ぜふぁがるど

ぜふぁがるど (電撃文庫)

ぜふぁがるど (電撃文庫)

ストーリー

菅沼宙(すがぬまひろ)は、一見普通・・・というか大人しめに見える外見ながらかなり根性と気合いの太い人間であるが、それを除いては至ってまともな少年だった。15歳、青春まっただ中である。
しかし、ある日偶然変な羽を生やした小型の竜の様な姿をした生き物と出会う。で、これが何もかもの間違いの始まりだった。その変な生き物は彼に向かってこう言った。

『五体満足の健康な体。敵を前にしても恐れず一歩も退かぬ強固な精神。そして何より、アキノ・メイを守ろうとする意思……お前以上の適任者はこの世界には一人とていない! 私は決めたぞ、この力はお前にしか渡せん!』

変な生き物のいう「アキノ・メイ(メイ・ルー)」とはどうやら彼の幼馴染み(年上:世話女房的)の安芸野鳴(あきのめい)事らしかった。しかも変な生き物の言うところによると、鳴は異世界から来たお姫様(曰く、「竜の澪標」とかいうらしい)みたいなものであり、生き物は彼女を守りにやって来たのだという。
で、なし崩し的に何故か変身ヒーロー・ゼファガルドになってしまう宙(通称:ちゅう)の青春は如何に。
我が家のお稲荷さま。」の同作者が送る新シリーズです。つーかお稲荷さまの新刊はどうした。

あ”〜

この作者の書くなんとも言えないヌル〜イ感じが私好きなんですよね。
どうしても贔屓めに見ちゃうんですけど、やっぱり好きなんですわ。主人公のちゅうの程よいやる気の無さといい、ヒロインの鳴の何とも言えないアットホームな感じとか・・・もちろん変身ヒーロー物であるからして敵も出てくる訳ですが、そいつらもヌルいヌルい・・・。

「あー……これこれ、ちょい、そこのスライム……」

これは変身したちゅう(「ぜふぁがるど」に変身します)が怪物に言った最初の一言ですが、こんな感じで色々な意味で変身ヒーローのツボを外します。当然敵の怪人達も適当極まりないシロモノばかりして、

「われ、デア・ムント! ——ごち!」

(hobo_kingによる意訳:「私の名前はデア・ムントです。——頂きます。」多分ですけど)
というような塩梅です。緊張感というものが致命的に欠けています。まあそこが好きなんですけど。

ちなみに

主人公ちゅうと謎の生物(本名はネ・プルギス・ヤーというらしい)との会話もひたすら変身ヒーローの定石を外しています。

『昨夜は、私もお前もその余裕がなかったし、状況が状況であったから見逃したが……やはり礼儀として、戦いに挑む前に前口上を述べるべきだ。牙臣は誇り高い騎士なのだからな』
「前口上?」
『つまりな……たとえば、「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!」とか「遠からん者は音にも聞け、近からん者は目にも見よ!」とか……そういう、大した意味はないがカッコよさげでインパクトのあるセリフを、名乗りの前に乗せるんだ』
「言う必要性が理解できんし、言ってる間に攻撃されるわ」
『いや……悪役って案外そういうのは待ってくれるものだ』
「それ悪じゃないよ善い人だよ! 逆に俺が申し訳ないよ!」
『まあとにかく前口上は述べろ』
「断る」

・・・まー、終始こんな空気で話が進みます。でも確かに悪役は前口上待ってくれますね。時代劇とかでも。
良く考えたら私が時代劇でやりたい役って言ったら絶対に悪代官です。主人公が散々もったいぶって言った前口上に本気で怒って、ついでに歯ぎしり、挙げ句の果てには「皆の者! 斬れっ! 斬れぇっ!」とか言う訳ですよ。そんでしっかりと追い詰められて散々悪あがきをした後、スッゴイ悪い顔して斬られたり刺されたりするんだよね。ああ、やってみたい。
そういう意味ではインディー・ジョーンズは空気の読めない奴ですね。でも2ではそれ以前の問題でしたね。全然関係ないですけど。

総合

星4つ。どうしてもこの作者独特の脱力感が好きなんですよね。
紹介しきれてませんけど、ヒロインの安芸野鳴ちゃんもかなりおっとり感の強いお姉さんキャラですよ。しかも世話好きで料理好き。健気なんだけどでも普通な感じがとっても好きですね。ウチに嫁に来て欲しいです。
ここまで書いてきて今気がついたんですが、作品のイメージを掴んでもらうのは表紙を見てもらうのが一番のような気がします。一番でかでかと出ているのがヒロインの安芸野鳴ちゃん(眼鏡っ娘)で、右下の方にちっこく描かれた白くて厳つい奴がぜふぁがるど(ちゅう)で、さらにちっこいのが竜のような変な生き物であるところのネ・プルギス・ヤーです。
まあタイトルが「ゼファガルド」じゃなくて「ぜふぁがるど」な辺りでも空気の抜けた感じが分かるかなとか思います。あとがきによると担当編集がこの平仮名タイトルをとても気に入ったらしいですけど、その気持ち、私も分かっちゃいました。うん。

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