ANGEL+DIVE(3)

ANGEL+DIVE〈3〉LOVENDER (一迅社文庫)
ANGEL+DIVE〈3〉LOVENDER (一迅社文庫)十文字 青

一迅社 2008-12-20
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ストーリー

彼らは否応なく変わっていく——。
物静かな少年・日比野夏彦トワコの出会いから始まった運命の流転は、彼らと彼らの周りの人間の多くを巻き込んで、まるで静かな激流のように世界を変えつつあった。
夏彦の幼馴染みの相良希有(さがらきょう)も変わる、不思議な力を持った姉妹・真鳥依慧/織慧(まとりよりえ/おりえ)も変わる、そして醒めきっていた少年の工藤桜慈も変わる——。
幸せな未来に向かって? いいえ、悲劇と破滅へ向かってゆっくりと、そして確かに。
柔らかい絶望というものがあったらきっとこういう形をしているのではないか、そんな展開を迎える3巻です。

なんとなくですが

年若い時期というのは端から見ていると変化の激しい時期のわりには、自分自身では「自分は全然変わっていない」と妙に思い込んでいるような時期だったような気がしています。この先ずっと自分は今の自分のままなのだ——という奇妙な自信とも、諦めともつかないような思いを持って日々を過ごしていたような気がします。
そして、この小説の登場人物たちも前の話まではそんな風に感じていたのではないだろうか・・・なんて思いました。それはきっと「変わらない」という事がどれだけの困難を伴う物なのか知らないからこそのものなのかも知れませんが。

しかし

やはり変化は訪れます。
それは体の成長であったり、家族の変化であったり、想いの受け止め方であったり、知識の増加であったり・・・とにかく色々な方面からゆっくりと、しかし確実に変化していきます。そしてその狭間で少年少女達はひたすら翻弄されてしまうのです。
普通ならそれは喜ばしい変化であるべきなのでしょうが・・・「エンジェルダイヴ」あるいは「ディジェネレーター」という奇妙な要素が彼らを安穏の中においてくれません。ただの恋は恋に終わらず、ただの別れは別れに終わらない。それは少年少女が受け止めるには余りにも理不尽な運命だったでしょう。
穏やかに、余りにも穏やかに、歓迎すべきもののように、まるで無害な日常のふりをして残酷な運命は、の訪れをよそおってやって来るのです。

総合

星4つですかね・・・。
間違っても幸せな結末を迎える話でないところはちょっと辛いものがあります。
・・・が、読んでいる最中に感じるむせかえるほどの青春の情念とも言うべき青臭さは見事ですし、相変わらずのリアリティで物語を進めていく手腕は大したものだと思います。そして、この話をもってして1990年の物語は幕を引くことになるようです。
読者としては次の現実が一体どんなものなのか想像する他はないのですが・・・あらかじめ挟まれたちょっとした挿話が彼らの運命が優しいものでないことを示してしまっています。彼らは一体どうするのでしょうか。受け入れるのか、抗うのか、それすらもはっきりとは分かりませんが・・・とにかく待つより他なさそうです。
ちなみにタイトルの「LOVENDER」はラベンダーと読ませるつもりでしょうが、花のラベンダーの綴りは「LAVENDER」だったりします。この違い・・・実に意味深ですよね。

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