消閑の挑戦者(2) 永遠と変化の小箱

消閑の挑戦者〈2〉永遠と変化の小箱 (角川スニーカー文庫)
消閑の挑戦者〈2〉永遠と変化の小箱 (角川スニーカー文庫)岩井 恭平

角川書店 2003-07
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おすすめ平均 star
starちょっといないかも
star前作より面白さが若干、落ちた感があります
star春野君・・・

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いやいや、1巻のラストが結構綺麗にまとまっていたので、どう繋げるのかなとか思ったら、こうきましたか〜。

ストーリー

人類の頂点に立っていた少年が開催したゲーム<ルール・オブ・ザ・ルール>終了後、世界は一種の混乱が起こっていた。
知性の上で間違いなく頂点に立っていたと思われる人物が倒れた事で、あらたな頂点となろうとする者が現れた事と、<ルール・オブ・ザ・ルール>において「天才・果須田裕杜を誰が倒したのか」が公開されていなかったためだ。様々な憶測と情報が飛び交う中、世界は徐々にあらたな局面をとりはじめる。ただ果須田裕杜を撃破した張本人達の周囲はいたって穏やかなものだったのだが・・・。
しかしある時その穏やかな水面に小石が投げ込まれる。
果須田裕杜と正面衝突した少女・鈴藤小槙(すずふじこまき)は<ゲーム>において偶然ペアを組む事になった少年春野祥(はるのさち)に「二週間程旅行に行かないか」と誘われたのだが、「100%ありえへん」と却下する。
もちろん小槙が「ぜったいいじめられる・・・」と思っていたからであるが、実は先約もあった。それはある巨大船「うてな」の船上で行われるチェスの対戦を観戦する事が決まっていたからだ。
チェスの対戦はチェスの王者・ジョセフ・ヘンリー灰火秋(うたびし)という知性集団の開発したコンピュータ「ヘラナ」の対戦。
しかしやはり陰謀渦巻く船旅は、彼らに安息の時を許さない。当然の様に船に乗り込んでいた祥も含めて「知性と肉体の全てを費やした戦い」が再発する第2巻。

変な二人・・・

もちろん主人公の鈴藤小槙と春野祥の事です。

まずは

小槙の祥に対する認識から。

同じように入院していた祥のもとへは見舞いにいったことはない。勝手にパートナーに登録してゲームをかき回した小槙のことを、絶対に怒っているはずだと思ったからだ。彼が退院してからも、ほとぼりが冷めるまでは逃げ続けるつもりだった。

まあつまり「怒っているに違いない」=「ほっぺたをつねられる」ので逃げ回っている訳です。
そうは言いつつも、どうも祥を「異性」として意識している気配も感じさせていて、しかも無自覚というか、分かってない(頭がいいのに!)という所が面白いです。相変わらず「未完成」な少女ですね。

そして

祥の小槙に対する認識ですが。

入院していた祥に会いに来るわけでもなく、祥が退院した後、学校ですれ違っても目を合わせることもない。
生死を分けるゲームをともにくぐり抜けたパートナーは、今も変わらず”鈴藤さん”という一人の同級生のままだ。
「俺なんか、視界に入らないってことかよ……」

小槙と自分の差を自覚している彼は、シンプルにそのように結論しているのですが・・・まさかほっぺたをつねったせいで逃げられているとは夢にも思っていないでしょうな。

1巻に続き今回も

いろんなタイプの天才と呼ばれる人々が出てきますね。ついでに言えば「超飛躍」を使用できる超越者たちも(祥を含めて)出てきます。
そして暴力的な側面を持ったストーリー展開が、知性だけではなく肉体の優劣までも競わせます。どーも平和的な解決が出来ない人が多いみたいでオジサンとしてはちょい悲しいですが、まあ当たり前か。
しかし祥は今回もやたらと死にそうな目に会ってますね。良く生きてるな〜というのが最初の印象だったりします。彼の過去は一体どんなものだったんでしょうね? 頭は良いらしいですが、それを発揮するチャンスがあまり巡ってきません・・・うーん、このままだと格闘バカになってしまうのでは無いかと危惧してみたり(いや既にそうなのかも)。

それから

なんとなく印象に残る言葉が多い話ですね。

「”挑戦者はいつも笑われる。それは挑戦者の仕事の一つでもある”」

とか、

「迷う、というのは特権だよ。可能性の美徳だ」

とか、

「不安なら、俺がそばにいてやる。なにも一人でがんばる必要なんかないんだ。誰かといっしょなら、誰だって信じられないほど強くなれるんだ」

・・・微妙に特定人物の発言が二つ重なりましたが・・・彼はあちこちにフラグを立てているような気がするんですけど、いいのかなあ・・・? 真偽はともかく、時として「妙な自信」くらい頼もしいものもないですね。

総合

星4つ。
安定した面白さを提供してくれましたね。1巻が楽しめた人ならこの2巻も同じテンションで楽しめるでしょう。
知性のゲームという印象は流石に1巻と比べると劣りますが(1巻まるごと知的ゲームみたいなものでしたからね)、それでも駆け引きや陰謀や成長や失敗や挫折などなど・・・は相変わらず健在です。
個人的には約1名「もの凄く頑張ったのに報われないなあ・・・」と思った登場人物がいましたが。ちょっと可哀想でしたねぇ。
四季童子氏のイラストは「寄る所は寄る、引く所は引く」の出来ている安心の出来かな。構図の取り方が上手いのかなあ、この人。