“文学少女”と恋する挿話集(2)

“文学少女”と恋する挿話集 2 (ファミ通文庫)

“文学少女”と恋する挿話集 2 (ファミ通文庫)

ストーリー

文芸部には、本を食べちゃうくらい愛している”文学少女”がいるという————。
今更ストーリーをまとめるまでもない程に有名な作品となった”文学少女”シリーズ2冊目の短編集です。

今回の短編集は

”文学少女”シリーズのキャラクター達は出てきますが、それとは別に主役となるキャラクターが出て来ることになります。
反町亮太くんと森さんです。反町くんの方が本編に登場していたかどうかはちょっと忘れてしまいましたが、森さんのほうはあの琴吹ななせの親友という位置づけでちょっとだけ登場していた女の子ですね。この二人のおかしくってほのぼのしている恋物語が今回のメインです。
それにWeb上で連載されていた「”文学少女”の今日のおやつ」と「ななせの恋物語」が添えられています。反町くんと森さんの話がハンバーガーで言うところのバンズとミートパテだとしたら、「おやつ」と「恋物語」はさしずめピクルスやレタスやソースと言ったところでしょうか。これらを挟み込んで、1冊の本としてまとめられています。
・・・いや、実際見事な構成だと思いますよ。前回は構成にちょっと不満を感じたりしたんですが、今回はそれがありませんでしたね。リズム良くテンポ良く違和感なくサクサクと読めてしまいました。

しかしそれはそれとして

切ない・・・ですねえ・・・。
森さんがななせの親友である関係で、ななせの恋物語も間接的に描かれることになるのですが、それがいちいち切ないのです。反町くんと森さんの恋物語が恋愛の楽しくも嬉しい部分を描いているとしたら、ななせの恋は残念ながら悲しくも苦しい部分を描いているものだからです。
一つの幸せなカップルの恋の光があるせいで、より深く濃くなる悲しい恋の影、とでも言いましょうか。ななせは短編の中で見事な水着姿まで披露してくれるのですが、その姿も結局想い人には見せることが出来ません。いじらしさと不器用さがこれでもかっ! と噴き出ています。ななせの恋を間接的に森さんから知ることになる反町くんには、

「健気っつーか、重い。重すぎる」

なんて言われてしまっていますけどね。はっはっは、馬鹿だなあ! そこが琴吹ななせの良いところじゃないか! 美人でスタイルもいいのに何気に根暗で粘着質、いやいや、堪りませんね。

ところで

”文学少女”シリーズで何か足りないなあ・・・なんて思っていたところがあるんですが、その理由がやっと分かりました。
ズバリ、性欲ですね。リビドーです。エロスです。とにかく少年キャラクターに思春期特有のスズメバチのような性欲がありませんねえ・・・いわゆる本編主人公であるところの心葉くんは、側にいたらケツを蹴り上げたくなるような軟弱少年ですし、彼の友人であるところの芥川くんも性別がないんじゃないかというような振る舞いをします。今回主役級の活躍をする反町くんも何気に性的に悶々としている所はありませんしね(それでも個人的には男性キャラクターで一番好感度が高いですが)。
まあ正直その辺りについては女性作家が男性を書くという性差がもたらす限界かも知れません・・・。いや、分かりっこありませんもんねぇ、あの頃の少年のお猿さん具合って・・・。ぶっちゃけますと、高校生なんて毎日オナニーしてナンボですよ?
”文学少女”シリーズに感じる不満って、つまるところ少女漫画に出てくる男性キャラクターに感じる不満に通じるところがありますね。・・・うん、なんというか作者が少年に対して持っている「その幻想をぶち壊す」とか言いたくなりました。どんなに清純そうな少年だって、大抵は低俗なポルノグラフィーを使って、あるいは妄想逞しく好きな女の子を犯しながら、毎日鼻息荒く精液を垂れ流しているんですよ。

総合

好きですね、星5つ。
なんだよ〜上で散々ケチつけてるじゃんかよ〜!? とか思ったかも知れませんが、いやあ、私琴吹ななせファンなので仕方ないですね。情が深くって重いタイプの女性がどストライクなもんで・・・その恋情が重い? やだなあ、そこがいいんじゃないですか。愛されてばかりいると、愛されることの価値を忘れてしまいますよ〜?
まあ、もちろんそれだけが理由という訳でも無いですが、とにかく1冊通して、コメディとしてもシリアスとしても高い水準で楽しませてもらった一冊でしたから、満点ですね。森さんも可愛らしかったですしね。
あ、作者の人があとがきで、ななせがそのうち幸せになるような事を書いていますが、安易に他の男とくっつけるような事だけはして欲しくないですね。なんだか安っぽく思えるんで・・・。いや、ただのファンの嫉妬かな?

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