いちばんうしろの大魔王

いちばんうしろの大魔王 (HJ文庫 (み01-02-01))
いちばんうしろの大魔王 (HJ文庫 (み01-02-01))水城正太郎  伊藤 宗一

ホビージャパン 2008-02-01
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おすすめ平均 star
starファンタジーな意味での魔王の高校デビューもの
star次巻にも期待してまってます!

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ストーリー

紗伊阿九斗(さいあくと)は実に気持のしっかりした少年だった。
孤児という環境故かそれとも余りにも聡明過ぎる頭脳のせいか、精神的には激しく早熟だったけれども変に捻くれる事もなく、育ちが信じられないほどに真っ直ぐ育ち、色々と頑張って頑張って社会の役に立つべく「コンスタン魔術学院」に入学した。
期待と不安に満ちた入学だったのだが、入学早々中々に感じが良く、しかも気のあう女子生徒とも出会う事が出来た。阿九斗の学院生活は上々の滑り出し・・・のはずだったのだが、入学早々行われた「将来の職業」の調査によって(身体検査みたいなものらしい)将来「魔王」になると予言されてしまう。
結果として彼の輝かしいはずの将来には途端に暗雲が垂れ込め出して、なんだか雪だるま式に誤解が広がってしっちゃかめっちゃかの展開に。
阿九斗少年は本当に魔王になってしまうのか!? それとも公務員的な普通の未来はあるのか!? というような感じの魔法ライトノベルです。

タイトルは

パーマンのエンディング的ですが*1、予言は

「グリフィンドール!*2

とかそんなイメージのシロモノで、大抵は軍人とか医師とか外交官といったまともなものが宣言されるのですが、阿九斗くんの場合は違ったという事ですね。何しろ変な少年です。

遠足で景色のよい山に登り、いつもよりも豪華な弁当を出されてそれを食べているとき、「ここにいるかぎりはこれがもっともぜいたくなことだ。自分がなにもしていないのに誰かがよくしてくれる幸福はありがたいが、これ以上のことは自分がなにか他人のために働かないかぎりはありえないのだ」と突然さとって涙を流しはじめたりしていた。

遠足やら、平仮名が多い辺りに彼が何歳の時にこんな事を悟ったのかを想像出来ますが、とにかく変な少年です。
まあそんな結果として人の役に立てる人間になろうと努力を重ね、国家魔術師というまあ多分・・・公務員? を目指していた訳ですが・・・でもだからって魔王はちょっとあんまりという感じですね。善人なのに何故か周りが放っておかないという典型的な巻き込まれキャラです。

で、

そんな彼に最初*3に出会うのが服部絢子ですね。
刀がトレードマークの正義感で、侍少女と言うのが一番相応しいでしょうか。意地っ張りで真っ直ぐですが、その分融通が利かないという分かりやすい少女です。

「私たちの宗派では対等の友情を結ぶちょっとした儀式がある。小刀をともに握り、鍔を鳴らすのだ」
「良い習慣だね」
「そうかな? 裏切ったら斬られても仕方なしと確認し合う意味だ」
「僕は、そういう緊張感も好きだな」
阿九斗と絢子は手を取り合って小刀を握った。絢子がもう片方の手で柄を握り上下させると、鍔が乾いた音を立てた。
「最も軽い友情の印だが、男では君がはじめてだ」

・・・なんて感じのいい滑り出しだったんですけどねえ・・・。誤解が、誤解が阿九斗くんをなんでか訳の分からない方向に・・・。

そして

そんな混乱の中で阿九斗少年はさらに一人の少女と出会うことになります。
その名を曽我けーなといい、多分本編のヒロインです。

「ああ! 慰めなんて……! ありがとう優しい人! でも、あたしは人を傷つけてしまったみたい! この上はコ=ロ神に仕える聖職者として一生を終える他はないのかしら……この罪は一生かけて償わなければいけないのかも……」

のっけからこの塩梅です。意味不明ですね。
天然電波少女でとにかく妙な行動を取り続け、そしてまた姿を消す術を使って物語を引っ掻き回しまくります。姿を消すには全裸になる必要があるという設定がまたアレですね。

「うわ! ちょ、ちょっと離れてくれないか」
「だ、駄目……だって、離れたら、見えちゃう……!」

言っておきますが全裸で下からしがみついているのがこの曽我けーなです。もちろん押し倒しているのは阿九斗少年ですが、不幸な事故です。

さらには

彼を監視し、ついでに護衛もするというリラダン(人造人間)の少女・ころねというのも変極まります。
馬鹿みたいに真面目というか真面目過ぎて馬鹿に見えるかと思ったら、本気だか冗談だか分からない行動を取りまくる変な少女です。

なんとなく不穏な空気を感じで目を開ける。はっとして天井近くの棚を見上げると、棚の蓋が薄く開いており、そのすき間からころねの緑色の瞳がこちらをじっと見つめていた。
「……ねぇ?」
「はい?」
「……ひょっとして、からかってる?」
「やや」
「……………………………………」

やや、ではさっぱり分かりませんが、とにかくこんな感じです。

そんな彼らを中心に

物語は意味不明な方向にどんどこ進んでいきまして、学院内部の謎の勢力争いなどに巻き込まれたりして、じゃんじゃか阿九斗少年=魔王の図式が固まっていったりします。しかし何とも変なコメディですね。でもキャラクターをついつい丁寧に紹介したくなる位には良いですね。
うーん、話にも味があるというか、悪い奴はきっとあいつだって感じが読んでいて凄い訳ですが、本当に悪い奴はまだまだ隠れているようでして、そしてまたさらに一番悪い奴がもの凄く目立っている話でもあります。
確かに大魔王はいちばんうしろの席に座ってそうです。

総合

星4つ。面白かったな。
いや〜、主人公を含め、周りのキャラクター全般が気に入りましたね。ただ死体マニア(?)な変態教師はちょっとストレート過ぎてヒキましたけど、他は全体的によかったかな。特に主人公の阿九斗少年がいい味を出しているのがよかったです。
夢に向かって頑張ってきたのに何故か魔王という職業に就くことになりそうですが、まあよく考えると魔王なんて働き者しかなれませんしねえ・・・。
イラストは全体的に好きな絵柄でしたが・・・口絵のカラーイラストの最後の一枚がどうしても納得がいきません。
ちなみに絵になっているのは上の方で引用しているけーなの全裸シーンです・・・が! 右を隠している物体はまだ納得も出来ますが、左のソレはない、ソレはないわ!! だってチョークが女の子の「ツンっと小さく固いピンク色の頂」に、そんな絶妙のバランスを持って乗る訳無いじゃん! 訂正を! 訂正を要求する! 乳首を露出させる方向で!!!(上で濁して描写した意味がたった今無くなりました。)

*1:分かる?

*2:劇場版。

*3:厳密には違いますが。