シアンとマゼンタ

シアンとマゼンタ (集英社スーパーダッシュ文庫 さ 6-4)
シアンとマゼンタ (集英社スーパーダッシュ文庫 さ 6-4)砂浦 俊一

集英社 2008-02
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おすすめ平均 star
star中学生向け

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各所で評判が良かったみたいなんで読んでみたんですけど、おっほう、これはなかなか。

ストーリー

秋泉真朱(あきいずみまそほ)・ちょっと大人っぽいところのある女子中学生で右目に赤い色の義眼を嵌めている風変わりな少女で、妖視(あやかし)という普通の人間には見えない怪異を見る事の出来る能力を持っている。
爽条藍姫(そうじょうあいひめ)・元気で真っ直ぐな女子中学生で、剣道部に所属している剣道少女だけれども、「陰神」を祓う「つきはらい」の能力を持っている。でも陰神を見る事は出来ない。
一人では怪異とは戦えない、でも二人でなら戦える! 性格も能力も違うけどとても仲良しな二人が勇気を出して怪異と戦う妖魔退治ストーリー。

ほほぅ

という感じですね。
読み始めは「ちょっとつかみが弱いかな〜」とか思って途中で何度か読むのを止めていたのだけど、中盤以降はどんどんと物語が加速して行って読ませる読ませる。
えげつないというか・・・狂気に染まった人間とか、人非人を敵とした物語を読みたければスーパーダッシュ文庫か? と思わせる位にこういう路線が得意ですね。紅とかもそうですし、最近だと鉄球姫エミリーとかもえぐいしなあ。編集方針なのかなんなのか分からないけど、例えば電撃文庫辺りと比べると刺激が10%増しのような気がします。
まあこの話に出てくる「頭のアレな人」は全て「陰神」に取り憑かれているという設定なのでなんとなく救いが・・・ある、ような、気もしますけどね。

とにかく

メインの二人の友情と信頼に裏打ちされた助け合う姿がとても良いですね。
真朱が出来ない事は藍姫が、藍姫が出来ない事は真朱が、という感じでお互いがお互いの足りないところを補って敵と戦って行く姿は中々に読んでいて気持ちいいですね。
別に率先して戦おうとしている訳ではないですが、彼女達はそれぞれが持つその不思議な力に導かれる様に事件に巻き込まれて行きます。そんな中で・・・

だが藍姫は握った拳で、目尻に浮かんだ涙を拭って立ち上がる。
悔しくて泣くことはいつでもできる。
だから今は、自分ができることをする。

こんな風に藍姫が勇気と決意を振り絞り、

「私はね、相手が藍姫だから隠しごとナシで言わなきゃならないって思うの。どんなに辛いことでも隠しちゃいけないって思うの、だって私の見えなくなってしまったはずの半分の世界に映し出されるものの話、それを信じてくれるのは藍姫だけだもの」

こんな風に真朱が心を開きます。
才能ははあるけどまだまだ子供。そんな二人が持っている「本当の力」は、結局のところ勇気と友情という魔法なのでしょう。

ただ

ちょっと気になったのが簡単に見つけられた脱字ですね。うーんと、2カ所はかな? p79とp143。
誤字だったら気がつかないまま詠み飛ばしてしまう事もあると思うけど、脱字は目立つからなあ・・・この辺りについては原稿のチェックを丁寧にやって欲しいものです。

総合

星4。
ちょっと最初の勢いが足りないけど、中盤からはかなりの勢いで読み進められると思います。
幾つかの事件が絡み合って、一つの大きな出来事に収束して行く話の作りはなかなかに楽しいものがありました。敵の動機が理解できないので先が読み辛いというのも作品の面白さに一役買っていると思いましたね。
イラストはAKIRA氏です。カラーイラストも魅力的ですが、同じ位本編の白黒イラストがいい味を出しています。p265のイラストは、まあその、藤田和日郎か? とか思いましたけど使い方としてはとても良かったと思います。
ところで登場人物全員の名前に「色」を意識した文字が入っている訳ですが、そのうちネタ切れにならないか? とか微妙に今から心配してみたりして・・・。

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