殺×愛7—きるらぶ SEVEN—
5つ星から一気に1つ星に!? 泣けるどころかキレてます・・・が、リライトの結果多少優しい内容になりました。これでも。
殺×愛7-きるらぶSEVEN (富士見ファンタジア文庫 121-10) | |
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お薦めしてくれた皆様、申し訳ありませんでしたm(_ _)m ファンの人はマジで読まない方がいいです。
注意喚起のため設定
読む人によってはここより下は『心の安寧を損なう酷評』になっている可能性が高くなっております。 ファンの人は要注意! この感想が地雷です!
酷評だし、ネタバレ全開なので、「続きを読む」にしておきます。
(苦笑しつつ)これは無いわ。これは無い。
正直幾つかの点でご都合主義が連発していて爆笑してしまった。シリアスな作風だからこそ余計に笑ってしまったという。
その1:作者/読者が犯人
突然物語の中に「神様」=「作者」=「読者」の視点を持ち込んでメタ構成にしたこと。
結果として物語の中で起こっている出来事の原因や責任の所在を曖昧にしてしまって、ストーリー的な謎の、
- 「世界の終わりは何故始まったか」
- 「椎堂密はなぜオメガとして選ばれたのか」
- 「何故相思相愛の相手でないと殺す事ができないのか」
などなどを全て「メタ視点の存在の決めた事(作者/読者)」にしてしまって責任を丸投げ*1し、結果として物語として回収しようという努力を完全に放棄してしまった事。
それやったらあらゆる架空の物語は適当に説明出来ちゃうじゃんかさ。これだったら何の説明も無い方が良い。
これはもうシンプルに作者が「逃げた/逃げ道をつくった」としか思えなかったですね。もし最初からこういう展開にすることを考えていたとしたら、ちょっと稚拙すぎるなあ。
この辺りで星が一気に2つくらい減ってます。正直そのネタが書かれている箇所、
俺たちが苦しんでるのを……
嘆き悲しみ、傷つくようすを……
そこで見てるのかよ?
を読んだとき、
「それをやったらアカンがな〜! マジ!? 作者の奴、本気か!?」
と言ってしまったのは言うまでもないです。そしてその事実に最後まで訂正が入らなかった事に失望したかな。
ちょっと追記
6巻まではまるで「『理不尽な世界』という動かしがたい前提があるフィクション」として語りつづけて、密もサクヤもこの話の「物語の構造(神さまの箱庭かもしれないという可能性)」を疑いもしない。
そして、その前提の上で「必死で生きて恋をし、必死で愛して死ぬ」という事を語っている。しかしラストでこの前提をひっくり返してしまった事で、1〜6巻(7巻前半も含める)で起こった全ての出来事は「別の意味(神にコントロールされた出来事である)」を与えられて、全く違うものになってしまう。
酷い言い方をすれば「全て偽物になる」訳です。
例えば・・・。
「ならば、私は、おまえの恋を応援するよ! たとえ神がシドの恋を認めなくとも、この私が認めてやる! 恋愛原理主義者、高天原Aの名にかけてな!」
本編内の素晴らしいセリフですが、物語内で閉じている場合は
- 「過酷な現実を戦い、傷つきながらも生きてきた彼女が口にしたからこそ素晴らしい言葉」
だったのが、
- 「神が考えてこのキャラクターに語らせただけのチープなセリフ」
になります。一つ上の視点を物語に盛り込むというのはそう言う事です。
メタ的な視点を盛り込むのであれば、0巻、1巻の辺りで「自分(密)が普通ではあり得ない理不尽な状況」に陥った段階で考えるのが自然だと思います。
「この世界は神の手によって作られた箱庭で、我々は観察されて遊ばれている存在である」という視点は、7巻までひっぱって初めて気がつく様な話じゃないです。少なくとも疑っていなければ変だなと。
最初からそういう疑いを登場人物たちが持っていたなら、ここまで唐突な感じはしなかったでしょう。
その2:イブの扱いが突然軽い
密が彼女の存在を簡単に割り切っている辺りが不自然ですね。序盤から中盤までの苦悩は一体どうなったんだ。
というか他の少女(来夏とか)の事は結構真剣に向き合って、消化するのにそれなりに時間がかかっているのに、過去であれだけ求めつづけていたイブについての気持ちがイキナリ整理が付いちゃう辺りが不思議。
・・・普通死んだと思っていた大好きな人が「実は生きていた」という事が分かるって、「脳みそが全てひっくり返る」くらいのビックリ出来事だと思うんですけど・・・。動揺しない主人公がすごい不思議。
しかし・・・違和感を感じつつもここではマイナスは無しかなあ・・・「まあその位の事はあるか」と納得した。
その3:夢オチ(みたいなモン)
致命的。
この衝撃は「ハイスクール奇面組」の最終回以来の快挙かも知れん。最初普通に爆笑した。
難しく言う必要は無いでしょう。星マイナス2。強いて言うとすれば・・・。
あいつらが苦しんで来たのを……
嘆き悲しみ、傷つきつつも選んで来たことを……
全部無かった事にしちゃったのかよ?
でしょうか?
正直その事実に涙、涙ですよ。ミステリで「実は探偵が犯人」と同じレベルでの禁じ手じゃないですかね。
つーか、某彼と某彼女の間に出来た子供は気分的に水子扱いになるんですかね!? そーいう消滅した可能性に付いてはどうなるんでしょうか!?
とにかく、全てをなかった事にしてしまうのなら、
- 来夏が死のうが生きようが
- にゃみちゃんが喜ぼうが苦しもうが
- 微が壊れようが壊れまいが
- 高天原がカラダ売ろうが売るまいが
- 端役の皆さんが恋愛しようがしなかろうが
- イブが密を殺せようが殺せまいが
全部なかった事になってしまうのだったら、なんだっていいじゃん。
・・・私は恋愛において「かなりみっともない出来事」の一つに、
「二人の間に起こった出来事をなかった事にしようって提案をすること」
があると思ってるんだけど、ストーリー全体でそれやってどうするよ。IFストーリーとして捉える事も出来るけど、それにしちゃあまりにも安っぽいな。
スター・ウォーズ旧三部作でルーク・スカイウォーカーとダース・ベイダーが普通の親子関係になって仲良くやってしまう未来を書いちゃうくらい安っぽい。ついでに言えば、新三部作でアナキンとパドメがハッピーライフを送ってラブラブ生活を送ってしまうストーリーを作ってしまうくらい安っぽい。
来夏やにゃみや他の登場人物の恋や愛はどうなるんだよ? 0〜6巻の積み重ねを一気に崩された感じ。
せめてラストシーンが「卒業式の後」「人類の滅亡が止まり」「密とサクヤが生返り」位ならまだ許せたけどね・・・時間を巻き戻すのは無しだよ。猛烈に幻滅した。
総合
星1個です。
・・・まあその、上でボロクソ言ってますが、作品の部分部分で実に良い所があるのも事実です。
- 密×にゃみちゃんのシリアスなやりとり(5巻)
- 真面目にお付き合いを始めた密×来夏の姿(6巻)
- 密×サクヤの初々しくも吹っ切れた姿(7巻)
などは非常に良かったですね。
5巻のラストは(ちょいわざとらしくとも)見所ですし、6巻で来夏が教室で今の自分の状態をひたすら惚気る所とかはとても良いし、7巻の密×サクヤも純情な感じで良かったという事です。
あと、主人公が可憐な少女達の処女膜破り過ぎなんだけど・・・こういう慣れている少年って、同級生からの受けはいいよね?
全巻総合
全体で見た場合に惜しむらくは、主人公の性格が最後まで掴みきれなかった事。
私からした場合は、あまりにもあっちこっちに感情が動きまくって、密は一体何が目的なのか、何を望んでいるのか、わからなくなりすぎたって事ですかね(本人もよく分かってないっぽい)。
ついでに言えば主人公に感情移入出来るようになってきた5、6巻で評価が高騰したので7巻の墜落っぷりはブラックマンデーばりに酷かった。俺良く読み切ったと思う。
感想リンク
booklines.net Alles ist im Wandel 今日もだらだら、読書日記。 積読を重ねる日々 ライトノベル名言図書館
他は皆さん高評価の模様・・・強いて言えば近いのが「積読を重ねる日々」位だなあ・・・。異端児なんだな私ゃ。
*1:お前らこういう悲劇的な話とか好きじゃんよ? え、そうなんだろ? お前らの要望通りにしてやった結果だよ?