ドラゴンクライシス! 真紅の少女

ドラゴンクライシス!—真紅の少女 (集英社スーパーダッシュ文庫 き 1-5)
ドラゴンクライシス!—真紅の少女 (集英社スーパーダッシュ文庫 き 1-5)城崎 火也

集英社 2007-01
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おすすめ平均 star
star直球きたッ!
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ストーリー

如月竜司は一見するとただの高校生だったが、その筋では有名な遺物(ロスト・プレシャス)ハンターを両親に持つ少年だった。
遺物とはそれだけで特殊な力を持った品物の事で、遺物使いという、遺物の力を引き出せる人間に取っては兵器にも、魔法の代わりにもなるという夢のような品物だった。しかし、竜司自体は遺物にのめり込み、自分を省みない両親の姿を醒めた目で見る少年でもあった。
しかしある日、彼のハトコの大学生の娘・七尾英理子が久しぶりに彼の前に姿を現し、手を貸して欲しいと言い出す。英理子も竜司の両親と同じように遺物を追いかけていた。今回竜司を巻き込んだのももちろん遺物絡みの話で、遺物を世界の裏で取引するブローカーの”ファング”からある遺物を強奪するのだという・・・!
本当なら遺物などに関わりたくない竜司だったのだが、残念なことに彼には遺物を扱うための才能——つまり遺物使いとしての才能を持ち合わせていたった。
英理子に無理矢理付き合わされる形でファングから遺物を奪取することに成功した竜司たちだったが、フタをあけてみると出てきたのは遺物・・・というか一人の金髪の少女だった。
”遺物”と、その遺物の頂点に立つ貴重品と言われる”ドラゴン”と、一人の少女・ローズを中心に語られるアクションライトノベルの1巻です。

なんか

既刊が沢山あるみたいなんでつい手にとって読んでみたんですが・・・いやあ、なんだかパッとしなかったなあ。
主人公の竜司、ヒロインのローズのキャラクターメイクは上手く行っているようには思うんですが、とにかくもう一人の中心人物の英理子がうざったいというか馬鹿というか邪魔くさいというかメチャクチャというか。
いや、普通の高校生を普通でない物語に巻き込んでいくためにちょっと普通でないキャラクターが必要だったのは分かるんですけど、それにしてもこの英理子はちょっとやり過ぎかなあ? 後先は考えないわ、責任は取らないわ、面倒ごとは押しつけるわ・・・。
話の中ではナイスバディのお姉さんとして語られている英理子ですが、ぶっちゃけカラダの魅力しかないような女ですよコレ。全くキャラクターに厚みが無くて、ただの迷惑な人に成り下がってます。

あと

気になったのが、竜司と両親の関係についてですかね。
まあ本編の中で色々とあるんですが(ネタバレになりますのでその辺りは具体的には書きません)・・・そんな展開で納得できるのは本当に子供の読者だけじゃないかなあと思ったりしたんです。それは私が大人の視点で物語を読んでしまうからでしょうけれども、簡単に言えば、

  • 両親が今まで積み重ねてきた無責任極まる行動は、ほんの些細な贈り物一つでチャラに出来るようなものではない。
  • 親子積年の関係のゆがみがそんなもの矯正できるならば、世の中から不幸な家族は存在しなくなるだろう。

でしょうか。

子供にとって

親と一緒に過ごす時間ほど大切な贈り物は無く、与えられる目に見えない愛ほど貴重なものは無いのだと私は思います。そしてその二つを与えようとしない大人は、どんな美談を隠し持っていたとしても親失格、だと思うんですね。
例えばですけど・・・親が子供に莫大な金額の遺産を残すとか、あるいは巨大な権力を与えるとかしたとします。確かにそれは出来たら凄いことです。親が子供に与える贈り物としてはもの凄く大きくて素晴らしいものかも知れません。
でも、贈り物の大きさで子の信頼や子との絆は得られないと思うのですよ。親が子にギフト(命とか才能とかお金とか)を与える行為は、親としての必要条件であっても十分条件ではない・・・という所でしょうか。

「親には、もっと大事でもっと欠かせない使命があるでしょう?」
「親子の関係はそんなに単純なものではないでしょう?」

そんな風に思いました。
しかし、この話ではその辺りは作品のノイズと判断したのか、あるいは気がつかないフリをしたのか、書かれません。その辺りがとても残念でした。

ただ

こうした大人絡みの不自然さを除けば後は楽しい部分の方が多いですかね。
ローズというキャラクターの作りは安易なようには思いましたが、それでも竜司との組み合わせ・・・というか、この二人の関係はそれ程悪くないですね。いわゆる”インプリンティング”的な何かで竜司に懐いてしまうローズですが、そこら辺は可愛らしくて楽しいです。
極端な話、子供達の間で話が完結している部分では普通に楽しめる作品じゃないかと思ったりしました。
でも大人が話に関わってくるところになるととたんに全員が思考停止状態になる傾向があって・・・うーんつまり、

  • 子供達を事件に巻き込むために周囲の大人達がいい加減に書かれすぎてる
  • その無駄な大人達と関わる時、子供達も判断能力や感受性が著しく落ちる

ところを除けば、まあ読める・・・そんな本ですね。

総合

という訳で星3つ。
確かにそこそこ読めますが、それ以上でもそれ以下でもないというのが本音でしょうか。こういっちゃなんですが、少なくともこの一巻は、

「何とか少年少女のキャラクターの魅力だけでついてきてもらって、続刊が出たらなんとか大人周辺の設定とか世界観周辺んの面倒くさいところをフォローするかな」

なんて計算が見て取れるような作品でしたね。少年少女が良く書けていると思えるだけに残念な作品だったというのが本音でしょうかね〜。
・・・でもまあよく考えたらこの手の本を読む大人の方が少ないわけだから、別にこういう話の作り方もありなのかな? 世の中には大人やったことがない人には分からない物語の理不尽さというのもあるもんだし・・・。少年少女向けとしては十分ありなのかな・・・ライトノベルだといい加減な大人というのは珍しくないですが、大人の読者の私としてはなんとも複雑な心境でした。