オオカミさんとマッチ売りじゃないけど不幸な少女

オオカミさんとマッチ売りじゃないけど不幸な少女 (電撃文庫)

オオカミさんとマッチ売りじゃないけど不幸な少女 (電撃文庫)

お話(変えてません)

この話の舞台は学園都市・御伽花市の御伽学園。生徒3000人を抱えるマンモス校。制服も複数種類が用意されており、どれを選ぼうと自由な挙げ句、ある程度(かなりの程度)の範囲で改造が許される自由な校風として知られる。

主人公は御伽学園学生相互扶助協会(通称「御伽銀行」)に所属するすらっとしたスタイルとツルペタを誇る直接攻撃による破壊活動を得意とする大神涼子(おおかみさん)。彼女はその姉御とも言えそうな行動から学園内で一目置かれる存在なのですが、そこに対人・対視線恐怖症の第二の主人公・森野亮士(もりのりょうし)が電撃的な愛の告白をするのだった!
森野亮士は結局その特殊な才能を買われて御伽銀行に所属。生徒達からの依頼を受けては解決し・・・というなんだか童話をモチーフにしつつ変な感じで進む安心のラブコメもの。
今回は完全に短編集って感じなので短編を1話1話見て行きます。

セクハラ糞爺いと対決する御伽銀行

御伽銀行にも一応予算というやつがあるらしくて、その財布の紐を握っているのは学園の主「荒神洋燈(あらがみらんぷ)」なのですが、コイツが最悪な類いのセクハラ親父でして、予算を通すためには「女子暑中我慢大会」を行わせろと、そういうのである。

  • 表向きの理由(精神力、忍耐力を鍛える)
  • 真の理由(少女たちが服をはだけたりする所が見たい)

猛烈にバカらしいですなー。
ちなみに荒神洋燈を支えてきた別のジジイに北村風男(きたむらかぜお)というのがいるのですが、この二人がそろいもそろって馬鹿です。

「みずみずしい肢体になめらかな卵肌、それを彩る真珠のような汗。これこそがエロスじゃ!!」
「おまえこそ何をぬかす。女子高生の制服を脱がしてどうする。脱いだらそれはもう女子高生ではなく女だろうが!! ほら見てみろ、あの跳ねることによるスカートこそがエロスだ」

全部脱がすのがダメなら、ソックス(あるいはリボンタイ)だけ残しておけば良いじゃない(アレ?)。
まあとにかく、色々とプルンプルンな感じが楽しめる非常に美味しい一作となっています。ちなみに御伽銀行のメンツも黙ってやられっぱなしになったりはしませんのでお楽しみに。
所で、この話の最初の方で浦島(乙姫に絞られてる)関連で、作者が凄い描写をしてます。

浮気がばれる理由はとてもよい子のみんなには言えないですが、あえて言うなら濃度?

濃度なんだ・・・量じゃないんだ・・・つまり毎回同じくらいの量は搾り取れるんだ・・・乙姫ってすげえ。

少年少女の恋を実らせるためにズタズタになる乙女(?)心

財閥のお偉いぼっちゃんの婚約相手を捜してくれと頼まれる御伽銀行の面々。
くそ生意気なガキと、気合いの入った執事が二人で御伽銀行を訪れるのですが中々理想的な女性に巡り会えないという・・・。まあそういったお話なんだけど実にバカらしい笑いに満ちています。参考までにどんなノリなのかを説明するために最初の方の会話を抜粋。

見つめ合う執事とメイド。そして、唐突におつうさんがハーメルさんに聞いた。
「おっお名前は?」
「ハーメルと申します」
「そうですか……」
なぜかおつうさんは心底残念そうな顔をする。しかし、執事のハーメルさんの言葉は終りではなかった。
「…………魂の名前(ソウルネーム)はセバスチャンでございますが」
この言葉で、おつうさんはぱああっとすんごいいい笑顔になる。
「……セバスチャン」
感きわまったのかもう既に笑顔を通り越して恍惚の表情にまでいってる感じだ。
そんなおつうさんに今度はハーメルさんが聞いた。
「よろしければお嬢様のお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「あ、申し遅れました。わたくしの名前は鶴ヶ谷おつうと申します」
おつうさんはぺこりとお辞儀をする。
「おつうさまですか。良い名前です。……ではわたくしからも一つ」
執事のハーメルさんメイドのおつうさんに向けて言った。
「…………エッチなのは?」
「いけないと思います!!」
おつうさんは打てば響く鐘のように返事をする。
二人の間に流れるのは深い共感と同類に対する共鳴、間違いなく今二人は歳の差、性別の差をその他諸々を乗り越えて心でわかり合えていた。

・・・ま、まあ話全体で見たらちゃんとした話ですよ? 面白かった。

何故か野球をしたりする

前作で登場した超が付きそうな変人である花咲仁(はなさきじん)から再度の依頼ですね。
野球部のエースを決めるための学園内でエース決定戦をやろうと3年生に難癖をつけられてしまった花咲が、御伽銀行に一緒に野球をやるメンバーを集めて欲しいと依頼を受ける訳ですが・・・。
もうなんか色々とダメな人しかこの学園にはいないという感じしかしません。

犬塚さんがバッターボックスに向かう。その背中に桃ちゃんが声をかけた。
「犬塚、打ちなさいよん! 打ったらご褒美に、ここ掘れワンワンプレイやったげるわよん!!」
「…………うおおー!! ぼくはやるよー!!」
燃え上がる犬塚さん。そんな犬塚さんを見ながらおおかみさんが聞く。
「…………なありんご、ここ掘れワンワンプレイって何だ?」
「そんなこと私に聞かないでくださいの」

今回はこうした違いの分かるマゾである犬塚さんなども登場して賑やかです。それにしても大きなおっぱいって凄いなあ!
ちなみに3巻に出てきた正体不明のブラウニーさんもチアガール姿で頑張ってくれますよ。

おおかみさんの休日のお話

特になんてことも無いんですが、とにかくおおかみさんの「いぬ」の備蓄量が減ったために補給しようとする話。
おおかみさんはいぬ派なんですね。で、訪れる先が森野亮士の飼っているエリザベスとフランソワだったりするんですが・・・。今回は本当に森野亮士とは関係なくいぬに会いにきちゃった感じでして・・・哀れ森野亮士。
ちなみにイラストではサービスカットがついています。

  • オイオイそのアングルは完全に具とか体毛が見えちゃうんじゃねえのか?
  • いや見えてないとおかしいんじゃないか?
  • だからちゃんと描くべきなんじゃないか?
  • 描いた方が絵としての完成度があがるんじゃないか?
  • ねえ、描いてよ!!(懇願あるいは泣き落とし)

・・・というようなイラストが付いております。イイですよ?
ちなみにいぬ好きなあなたにこの一冊をお薦めしておきます。

しばわんこの和のこころ

しばわんこの和のこころ

・・・なんか間違ったタイミングで薦めてしまったような気がするけど、まあいいか・・・。とにかくしばわんこが可愛いのでいいですよ。癒されます。

表題作?:とにかくおおかみさんに恋のライバル現る

突然の勘違いから森野亮士くんが火村真知子(ひむらまちこ)さんに熱烈求愛されてしまって、結果としておおかみさんがソワソワしまくり、なんだか森野亮士くんが怒って格好良くなっちゃったり、おおかみさんの可愛い所が見られたりと、贅沢な作りになっている一編です。
色々と引用したい所満載な話なんですが、敢えて一カ所だけ。

『………………………………きっ……きらいじゃ……ない』

いやー、いい話だったなあ。

総合

いやいや、面白かった。星4つ。
どの話も作者のサービス精神に満ちあふれている感じがとっても良いし、描写を重ねた結果キャラがそれぞれ立ってきた感じもしてきましたね。今まで目立ってこなかったメンツも今回はチョコチョコと動き回りますし、あるいは御伽銀行のメンツではないのだけど登場済みのキャラを上手く使って面白く仕上げてます。うんうん楽しい楽しい。
うなじ氏のイラストは・・・元々好きなので得に不満なぞありません。

感想リンク

booklines.net  Alles ist im Wandel