輪環の魔導師(2) 旅の終りの森

輪環の魔導師 2 (2) 旅の終わりの森 (電撃文庫 わ 4-26)
輪環の魔導師 2 (2) 旅の終わりの森 (電撃文庫 わ 4-26)碧 風羽

アスキー・メディアワークス 2008-03-10
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おすすめ平均 star
star初めての旅でセロが出会った少女、その正体は・・・
star新キャラがぞくぞく出てきます

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ストーリー

自分の中に封じられた大きな秘密と、あと自分にぴったりとくっついて離れない年上の貴族の少女・フィノと一緒にミストハウンドという村から旅立ったセロ
彼は黒猫の姿をした魔人ファンダールの弟子で魔導師・アルカインに導かれて別の街へと辿り着く事になります。そこでの予定はアルカインの仲間との合流だったのですが、その二人も別の所で魔族の襲撃を受けていました。
隣町のロンバルドでちょっとした観光気分のフィノと一緒に今までの事、これからの事を考えていたセロの前に謎の少女が姿を現します。その少女は明らかに人間以外の存在でしたが・・・。

”……たすけて”

伝説の魔道具・環流の輪環を中心に優しい筆で語られるファンタジー作品の2巻です。

フムン

安定していますね。
前シリーズでもそうでしたが、作者のライトノベルに対する姿勢というか、人柄がにじみ出ているような作風です。
なんというんでしょうか・・・裏表の膨らみを持った人物像が造られていて、さらにそのキャラクターの見せ方が上手いために、実にふくよかな印象を受けます。

世界観は

現時点ではあまり説明される所も多くなく、なんというかいい感じで曖昧なまま話が進みます。魔法ってなんじゃらほいとか、精霊って一体なんじゃいとか、魔道具ってどうやって作られるんだよとか、そういった事は深く突っ込まれません。
今後その辺りがフォローされる可能性はありますが、私は最後までフォローされなくてもいいかな〜とか思っています。魔法は使えるから使えるんだろうし、精霊はとにかく精霊なんでしょうし、それで十分だと思っているからです。物語の面白さと設定の練り込まれ加減は一致しませんからねぇ。上手いさじ加減で今後も進んでいって欲しいものです。

それに

お気に入りなのは素直に作られたメインキャラクター二人ですね。
主人公のセロは取り立てて自己主張の激しいタイプではないのですが、どうしてか分かりませんが存在感があります。良くも悪くも個性の強いヒロインのフィノに絡まれているのにどうしてか薄い印象を受けません。なんというか・・・梅干しのように全体を引き締めてくれるというか・・・例えが悪いですけど。

「よく考えたら、まだ言ってなかった気がするから——その……一緒に来てくれて、ありがとう」
フィノが眸をしばたたかせた。
「フィノに何も言わないで、ミストハウンドを出ようした僕が、今更言えることじゃないけれど——今はフィノがここにいてくれて、本当に嬉しいって思うんだ。やっぱり、一緒にいられるのっていいな、って——だから、ありがとう」

なんと素直で、なんと勇敢で、なんと健気な少年なのでしょう・・・! そりゃあフィノがご執心になるのも分かります。私もこういう素直な少年は大好きですね。

もちろん

彼に絡む形で終始物語を彩るヒロインのフィノはまたこれが最近流行のちょっと怖いタイプの少女ですね。セロに対する執着がすんごいです。

「そう! それが不安なの! セロはお人好しすぎて、嫌なことも嫌って言えないんだから!」
フィノからまるでぬいぐるみ扱いに抱き寄せられて、セロはたちまち顔を赤くした。
「そ……そんなことはないよ。今だって、できれば離して欲しいし……」
「それは却下」
ふざけて理不尽な対応をしながら、フィノはセロの髪を指で梳かし、その髪へ愛おしそうに唇を添えた。

一体何が起きているんだ
とにかく暴走しているヒロインでして、セロを薬で昏倒させて一つのベッドで無理矢理寝たりとか、他の女の気配を感じると超が付く程敏感に反応したりとか・・・独占欲が普通の人の150倍位あります。一歩間違うとセロにとって一番危険な人物となりかねないあたりがまた・・・。

とにかく

今回は新しくキャラクターも増えて、そのキャラクターの二人であるホークアイ(馬鹿学者)とシズク(アルカインLove)が物語をさらに盛り上げてくれます。この二人もいい味を出しているキャラクターで、かつ困った人間ですが嫌いになれないですねえ・・・というか好きかな。
ちょっとしたどんでん返しみたいなものも用意されていますし、今後の暗雲立ちこめる気配も示唆されていますし、続きにも期待しますね。

総合

星4つ。
安心して楽しめるシリーズとして、今後も追いかけたいですね。
フィノも良いですが、今回はフィノに強力な恋のライバルが現れますし、この二人の恋の鞘当ても見逃せません。まあ、どうせ泥仕合になりそうですが・・・。そういう意味ではシズクの恋慕がアルカインに届くのかどうかもちょっと興味がありますねぇ・・・アルカインは今猫ですけどね。
イラストは続けて翠羽風氏ですね。やはり表紙、口絵のカラーイラストともに色鮮やかで素晴らしいと思います。この人の絵、間違いなく好きですね。