ライタークロイス(3)

ライタークロイス〈3〉 (富士見ファンタジア文庫)

ライタークロイス〈3〉 (富士見ファンタジア文庫)

ストーリー

騎士になることを夢みながらも、複雑な事情のため騎士登用試験に合格出来なかった騎士志望の若者・カインは、皇女ファリアの従衛として仲間のレイクと帝都に留まっていた。そして皇女に与えられた任務——友好条約の更新——に従う形で、隣国のインフェリアを訪れていた。
友好条約とはいえインフェリアといえば帝国に対して水面下で不穏な動きを見せている国でもある。特に騎士勲章(ライタークロイス)に秘められた謎については国家の大物すら送り込んで諜報活動を続け、さらなる研究をもしていた。その理由は、騎士が魔獣と戦うために手に入れている力に対する聖獣という謎を解き明かすため・・・。
舞台を今まとは違う場所に変えて綴られる、正統派といえるファンタジー作品の3巻です。

今回は

カインが任務で国外に出てしまうので、結果として某侍女と某皇女が正面衝突するような事態こそありません・・・が、こちらも水面下で色々と暗躍しております。というか、いいなあイングリド・・・。

——あの人は、インフェリアに着いた頃でしょうか。
であれば、あと一月ほどで彼は戻ってくることになる。あるいは、もっと早いかもしれないし遅いかもしれない。とにかく、無事で戻ってきてくれればとイングリドは願う。
そして、戻ってきたとき、帝都を発つ前と変わらない状態の部屋を用意しておきたいと、彼女は思う。

パーフェクトだウォルター。(それは執事)
というような感じです。いや〜可愛いというか、もはや精神的には内助の功がバリバリ噴出しているしっかり者の奥さん的な位置につけています。というかここまで根性が据わってないとあの皇女とはやりあえないか・・・。

で、

もう一人のヒロイン(メインヒロイン??)の皇女ファリアですが、嫌いな侍女がいないので結構自由にやってます。オマケ付き(レイク)とは言え、カインとデートらしきものまでしていますし・・・。

「これがよいな、これが欲しい」
そう言ってファリアがつまみあげたのは、薄紅色をした珊瑚の指輪だった。
「僕が買うのかい?」
「卿は、親しい者たちに土産を買っていくのだろう? 私への土産はないのだから、ここで買ってくれてもよいではないか」

この後に出てくるシーンでファリアが取った行動を見ると、今後の嵐が想像出来そうでちょっと怖いです。特に舞踏会でのファリアの言葉はちょっとキてますね・・・! 新たな火種にならなければ良いのですが!(裏腹に期待に満ちた目)

ところで

本筋の方は今回結構激動の展開をしてくれます。というか余りに意外な人が退場する事になるのにビックリしました。
まさかそんな展開が待っているとは思わなかったというか・・・容赦ないなあというか・・・。その一件がカインの心に刻んだ傷は決して小さくなかったようですが、それを力にするだけの柔軟性をカインは持っている様でもあります。そういう意味では今回はバネが縮んで力を溜めるために用意されたお話とも言えそうです。

それから

隣国のインフェリアも不穏ですが、それよりさらに魔獣という不穏な存在が本格参入してきた感じがあります。

『背きし蛇。蛇に従いし四瑞(アルター)。時の経過とともに、増えている。ことに、大地の奥は危険。主の害となる前に喰らっておかねば』

蛇とは一体何か? 「四瑞」の方はなんとなく分かりますが・・・今後の展開が気になります。

総合

安定した楽しさがこのシリーズの売りですね。星4つ。
今回は2巻のような二大怪獣激突みたいなシーンはありませんが、ちゃんとファンタジー作品として楽しめる作りになっている所がとてもいいです。なんだかんだ言ってもやっぱり主人公のカインというキャラクターが魅力的なのかもしれません。
ライトノベルでは大人しめの主人公は結構没個性になりがちな傾向があると思いますが、何気に自己主張がちゃんとあってキャラが立っている所が良いですね。もちろん1、2巻辺りから言っている通り、周囲のキャラクターも十分に魅力的です。全体的にバランスが取れているのがなんとも良いですね。

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