魔王城一限目

魔王城一限目 (ファミ通文庫)
魔王城一限目 (ファミ通文庫)朝未

エンターブレイン 2008-11-29
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おすすめ平均 star
star良ライトファンタジー

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ストーリー

かつて魔王と呼ばれるものが存在した世界。
魔王は20年前に滅ぼされたが、しかし、その残滓とも言える恐るべき存在がいたのだった。それは「魔人」と呼ばれる恐るべき子供たち――。通常の人間ではあり得ないほどの「反応石」を体内に持って生まれた彼らは、一般的な人間とは全く違う「災厄」として扱われていた。
生まれた瞬間に魔力を暴走させて村を一つ滅ぼした子供がいた。多すぎる魔力に体を変化させた子供がいた。望んだ瞬間に天候を変える子供がいた・・・。彼らは一般人から忌み嫌われ、石持て追われる存在だった。
そんな「魔人」の子供たちが集められた一種の隔離施設に送り込まれた軍人・エイゴ。彼は戦場で上官に逆らったため僻地の施設の管理官、いや魔人たちの「先生」として送り込まれたのだった。
普通の人間よりは魔人に対しての偏見を持っていなかったものの、やはり彼らの存在を恐ろしく感じていたエイゴだが、魔人と呼ばれる子供たちに実際に接してみて分かってくることもある。彼ら、彼女らは「運悪く力を持ってしまった」だけのほんの子供だったのだ・・・。
この話は、魔人と呼ばれた少年少女の教師をすることになった軍人の若者と、戦争に巻き込まれていく彼らの運命を描いた作品です。

序盤の

書き出しに魅力を感じて買った本作ですが・・・全体の印象としてはイマイチ、という所でしょうか。
主人公のエイゴのキャラクターや、魔人の少年少女の話は悪くはないと思うんですけど、魅力的かと言われるとちょっと困ります。じゃあ良くないのかと言われると、そういう訳でも無くて・・・評価に困ります。
可愛らしい少年少女たちはイラストの良さもあって良い感じなんですけど、そこに軍人の先生であるエイゴが合わさって発生する化学反応が想像以上に地味だったというか、そんな感じです。

いや

話の筋としては山が一つ形を変えてしまったりして派手だったりはするんですけど、全体的に無駄なエピソードが多いような気がしますね。魔人の子供たちは全部で6人なのですが、その6人に比較的等しくページを割いてしまったような所があって、全体として薄味になってしまった・・・そんな印象でしょうか。
あと、シリアスとキュートの配合加減がちょっとイマイチというか、そもそもその二つは混ぜて良いもんなのか? なんて思ったりもしました。魔人が暮らしているけれども牧歌的な雰囲気を持った学校と、その時別のところで繰り広げられている血みどろの領土戦争。うーん、相性が悪すぎるというか、見せ方を考えないとどっちも中途半端になるテーマじゃないでしょうか。
で、残念なから、この作品は見事に中途半端になっていると思います。

総合

星3つかなあ・・・。
最後の方の展開も微妙に納得がいかないというか・・・。主人公は「あること」の責任を感じてしまったりするんですが、戦場の理論に人道を中途半端に持ち込むことぐらい変な話もないと思ったりしたのでした。
こう言っては何ですが、この話には人の生き死にや殺し合いを受け止めるだけの精神的土台が足りません。戦場で誰かを助けることは誰かを害することで、そこに正義も悪も無い訳ですが、その辺りに関しての踏み込みが足りません。まるで死人だけ出る子供の戦争のようです。一種の悪い冗談みたいですね。
単なる魔人と人の間の交流を描いた作品にしたらもう少しめたんじゃないかなあ・・・なんて思った一作でした。

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