“文学少女”と恋する挿話集(1)

“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫)

“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫)

ストーリー

文芸部には、本を食べちゃうくらい愛している”文学少女”がいるという——。
今更ストーリーをまとめるまでもない程に有名な作品となった”文学少女”シリーズ初の短編集です。

なんなんですかね?

この本を読んでいると、本当にどうしようもないくらい嫉妬している自分に気がつくんですよね。妬ましいという気持ちとはこういう気持ちか! と嫌って程再確認させられてしまうんです。
その相手は遠子だったり、心葉だったり、流人だったり、麻貴だったりと色々と忙しいのですが・・・何故でしょうか。本当の所は分かりませんけど、彼らに訪れるはずの「約束された輝かしい未来」が憎くて憎くて仕方がないのかも知れません。
・・・彼らを直視するのが辛い。苦しんでいても希望を内包した彼らの魂が眩しい。しなやかで決して折れない柳のような精神が恨めしい。
ああ、生きるのが下手な人と話がしたい——。今、そんな風に思っています。

ま、

私のドロドロとした内面世界についてはともかく、読んでいてもう一つ感じるのは、

「この作者、どんだけ本と食いもんが好きなんだよ!?」

という驚愕に似た想いでしょうか。私はこの作者のように(あるいは”文学少女”のように?)貪り尽くすように本を読み漁りたいと思ったこともなければ、実際に読んだことも、もちろん書いたこともない訳ですし。同じように食べ物にも執着したこともないですね。
あ・・・もしかして私が感じている「嫉妬」は、作者・野村美月が作り出した物語から醸し出てくる、作者本人の一心不乱とも言えるその姿勢に対して感じているものなのかも知れません。

ところで

本書はWebで連載されていた「今日のおやつ」他、書き下ろしの短編で成り立っている訳ですが、「今日のおやつ」の方はいかにも「おやつ」っぽく甘く軽くさっくりとまとまっていますね。その辺りのかき分けは読んでいて楽しいところです。
で、問題なのは短編の方ですかね・・・どーも上で書いたような黒々とした気持ちになって仕方ありません。もーどの位黒々した気持ちになるかというと、遠子先輩を主人公にした二次小説(ダークなハードエログロ)とかを書いて、白雪のようなその精神を汚し尽くしたいと思うほどに黒々となります。
むむむ・・・私って多分、自分が子供の時に思ったであろう「なりたくない大人」に確実になっていますねえ・・・。ま、そんな自分がそれ程嫌いじゃないところがまた始末に負えない所なんでしょうけどね。
何を書きたかったのか分からなくなってきましたな。読書感想文というよりは一種の妄想に近い文章ですねコレ。こんな感じ方をする人間がそう多いとも思えないし・・・いや、意外に多数派だったりして・・・?

総合

星4つかな。
面白いつまらないで言えば面白いんでしょうけど、構成に若干の不満を感じたからなんですけどね。
どっしりとした物語はメインディッシュ、さらりとした物語はオードブル、甘い物語はデザートであるべきで・・・という見方をすると、どうも物語の並び順が良くないような気がしてなりません。なんとなく「オードブル」→「デザート」→「メインディッシュ」という並びで食事をしてしまったような感じ、とでも言えばいいでしょうかね。
うーん・・・”文学少女”がこの話を食べたら一体なんという表現で語ってくれるんでしょうかね。その辺り、作者の人がどう思っているのかちょっと興味が湧いたりした読了後でした。

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