狼と香辛料(7)

狼と香辛料 (7) (電撃文庫 (1553))
狼と香辛料 (7) (電撃文庫 (1553))支倉 凍砂

メディアワークス 2008-02-07
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おすすめ平均 star
star面白かったんですが
star最後の一行に大きな意味が。
star短編がよかった

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ストーリー・・・というか

今回は短編集です。
正確には中編一つに短編二つなんですが、中編はホロとロレンスが出会う前(ひょっとして遥か昔の話か?)で、短編のうち一つは1巻と2巻の間、もう一つは2巻の後の出来事という構成になっています。
さらに面白いのは全ての作品で語り手が違う事で、中編ではロレンスが出てきませんので今回新しく出てくる少年・クラスが。次の短編ではいつもと同じようにロレンスが。そして最後の短編ではなんとなんとなんと、ホロが語り手になります。
さて、物語上では途切れている時間をこの短編がどのように繋いでくれるのでしょうか・・・?

なんだ〜

この間新刊が出たばっかりだからおかしいとは思ってたけど短編集か〜、じゃあ本編みたいな楽しみは期待出来ないなあ・・・。

とか思った私が浅はかで間違ってました。ごめんなさい。
商談で一喜一憂、ホロの反応で一喜一憂している普段の「狼と香辛料」のような楽しさこそ無いものの、とっても面白いのです。

構成の妙

最初の中編で出て来たクラス少年と、世の中の事を全然知らない少女・アリエスの物語がまず楽しいです。正直に言ってこの続きが読みたいですねえ・・・いつかこの話の先を書いてくれないかな〜とか思う位には気に入ってしまいました。

アリエスは慌てて両手を出して、赤ん坊でも助けるかのように胸元で受け止めた。ホロの無作法さには、作法とは程遠いクラスにも驚きだった。
「た、食べ物を投げるだなんて——」
「実った麦粒はやがて地に落ちるのが世の摂理。ならば、それを粉にして焼いただけのパンを投げていけない理由があるかや」
「え……?」

いかにもホロっぽい詭弁なんですが、それが心地よいですねえ。
しかしこれだけだったら「面白かった〜」位ですかね。面白い事は面白いので本当ならもう十分なんですけどね?

ところがところが

その後の短編(ロレンスが語り手)の話を読むに至って「おお、これこれ!」という感じになります。
クラス少年では全く歯が立たなかったホロとなんとかやり合おうとするロレンスが登場して始めて、ああ、これが狼と香辛料の楽しさだよなあ・・・と感じたりした訳ですね。

「妬いた雄など甘ったるくて食えぬ」
「ならお前は?」
傷が痛まない程度に握り返してロレンスは訊ねる。
「試しにかじってみればよい」

相変わらずロレンスはホロに勝てないんですけどね。でもやっぱりこの組み合わせだな〜と。
中編を読みながら知らず知らずのうちに「ホロ&ロレンス」の組み合わせの楽しさに「おあずけ」を食っていたのだという事に気がつくのがこの話ですね。

さらにさらに

その後の短編ではシリーズ初の「語り手:ホロ」が実現する訳です。なかなか本心を見せないホロの内面が読めるとなって涎を垂らさないファンはいないでしょう。そしてそれがまた実に楽しい。

まだ出会ったばかりだというのに、なんだか長い旅路を経てきたような感覚すらあり、その一つ一つを思い出すと大きな失敗をしでかした時のように胸が苦しくなる。
もちろん大昔にだって手ひどい失敗の一つや二つしていたが、それらを思い出しても胸は苦しくならない。
この旅で、急にそんなことになったような気がする。
「……なんでじゃろうか」
つい、呟いてしまった。

正直引用したい箇所は沢山あるのですが、未読の人の楽しみを奪ってしまわないように自制しておきます。
あの賢狼ホロが、ホロがねえ・・・いや分かっちゃいたけど、やっぱりこうして書かれるとムズ痒さが5倍位になりますね。読んでいる最中は「うふふふふふ・・・」という感じで、そしてこの1冊の読了後、「ムフ〜ッ」という感じの満足のため息が出てしまいました。
いや〜、やっぱりこのシリーズはいいなあ!

総合

本当だったら星4つなんだけど、構成の見事さを買って星5つにしちゃうな!
やっぱり楽しいんですよね。そしてこのシリーズの楽しさはやっぱりホロだけでもロレンスだけでも成り立たなくて、ホロとロレンスという絶妙のコンビがあって始めて成立するものなんだな〜と感心しまくりました。いや、見事です。
そして相変わらずあちこちに挿入される小ネタも楽しいですし(服が古着になってそして……って辺りとか)、言う事無しですね。やっぱり好きだなあ・・・。アニメ化もされているし、この勢いを維持したまま続けていって欲しいものです。次も楽しみ〜。

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