嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(2) 善意の指針は悪意

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 善意の指針は悪意 2 (2)(電撃文庫 い 9-2)
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 善意の指針は悪意 2 (2)(電撃文庫 い 9-2)入間 人間

メディアワークス 2007-09-10
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ストーリー

みーくんはとにかく嘘つきで、
まーちゃんは壊れてる。
そういうお話・・・なんだけど。

うーん

みーくんは嘘をついたお陰で病院に入院するハメになり、まーちゃんはみーくんを追いかけるためにやっぱり入院する。

マユは、花瓶で頭を殴ってその足で病院に来て、入院すると血だらけで宣言したらしい。
僕に、毎日お見舞いに来るのはやめて、偶には学校行こうねーと諭されたから。
だから、彼女なりに思案し、その行為に及んだのだろう。

もうこのスタートラインからしておかしいですね。というかぶっちゃけ一般的な感覚からすれば「別の病院に入れ」という感じではある。

しかし

やっぱり書いておかなくてはならない大事なことと言えば、この作品が明らかに「蛇足」じゃあないかという事ですかね。
1巻を読了していれば、まーちゃんが何をやらかしても不思議は無いという事を読者は知っているし、みーくんがどんな嘘をついても不思議は無いという事を知ってしまっている。彼と彼女に積み重なった恐るべき過去が作り出した「深淵」を既に一度覗き込んだ事のある読者にとって、どうしても「こちらを覗き返す怪物」の存在の驚きと恐怖が足りない
それこそ作品内でまーちゃんが人間の踊り食いでも始めれば別だったと思うけど、流石にそれは無かったので、1巻で積み重ねた資産を食いつぶしているという印象を受けてしまった。

なので

みーくん独特の乾いてカサカサのユーモアは今回も健在だし、まーちゃん独特の狂気は今回も健在なのだけど、全体の印象としては「かなりおかしい二人の少年少女が繰り広げるかなりおかしい人達が登場するミステリ」に落ち着いてしまったかなあという感じ。
ただ、読み物としての出来が悪い訳ではないので、普通に読める。でも衝撃はない。悪くない。でも良くもない。そんな感じ。
ミステリ好きの人が読んだら全く違う感想が出てきそうな感じがするけど、残念ながら私はそうじゃないので、こう言う結論に落ち着いた。

総合

星3つ。
もし編集部が1巻の評価に気を良くして作者にこの続編を書かせたのだとしたら・・・どう考えても失敗だったと思う。
いや、ひょっとしたら作者の引き出しがもっとあるのかもしれないと期待しての事だったのかもしれないけど、あれだけキレイにまとまった物語の続きを書かせるという行為がムチャというか・・・作者本人もあとがきで語っている通り「続編なんて意識してなかった」訳で、まあ頑張って付け足したという感じがひしひしとします。
しかしまあ、全編にちりばめられた二人の主人公の異常性と、他の作品のパロディと、常に見え隠れする皮肉な視点が味を添えているのも事実であって、それは作者の力量を評価したいですね。
素直にこの2巻は「無かった事」にして、同作者の別のシリーズを期待したいと思ってしまった2巻でした。
あ、左氏のイラストは良いと思います。結構好き。