迷い猫オーバーラン!

ストーリー

都築巧の家でもある洋菓子店・ストレイキャッツはいつも通りに経営危機だった。
何しろ菓子職人で、巧みの姉である都築乙女が、異常なまでのお人好し精神を発揮してあっちで人助け、こっちで街助け、そっちで国助け・・・という塩梅に本職(菓子作り)を忘れて飛び回っている結果、ケーキを作る人間がいないからだった。しかしまあ・・・別段今更、という感じではあるのだった。
そしてその姉がまた一匹の迷い猫を拾ってきた。ただでさえ十五匹の迷い猫を保護している都築家にさらにもう一匹である。しかも今度の一匹はかなりの大型・・・なんと人間の少女を拾ってきてしまったのだった。
名前は霧谷希。美少女という要素をのぞいては素性が不明な少女だったが、太っ腹な乙女姉さんの元、なし崩し的にストレイキャッツにやっかいになることになるのだが・・・?
ブコメ作品の1巻ですが・・・?

うーむ

読了後の最初の印象としては「詰め込みすぎ」でしょうかね。
やりたいことを思いつくまま詰め込んだ結果、一体何の話なのかがぼやけてしまっている印象があります。話の中心にあるのが学園生活なのか、洋菓子店なのか、男子の友情なのか、幼なじみとの微妙な関係なのか、困ったところあるけど憎めない姉なのか、ロリロリ傲慢キャラの横暴なのか・・・はっきりしませんでしたねえ。
ラストのオチの付け方からすると、どう考えても悪目立ちし過ぎと思える美少女キャラがいたりするのも気になりますな。いや、確かに「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」かも知れませんけどね、あんまりやり過ぎると興ざめです。

でもまあ

その割には一人一人つづ見ていくとなかなか魅力的なキャラクターがいたりするんですけどね。
でも・・・単体で取り出すと「良かったなあ」と思えるのはヒロインとして登場する芹沢文乃位かな〜なんて思ったりしました。由緒正しいヒネクレ娘です。彼女は「ストレイキャッツ」のバイトなのですが・・・。

「そうそう、あいつら最近無駄に舌が肥えてきやがったんだ。残った飯とかかつおぶしを適当に混ぜ込んだもんじゃ見向きもしやがらん。おかげでエサ代も馬鹿にならなくなってきた」
「バカ。人間だっていつも同じメニューじゃ飽きるでしょうが。たまには塩抜きした煮干しのガラを、薄めの醤油で炊いてあげたりしてあげなさいよ。あの子たち、すごくがっついて——」
と言いかけたところで、文乃はコホンと咳払いをして、あらぬ方向へと視線を向かわせた。
「……そんなふうにしてあげればいいって、風の噂で聞いたことがあるわ」

こんなのとか。

「あーっ! もうっ! ぜんぜんっ、気になんてなってないんだからねっ!」

こんなのです。
まあ所謂素直じゃない娘ですが、流石ヒロインだけあって登場機会も多く、その分掘り下げも良くされていて中々に魅力的です。彼女と巧のやりとりはほのぼのとした気分にさせられますな。

ところで

この作品はドタバタと続いていく日常が描かれている作品なんですが、一体どんなところに着陸してくれるのかと思ったら・・・全く予想もつかないところに着陸してくれました。ただし、「予想を超えられた」というよりは「予想できないだけだった」という感じなんですね。
上でもちょっと書いてますが、こういう風に話を締める事を考えると、序盤から中盤にかけて無駄と思える部分が多すぎます。その無駄を減らして、少年少女の複雑な心をあちこちから掘り下げればばもっと面白い作品に出来たんじゃないかという気がします。
・・・まあ、色んな話を散りばめて読者の心の琴線の一本にでもかすれば・・・なんて感じで、保険をかけたくなる気持ちは分かりますけどね・・・。

総合

評価に困る星3つ。
いやあ、感想を書くのに困る作品でしたね〜ということでこの星の数な訳ですが。
面白い本っていうのは一度読み始めると読書を中断出来なくなるもんですが、この作品にはそういう磁力が欠けている気がしますね。でもそうかといって読むのが辛いとも言い難い・・・という感じです。読了感も悪いわけではありませんが、凄く良いとも言えず・・・うーむ。
続きが出たら・・・買うかなあ・・・うむう、お金に余裕があったら買うかも知れない、そんな感じですね。素材は悪くないと思うのに、妙にもったいないと思った一冊でした。

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