いちばんうしろの大魔王(2)

いちばんうしろの大魔王ACT2 (HJ文庫 み 1-2-2)
いちばんうしろの大魔王ACT2 (HJ文庫 み 1-2-2)水城正太郎  伊藤 宗一

ホビージャパン 2008-05-01
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おすすめ平均 star
starストーリーはちょっと前進
star一巻以上のものを求めると物足りなくなるような気が……。

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ストーリー

紗伊阿九斗(さいあくと)は実に真面目かつきちんとした少年だったのだが、学校入学時に行われる「将来の職業」調査(というより魔法を使った予言?)で「魔王」になると予言されてしまってからというもの、彼の人生は七転八倒状態。あちこちからあらぬ嫌疑をかけられ、何かと言えば悪意で解釈され、政府からは監視員が送り込まれ、しまいには舎弟みたいな奴まで出来てしまった。
それでもめげない真面目な彼は今日も今日とて善かれと思って行動するのだが、悉く裏目裏目に出続ける。同級生を事故でスッポンポンにしてしまったり、全校生徒前でのスピーチ中には公開セ○クスをしたとかしないとかまで言われたり・・・とにかくムチャクチャだった。
とにかく周囲には碌な人材がいないし、物事は何故か彼が泥沼にはまる方向で動いていく。今回も偶然見つけた「宝の地図」が阿呆の手によって一般生徒に流出した事によって彼は猛烈な災厄に見舞われてしまうのだが・・・?
紗伊阿九斗はやっぱり魔王なのか!? 小市民的な幸せはどこかにないのか!? という変なファンタジーシリーズの2巻です。

んんん〜?

この本の1巻で私が魅力に感じていた部分というのは、紗伊阿九斗くんの内面の誠実さと真面目さと現実のギャップだった訳ですが、今回はその部分がちょっと弱いんですよね・・・。
いえ、別に彼が悪人になったという事は決して無いんですが、1巻と比べるとちょっと弱い。全編で見た場合にアクション要素が強くなっている関係で、その辺りの描写が弱まったんですかね。うーむ。
ひょっとしたら紗伊阿九斗くんが「自分がワルモノとして誤解される現状について諦めつつある」という感じがあるからかも知れません。

「おいおい、どうなるんだ、こりゃ……」
「まさか全校生徒の前でやっちまうってんじゃ……」
「いや、もうやってるかもしれん」
「まさか、スカートが被さって見えないが、あの下、はいてないってのか?」
「いや、いくら魔王だからって……。それに妙に冷静な顔だぜ?」
「いや、悪役ってのは、表情も変えずに女とやるものじゃあないか」
「そ、そうだな……。だが実際にそれを見せられると、男として敗北感を感じずにはいられないな……」
「全校生徒の前で……とてもかなわねぇ……」

クラウザーさんか、はたまたデューク東郷か・・・まあ確かにここまで誤解されたらもうどうしようもないという感じもしますが、諦めないでいつまでも見苦しく足掻いて足掻いて、さらなる泥沼に突入して欲しいものです。
ちなみに、引用部分だけだと状況としては分かりにくいですが、大きなオトモダチなら「偶然の駅弁スタイルが発生したことによる誤解」と言えばご理解頂けるかと思います。

いい味出してたのは

今回は服部絢子江藤不二子の二人ですね。
絢子は正義の剣術少女で「魔王なんて大嫌い」ですが、どーも紗伊阿九斗くんが気になって仕方がないというか、悪い奴だと思い切れずに悶々と悶々とアブナいようなアブナくないような行動に走ったりしてますし、

「馬鹿、馬鹿っ……! 貴様のそういう態度がいかんのだっ! 善人か悪人かはっきりしろっ! それに大切に思っているなら、私のことを……」

危うく愛の告白でもしそうです。
それに加えて1巻の敵役不二子ちゃんですが、今回は色々あって紗伊阿九斗くんと手を組む事になり、その挙げ句の果てには・・・あ〜やっぱりというか、そうくるかというか、順当というか・・・まあ本来魔王を信奉する黒魔術師ですからねえ・・・。

それはともかくとして

不二子による「この世界における魔術理論」の説明は中々面白かったですね。
神の実在と、それに仕える事によって振るう事が出来るようになる力・・・この関係性は今では一部でしか使われなくなったメインフレームとその端末の関係に似ていますかね? 神の名前のついた大型コンピュータに端末からアクセスして機能を引き出すという関係です。

「神に仕えて魔法を使う」=「メインフレームに対するアクセス可能な端末を使ってその機能を使用する」

でしょうか。
で、話は戻りますが、この話の中の黒魔術師は「不正なアクセスをもって禁止された機能を使用しようとする者」の事ですね。でもそんな不正アクセスはなにかと面倒な訳で・・・。

「それじゃあ黒魔術師でいることに意味はないですよね?」
「そうですわ。だから、黒魔術師は独自の神を持とうとした。自由な神を。何も禁止しない神を」
「その神は?」
「もうありませんわ。前の大戦で破壊されましたの。再度それを作るのが黒魔術師の夢ですのよ」

制限なく自由に使えるメインフレームを一台よこせと、つまりはそういう事のようですね。

まあ

そんな世界で今回も色々と起こる訳ですが、メインヒロイン(?)の曽我けーなは今回ほとんど存在感がありません。最初の方に出てきて脱いだりする位の扱いです。
ロボのころねも見せ場という意味では弱いですねえ・・・1巻で見せつけていた妙な存在感が薄れてしまっているのが残念です。
まあ、そうした背景には今回新たに登場する照屋栄子が物語を引っ掻き回しているのも原因でしょうが、この新キャラはあんまり魅力を感じなかったんだよなあ・・・。

総合

星3つかな・・・。
まー不満に感じた部分に付いてはもう書ききってしまったのでいいですが、一応次も読みます。なにやら3巻のプレリュードという感じの出来でして、どうもすっきりしなかったというのが本音です。主人公くんは頑張ってはいるんですがねえ・・・。
キャラクターで言えば今回はブッちぎりで服部絢子が魅力的ですね。けーなは意味不明過ぎて訳が分かりません。本当の大魔王はけーなのような気がしないでもないですが・・・。
イラストは前回と比べて少し大人しめです。でもどう考えてもそのヒヨコは邪魔だろ!? ・・・ま、本編内の白黒イラストは結構動きがあって好きですけどね〜。

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