
おやおや? 今見てみたら御大お二人も同じように好意的な感想の様で。これは今後の期待株かも知れませんよ?
*1:ROOM NO.1301の某蛍さん