カンピオーネ!(4)英雄と王

カンピオーネ! 4 英雄と王 (カンピオーネ! シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

カンピオーネ! 4 英雄と王 (カンピオーネ! シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

ストーリー

神を殺したものは、その神の持つ力の簒奪者となるという。
神殺しという偉業を達成した者達はいずれにしても強大な力を手に入れ、人として上ることの出来る最大の力を持つに至る。人は彼らの事をカンピオーネと呼んだ。王、魔王、堕天使、混沌王、羅刹——あらゆる剛力を持つものを二つ名とした恐るべき人間の事である。
そして現代の世には6名のカンピオーネがいる。それぞれ東欧の老侯爵、中国南方の武侠王、妖しき洞窟の女王、新大陸の異形の英雄、大英帝国の漆黒の貴公子・・・そして欧州最強の剣士。
しかし、それに連なるもう一人のカンピオーネが東洋の島国に生まれたことを知るものは少ない。その人物の名は草薙護堂。先日までは当たり前の高校生だったのだが、魔術師・エリカ・ブランデッリと関わることで人ならぬカンピオーネとなった者だった。
その護堂だが、夏休みを機会にイタリアを訪れていた。なんというか一種の逃避行だったのだが、結局逃げたい相手にはしっかり追い付かれてしまい、針のむしろ状態で日々を過ごしていたところ・・・意外な介入者が現れる。
その介入者に導かれるようにして新たな”まつろわぬ神”の起こすトラブルに巻き込まれていく護堂。そしてそのトラブルの先には先日の事件で出会ったことのあるリリアナ・クラニチャールの姿があった。あのエリカ・ブランデッリと並び賞される魔女にして騎士である。
という感じで展開するシリーズ4巻目です。

いやー

やっぱり面白いですわ、このシリーズ。
イタリアを舞台に移してもそのリアリティが薄れることなく、かといって過剰にならない程度に描写して旅行きを楽しませてくれるのも嬉しいですし、キャラクターの魅力も相変わらずですし、散りばめられたアクションも刺激満点ですし、そしてこちらも相変わらず神々の蘊蓄が実に楽しいですね。
全体的にバランス良く整っているのでどれがイイ! とかって話はしづらい所がある本ですが、もし未読の人であれば単純にキャラクター小説として読んでも楽しめる出来になっています。その辺りは親切設計ですね。

ところで

今回新たに注目株として登場するリリアナですが・・・いや〜実にいいですね!
騎士であり魔女でもありエリカとは正反対で、巫女の万里谷祐理とはまた違った種類のお堅い性格の彼女ですが、心を決めたらどこまでも、という一心不乱さがあるのが魅力的です。こういう例えは良くないかも知れませんが・・・Fateのセイバーのような魅力がありますね。最初の方こそ、

「く、草薙護堂……て、体裁を取りつくろわずとも結構です。あなたは色好みとして名高い御方。ハ、ハレムのひとつやふたつを運営されていることは想定の範囲内です……。ええ、あなたはきっと浴槽をシャンパンで満たし、その傍らに愛人たちを並ばせて酒池肉林を謳歌しているにちがいないんだ! いずれ世界中から美姫を集めて、歴史上にも類を見ない壮大な愛の巣を造り上げるつもりで——く、なんて退廃的な!」

なんてコメントしています。でも、時間が過ぎて状況も変わると、そんな娘が・・・、

「お、お好きなように、してくださっていいんですよ? わ、わたしもあなたと早く、キ、キスしたいです……。だから、だからもっと——」

なんて言ってくれちゃったりするんですよ!? おおおおお〜。なんか激しく萌えますな!

今回は

3巻と違って過去の話では無いので、護堂もカンピオーネとしての力を全開にして”まつろわぬ神”と戦う事になります。
今回の相手は——ペルセウス。あの有名な戦士です。相手が相手なだけに苦戦を強いられる護堂ですが・・・上にもある通り、リリアナのサポートを得てイタリアで神との超絶戦闘に臨むことになります。
・・・おや? 一緒にいたはずのエリカや万里谷は戦いに協力してくれないのかい? という疑問を持つかも知れませんが、そこら辺は作者が実に上手いことやってくれています。正妻(?)と愛人(?)は今回ちょっと一回休み、ですね。
まあその結果としてリリアナの魅力が全開になるわけですけどね。

総合

安定の星4つ。いやあ、本当に安心して読んでいられるシリーズですね。
ラストシーン辺りでは恋の鞘当て(?)もさらに激化する事確実な感じになっていますし、百花繚乱です。「立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花」が花ごとに別々の姿の少女になってやって来ているような状況ですからね。頑張れ護堂。
そして、それにもましてやっぱり神話の来歴や解釈が読んでいて楽しいですし、丸暗記したらそれだけで神話や神々について十分な勉強になりそうなところがまた、なんというかオタク的魂を刺激してくれますよね。
次の話ももちろん楽しみにしたいですね。意外に安定したペースで出版されているのも地味にポイント高いですしね。

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