ライタークロイス(4)

ライタークロイス4 (富士見ファンタジア文庫)

ライタークロイス4 (富士見ファンタジア文庫)

ストーリー

隣国インフェリアでの任務から帰還を果たしたカイン。その任務は先方の都にて魔獣と戦う羽目になるという危険極まりないものであったが、それを乗り越えて帝都に戻ってきたのだ。
相変わらず家で待っていてくれていたイングリド、一足先に騎士になったアヴァルとの険悪な会話、そしてファリアレイクとの日々の訓練・・・帝都での暮らしは一見平常を取り戻しつつあった。
しかし、水面下では危険な動きが発生し始めていた。それと呼応するようにして立て続けに発生する帝国の危機、さらにはレイクまでもが「皇女の従者を辞める」と言いだした。
国内に敵を抱え込んだ帝国と、その帝国の騎士になることを夢見るカインの運命は果たしてどうなるのか。激動の第4巻です。

正直

序盤は退屈な展開に思いました。
ですが一番気になったのは退屈さではなくて、序盤でカインと話をすることになるリオンという人物が突然出てきたように感じたことです。
その後の描写でリオンというのがリオン=フルカスだというフルネームだという事が書かれているのですが、人物の名前が名前で書かれたり名字で書かれたりすることが結構あるので混乱していけません。・・・それとも読み落としているだけでリオンはリオン=フルカスだという描写があったかなあ・・・? もしかして、1〜3巻のどれかだったりして?
とにかく、この話の序盤から中盤は物語の大事な土台の部分だと思うのですが、それをたかが名前の描写でわかりにくく描写してしまうのは頂けないと思います。これでは本の先頭に親切な人物相関図が付いていても台無しです。なぜなら相関図には名前しか載っていないからですが。
もちろん相関図は既に登場済みのキャラクターが出ているわけですが、その登場人物も偽名やら別の名前やらを名乗って出てきたりするのでやっぱり混乱します。・・・まあこの辺りについては作者と編集の人にもう一度「見せ方」というものについて相談して欲しいところですね。

ただし

それ以外の点についてはかなり満足な出来でした。
上で文句を言っている序盤であっても、あいかわらずなイングリド vs ファリアの女の戦いは必見です。

「相も変わらず不景気な顔だな」
「以前とお変わりなく、人格をそのまま形にしたような顔ですね」

物語ののっけからこれもんですし、さらに別のところで顔を合わせた際など、

「貴様は——」
「あなたは——」

こう言って固まってしまうような状態です。ここまでガチな敵対関係にあるヒロイン群というのも珍しくないでしょうか。
もちろんこうしたキャラクター同士の衝突も楽しいのですが、外堀を埋めるような動きをイングリドとファリアの周囲の人間がしていたりするのも面白いですね。妙に生々しい展開になってきて読者の私としてはドキドキです。

それに加え

中盤から後半にかけての物語の動きはもう読むのを止められない出来でしたね。
レイクの突然の心変わりを物語の皮切りとして、立て続けに起こり始める帝国の危機に翻弄されるカインと、彼が迫られる選択はいかにも勇者の物語として盛り上がるところでしょう。ある意味ではこの「ライタークロイス」という物語で今のところの一番の見せ場がやってきたかも知れません。

——僕は豪勇無双の英雄じゃあない。伝説の勇者でもない。
だが、自分の槍で、守るべきものを守ることができたら。そう在り続けることができたら。その想いは、夢だろうか。実力の伴わない妄想だろうか。
——やるだけだ。

カインは一見普通の若者ですが、その若者が必死の思いで導き出す結論に・・・正直勇者の姿を見ますね。カイン自身がどう言おうとも。

総合

星4つです。
幾つかの欠点が無く、もう少し話のもって行き方が上手ければ星5つにした可能性があったんですが・・・届きませんでしたね。でも相変わらず面白いですね。
今回は物語全体で見た場合でも大きな転換点もやって来ることですし、3巻まで読んでいる人なら買って読んだ方が絶対にお得ですね。カインも順調に強くなってきているようですし、このままのペースで巻を沢山重ねていってくれれば「騎士カインの立身出世物語」としてかなり楽しい作品になるのではないでしょうか。今後にも期待しつつ待ちたいところです。
ちなみに一部で「可愛くない」と評判の悪い柴倉乃杏氏のイラストですが、私はそんなに嫌いじゃなかったりします。ヒロインが可愛くないイラストよりも、動きや味の無いイラストの方が嫌いなモンですから・・・。イングリドとファリアも十分良く描けていると思いますけどね〜。

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