ギロチンマシン中村奈々子(3)高等教育編

ギロチンマシン中村奈々子―高等教育編 (徳間デュアル文庫)

ギロチンマシン中村奈々子―高等教育編 (徳間デュアル文庫)

ストーリー

ロボットが人類に叛旗を翻した世界。
ロボット達は<チェシャ・キャット>というロボットを頂点として圧倒的な戦力でもって人間達を追い詰めていた。しかし人間の反抗は予想を超えて強く、ロボットは人間を絶滅させる事が出来ない。
人類の粘り強さの謎を解き明かそうとしたロボット達は<学園>と呼ばれるロボット達の教育機関を設立した。そこで彼らは人間達の戦う力の謎——友情だとか努力だとか愛だとか——をロボット達に身につけさせようとしたのだった。
そこに迷い込んだ人間の少年兵の一人・山田(仮名)は、<学園>の中でギロチンマシンと呼ばれる<何故か純情殺戮マシーン>中村奈々子と、<学園>に叛旗を翻す<毒舌ロリータ少女>赤ずきんと出会い、そして遂に彼女達とともに<学園>の破壊、そして脱出を成功させる。
そして舞台は学園から移って一つの王国へ。船の難破によって離ればなれになった3人が見た、謎の王国の姿とは? シリーズの3巻です。

コメディ調は

かなりなりを潜めていて——とくに赤ずきんサイド——かなりシリアスに話が進みます。
山田は本名の中村を名乗るようになり、兵隊として出征するまえに親しくしていた家族の亜砂里と、その父親の空海と同居しての穏やかな暮らしをしていた。
しかし・・・どうも中村(山田)の心を違和感が捉えて離さない。人間の街は・・・こんなに静かだったか? こんなに平和だったか? 

「俺も亜砂里もロボットだったらどうする?」

空海の何気ない一言が日常の脆さを象徴します。

中村奈々子と赤ずきん

ギロチンマシンの中村奈々子は王国の王様である少女、アメリカ・ガシュコックに母と勘違いされて保護される事になっています。名前の通りうさん臭い少女のアメリカは、奈々子に対して異様なまでの執着を見せ、それと同時に王国そのものの異様さが露になっていきます。

「よく——わからない、王様なんか、やりたくない。大きなお城は、いらない。広いお部屋も、いらない。召使いも、綺麗な服も、なんにも、いらない」
わたしが疑問を声に出す間もなく、アメリカさんは嗚咽を漏らします。
「お母さんが、いない……お母さんは、いなかった……じゃあ、アタシは、いらない。こんな<王国>……いらない! 意味ないもん……! こんなお城に……きたくなかった……お母さん、お母さん……」

そして一番過酷な状況におかれた赤ずきんは王国の側にあった森へと迷い込み、恐らくはかつて人間だったと思われる「ほとんど獣にまで退化した人類」と出くわす事になります。そしてそこで出会った一人の少女・やぎと親交を深めながらも、体を壊し、獣にまで退化しつつある人類に失望し・・・。

遠ざかってみて、あらためて実感したよ。
私は、あなたたちがいないと……だめた。だめなんだ。
馬鹿。
馬鹿者め。
山田くん。ギロっち。
私を置いて——どこへ行ったの?

とにかく

謎の中心は中村奈々子、中村奈々子、中村奈々子、中村奈々子です。
ギロチンマシンの中村奈々子、山田という中村奈々子と同じ顔をもった少年、赤ずきんという中村奈々子、そして車いすに乗った謎の中村奈々子。
4人の同じ顔を持った中村奈々子の存在。そして示唆される「この世界がなんらかの実験場ではないか」という可能性。次々に危うくなっていく登場人物達の存在理由、自我、人間性・・・足下が激しく揺らいで来た3巻ですかね。

総合

星3つかなあ・・・?
世界そのものに対する謎とか、人間とは何か? といったところまで風呂敷を広げてくれるのは、まあ、いいんだけど・・・。
今回はメインキャラがあっちこっちに分散してしまった関係で山田、奈々子、赤ずきんの会話の妙みたいなものがほとんど無くなってしまっているのが痛い。
話としては必要な流れなのかもしれないけど、前2冊に比べた場合に、「突然のお笑い要素の減少」と「何とでも取れる謎めいた意味ありげな文章の増加」にちょっとリズムを崩された感じだねえ。あと赤ずきんが悲惨過ぎかな? 得意の毒舌も今回は全然と言える程出ません。
という訳で作品分類タグも[陽気/元気][恋愛]が消えて[シリアス]タグに置き換わっています。うーん。まあ、次に期待かな。

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