繰り世界のエトランジェ

繰り世界のエトランジェ〈第1幕〉糸仕掛けのプロット (角川スニーカー文庫)

繰り世界のエトランジェ〈第1幕〉糸仕掛けのプロット (角川スニーカー文庫)

うーん、また変な作品が出てきたなあ。

ストーリー

母が帰らなくなって一週間が経った。
そしてその日、睦月透真の前に一人の男が現れた。彼は自分の事を山田太郎と名乗り、今までの報酬を支払うつもりだと透真に言う。母のこなしてきた仕事の報酬だと言った。そして同時に母の代わりに一つの仕事を受けてもらいたいという。
彼――山田太郎――に言わせると透真の母は既に死んだものと考えていて、その母のやっていた「危険な仕事」を息子の力を見込んで後を継いでやって欲しいと言う訳だった。
糸遣い」。それが彼ら親子に共通して備わった能力だった。天から伸びるようにして人々を操っている「糸」を見る事が出来、そしてそれを操る事が出来る能力。透真は母の行方を追い求めるために、母の後を追って街を騒がせている事件へと足を踏み入れていくが、そこには意外な真実がまっていた。
異能力、怪物、幾つもの謎が絡まってやがて一つの真実へと収束するエンターテインメント作品。

こらまた

変な事を考えだしたなあ・・・というのが最初の感想。
というか、あっちこっちの作品から影響されているのが見えてるけど良く料理したなあ・・・って言えば良いのかな?
「結構匂いを感じる」という事で言えば「月姫」、「戯言シリーズ」辺りだろうし(最近だと影響を受けない方が難しいかも)、異能者や化け物の「存在の唐突さ」という意味で言えば何故か中村九郎を思い出してしまった。
そもそも全ての生き物から「糸」が出ていて、全ての生き物は「何者か」に操られている・・・という前提で話が成り立っているので・・・そうだなあ、やっぱり雰囲気として「月姫」が一番近いかな。メイドも出てくるしね。
それと異能力関係の名前やら組織やらは「戯言シリーズ」がそのままズバリだろうね。もっと大まかに言えば少年漫画テイストとでも言えば良いのかな。「闇宮」って名前とかはもうなんと言うか、いかにもな感じではある。
中村九郎テイストって言う所は・・・カタナというトンデモ人物が登場してくるのだけど、その存在名が「作品集No.14」で、ついでに言えばそのカタナさんとの出会いがまたとてつもなく普通でない感じだったりする。そこら辺かな?

こんな風に書いていると

なんやパクリなんか、とか思いそうですが、作品全体を見ればそんなことはないですね。
既存のネタを上手く変えて話を作っているなあと思いましたね。なんだかんだ言いつつ先の読めないストーリー展開には引き込まれますし、アクションシーンはテンポ良く、キャラクターは特徴的な性格付けがされていて、飽きさせません。
特に良かったのは上でも書いたメイド――「闇宮冥」ですかね。自らを「人形」という訳あり押し掛けメイドですが、彼女がいい感じで物語を動かしてくれますし、「作品集No.14」のカタナとの女の戦いも結構見逃せないものがあります。

話は・・・

うーん、最後まで読んでやっと話の価値が出てくるという意味では・・・ミステリーなんだろうかね?
最後の一行まで目が離せない! とか言われそうです。どんでん返しを楽しむのが良いんだろうけど・・・私は「きっとアレだ」とか思いながら読んでいた所があったので驚き自体はそれ程無かったのだけど、それでもなんとも言えない読了感にさせられましたね。

総合

星4つ。まあ面白い。
キャラクターの造形とかがちょっと荒削りな感じは否めないし、カタナという中心的なキャラクターの存在があまり(ほとんど?)生かしきれていないのが結構痛い。あれ、このキャラ、ナニしに出てきたんだっけ? という違和感があるのがもったいない。
まあそれでも、それを差し引いても楽しんで読めるストーリー展開かな。「時載りリンネ!」と同じく「第一幕」ってふってあるので続きが出るのだろうけど、どんな物語になるのか、このラストをどうやって次に繋げるのか興味津々ですね。今回は見た目の派手さに反比例して今イチ目立たなかった「カタナ」には次で頑張ってもらいたいですし、冥ももっと見せ場を作って欲しいですね。
イラストは甘福あまね氏ですが・・・うーん微妙。女の子は可愛らしく描けているけど、それだけだな。微妙に安っぽい感じがする。悪いけど。

追記(2007/8/20)

よくよく考えてみると、あんまり続きを読みたくもない気分だったので(「ラスト、あれはあれでキレイにまとまっているような気もする」のと「やっぱり特定キャラが浮いてる」)ので、星を一個減らしました。
・・・読みなおすとアラが結構あるんだよね・・・。

感想リンク

Shamrock’s Cafe  今日もだらだら、読書日記。  灰色未成年  ラノベ365日

「今日もだらだら、読書日記。」のうららさんが私の感じた違和感を、大文字で非常に上手い事表現していますので一読の価値ありだと思います。