七本腕のジェシカ(2)

〔MF文庫J〕七本腕のジェシカ2 (MF文庫 J き 1-5)
〔MF文庫J〕七本腕のジェシカ2 (MF文庫 J き 1-5)芳住和之

メディアファクトリー 2008-07-23
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ストーリー

汎不死社会。

  • 魔神の力を借りて社会の頂点に君臨する貴族達。
  • そして貴族によって生み出され貴族に仕える不死者である献身士。
  • 献身士になるべく命を投げ出すようにして「淘汰」に挑む人間達。
  • 貴族に<刈り入れ>という睨みをきかせつつも契約の定めにより封じられた魔神達。

彼らは踊る。知る者も知らない者も。ひたすらに一つの円環状につながり終りの見えない閉塞した世界を踊る。
彼らはそれぞれ過酷な世界による「淘汰」から逃れようと足掻く。「淘汰される」ことは「死ぬこと」。「死ぬ」ことは「ただの名も無きカロリー資源になる」こと。命というエネルギーは全ての存在を等しく巡る。貴族にも、献身士にも、人間にも。等しく、残酷に、容赦なく、着実に・・・。それでも、一種のライフサイクルとしての完成を見たこの世界は一千年をその姿で過ごしていた・・・。
だが、何かがおかしい
献身士であるエドガー・Vは貴族ヘルマに仕えながらもその気持を抑える事が出来ない。彼はその胸に決して止まる事の無い<泉>を持ち、首筋には主たる貴族に命を吸わせるための<飲み口>を持った不死者の一人であるのだが・・・。おかしい。何かがおかしい。今の生き方は正しいと教えられてきた。しかし、何かがおかしい。
そんなエドガーの疑念は<刈り入れ>を行うために一千年の眠りから覚めた七本腕のジェシと呼ばれる少女に出会った事でさらに膨らんでいく。ジェシカこそが、その身の内に七体の魔神を宿した<刈り入れ>を行う宿命の娘だった・・・。
荒廃した未来世界、吸血鬼ヘルマの支配する都市・ヴァレトゥディナリアの街で巻き起こる淘汰と命のせめぎあいと、指命と想いのせめぎあいが紡ぎ出す奇怪な物語の2巻です。

ひょっとして

とんでもない物語を読んでいるのではなかろうか・・・という気がしました。
単純に考えれば吸血鬼と人間、そして吸血鬼に支配された生ける屍(血を生み出すための半死体)という構造で説明が付くのですが・・・。
それにジェシカという存在が組み合わさって、さらには世界の成り立ちに関わっている<七人の魔王との契約>があり、それに基本的に従う形で全ての生命体が活動しており、さらには特有の概念などまであるとなると・・・最早簡単に物語りそのものに触れて終わるのは難しくなります。

その辺りは

1巻の感想の時にも書いたことなんですけど、さらに2巻でその濃さが増していくようです。
それぞれの思惑や世界設定が複雑に絡み合って、油断して読んでいるとあっという間に意味不明な物語になります。
まあ分かりにくいなりにも、キャラクターとして一番理解しやすいのはヘルマでしょうか。次いでオフィーリアでしょうかね。この二人に関しては比較的行動原理が現代的(この作品風に言うと混沌文明期風)で単純ですので。
しかし、それがコーデリア辺りになるとだんだん意味が分からなくなってきまして(それでもロボなので分かりやすい方ですが)、メインキャラのジェシカとエドガー辺りになるともうさっぱり分からなくなります。この物語の舞台になる汎不死社会半分、普遍的な人間としての部分半分という感じでせめぎ合っています。
それでも普通のボーイミーツガールだと思えば大筋では分かりますが、この話をそういうシンプルな受け止め方ををしてしまってれで良いのかな〜という疑問も湧いてくるから困ったもんですね。なんというか、物語の上澄みだけ飲み干しているような感じで損した気持ちになるからですが。それだけ色々と濃いということです。
これは多分・・・説明不足というわけではなく、この話の中に作られている新しいとも言える哲学や理念や道徳というものに私がついて行けないからです。なんとも困った話です。

総合

久しぶりの評価不能です。
なんというか・・・自分の頭の固さがちょっとイヤになりましたね。
作者が新しい吸血鬼の物語を綴ろうとしているのは分かるんですが、その新しさについて行けないのがなんとも悲しいですね。読みながら気になったところにポストイットを貼りまくったんですが、その数の膨大なこと! MF文庫では読了までにかかった時間がトップクラスです。途中で訳が分からなくなって読み返す回数が多かったからですが。
この2巻で1巻からつながっていた物語は一応の決着をみますので、1巻で興味を持たれた方は読んでみるのはいかがでしょうかね。あなたの脳みその固さを判定してくれる作品だと思います。
・・・そうそう、一応書いておきますが、読み方によってはかなりエロティックな作品ですよコレ。エドガーくん、気持ちは分かりますけど色々と感じすぎです。最後にはジェシカに○射らしきことまでしてますしねえ・・・。

感想リンク