イリスの虹(1)

イリスの虹 (電撃文庫)
イリスの虹 (電撃文庫)七月 隆文

メディアワークス 2005-12
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おすすめ平均 star
star良い意味で予想を裏切る。
star小説版“ときメモ”の作者
star彼女の瞳は全ての色

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書影がないのが残念だなあ・・・。せっかくヒロインがミニスカ+ニーソで頑張ってるのに・・・。

ストーリー

街角で唐崎省吾(からさきしょうご)は突然に「人が食べられる瞬間」を目撃した。
背中に翼の生えた女性が人を溶かす様にして自分の中に取り込んで行く姿。そうして化け物は一人の人間を食べてしまうと次は彼を襲った。パニックを起こして逃げる省吾が今まさに化け物に食われそうになった瞬間・少女は現れた。自称「正義の味方」である彼女は怪物を追い払うとかる〜い言葉を残してそこから立ち去ったのだった。
そして翌日、省吾はその少女が学校に転入してきた事を知る。名前を入州帚(いりすほらき)というらしいが・・・彼女は昨日のような化け物——存在の情報を食べる——を狩る存在だという。
個人的な理由から彼女に協力する事になった省吾だったが、入州に協力するうちに状況は徐々に変わりはじめて行き、ただの怪物退治では済まなくなって行くのだった。

もちろんアレ

作者が尻フェチ感を全力で放出している問題作「ラブ・ゆう (ラブ・ゆうシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)」がアレだったので手に取ってみたという非常に分かりやすい理由で読みはじめた本だったのですが、読み始めと読み終わりでこんなにキャラクターに対する印象が変わった本も珍しいですね。
正直読み出した当初は「うーん、これは愛せないかもしれない・・・」という感じでしたが、後半になって色々な事が分かってくると「おおっ、これはこれで・・・なかなか・・・」と思う様になりました。

「あれは『悪の怪人』で、あたしは『正義の味方』。そしてキミは『町の人』。キミにできることは——関わらないことだけよ」

これが序盤のイリスですね。
ヒロインのイリスは「自分の感情を書き換える」能力をもっているため、感情移入がしにくいのですが、中盤から後半にかけての出来事を境にまあ色々とあって・・・うーん、可愛い甘えんぼ少女と変わって行きます。こら結構美味しい

みつめてくる彼女の表情は微熱のように「ぽぅーっ」としていて、瞳が妙に潤んで朝の光を照り返している。
そのとき、帚の口もとがふわりとゆるむ。何かよほどうれしいことを思い出している、そんなふうに。

同じ意味で敵として登場する怪物「ハーピー」も、序盤と終盤では全く印象の違う怪物になっていきます。主人公たちが成長するなら、敵も成長するという感じでしょうかね。ただの悪役から味のある悪役へ・・・といった感じでしょうか。
主人公の省吾君はまあ普通です。よくある普通なキャラですな。という訳で説明終了(ひどい)。

しかしまあ

話の展開に(特に感情的な部分において)唐突感があるのも事実でして、まあその辺りは余り深く考えずに「そーいうもんか」と飲み込むのがベストな読み方ですかね。
そういうご都合主義的な部分に敢えて目をつぶれば楽しい所が結構あったりします。

ぽふ。
ひざの上にのった。
ひざまくらだ。
彼は目をつむり、中途半端に口を開いたまま、規則正しい呼吸をしている。
彼の頭蓋の硬さや寝息の熱さをひざでうけとめていると、お腹の下あたりから全身に向かってじわわあっと甘いしびれが広がっていく。
ああ、いい。
これは、すごくいい。
吐息をついて、自分を包むあたたかなものに身を委ねる。胸をとくんとくん、鳴らしながら。

・・・誰かひざまくらしてくれねーかな! こんな風に思ってくれて、目を細めながら頭とかナデナデしてくれたりしてくれねーかな! オロロ〜ン!
はっ! 取り乱しました! スンマセン! ・・・とまあこんな感じです。

総合

星4つに微妙に届かない星3つかな。
後半の展開は少女たちの読んでて楽しい「やきもき感」が出てきていいんですが、前半がやっぱり足を結構引っ張っているんでこの点数になりました。前半を上手い具合に乗り切れば楽しめる人は結構出てくるんでは無いでしょうか。イリスは後半になればなるほど可愛くなって行きますからね。
イラストは平野克幸氏ですね。丁寧に仕事をしている感じで良い出来ではないでしょうか。柔らかい色使いと線が良い感じです。個人的には好きな絵柄ですね。