幻想譚グリモアリス4 罪と祈りとほほえみと

ストーリー

囚われの身となっていた教誨師グリモアリス)と呼ばれる冥界の使者であった少女・アコニットを、知略と謀略を駆使して奪還することに成功した少年・桃原誓護(ももはらせいご)は、もう一つの重大な懸案事項を解決するべく、動き出した。
それは彼が目の中に入れても痛くない程に溺愛している妹の祈祝(いのり)を救い出すことである。祈祝はアコニットに対して敵愾心を燃やし、危険な計画と力を持った鈴蘭の手の内に捕らわれていた。
魔力を退ける魔道書《アイギス》と知恵の力だけを頼りに単身敵地に乗り込む事になる誓護の前に立ちはだかる幾つもの障害。彼はそれを乗り越えて、祈祝を無事助け出すことが出来るのか。
異能ファンタジーの4巻です。冥府から、現世へ。舞台を再び移して戦いは続きます。

そろそろ

誰が誰だか分からなくなってきたというか。
巻頭にモノクロイラスト付きの登場人物紹介ページがあることにはあるんですが正直非常に手抜き感が目立ちまして、目立って登場するキャラクターが取り上げられていないのに、今回登場シーンがあまりないキャラクターが出ていたりと、なんだかやる気の無さというか大きく変える気の無さがはっきりと出ていまして、脱力感を覚えますね。カラーイラストの部分である程度はフォローされてますが・・・。
本作は巻数を重ねるごとに登場人物がどんどん増えているし、加えて複雑かつオリジナリティー溢れる構成になってきているんですから、それと平行して登場人物紹介ページも変更するべきだと思うし、出来れば既刊で明らかになっている人間と冥界の勢力図なんかも付けた方が良いんじゃないかと思うわけですが。
まあ何度も読み返す時間がある人にはそう言う部分は気にならないかも知れませんけど・・・。今回なんて久しぶりに登場するキャラクターがいたりするので、やっぱりもうちょっときちんとフォローして欲しいと思いましたね。

そういう

不満を除けば相変わらずのクオリティで楽しませてくれた感じはあります。
登場人物たちにペド野郎といわれたり、巻末のあらすじにすら「キモいロリコン野郎」とまでいわれる誓護ですが、今回もシリアスに頑張っています。頑張っているのに相変わらずアコニットには、

「そんなだから女にモテないし、かまってもらえないし、相手にもされないのよ、この非モテ。シスコン。ペド野郎」

なんて言われています。なんというか容赦ないというか、冥界の姫君なのに罵倒が実に現世的ですね。非モテって・・・。まあアコニットの罵倒は8割位がツンデレのツン部分なのでちゃんとデレがある分救われていますが。

ところで

今回は潜在的な敵として前巻から登場していた「力ある子供」たちについての過去と現在が丁寧に描かれることになります。
前巻までは本当に不気味な存在でしたが、今回その由来や動機や人物がしっかり書かれることになるので、具体的な敵としての輪郭がはっきりしてきます。しかし「力ある子供」たちの過去を知るにつれて、彼らにも感情移入出来てしまうところがなんとも言えない気分にしてくれますね。
しかしそれでも誓護にとっては大切な妹を誘拐し、それをもってして自分とその友人たちを脅かそうとする明らかな敵です。誓護はまさに今あるカードの全てを使い切るようにして彼らと戦う事になります。
その辺りの知恵比べ・・・というより誓護の謀略の全貌を読み進めながら知っていく作業が楽しいですね。

総合

星4つ・・・かな?
ストーリー、キャラクター、設定その他がバランス良くまとめられていて、読み進めるのがあまり苦痛にならないところを結構高く買っています。そうしたバランス感覚は天性のものかも知れませんね。
ま、あまり構えて読まなくても、アコニットのデレ加減を期待しつつ読んでいるだけでも結構楽しめてしまうと言うのがあります。でもキャラクターの魅力で楽しませるだけでも実際には難しいものですしね。やっぱりこの作者は「面白いライトノベル」を書く才能があるんでしょうね。
次の話もなんとなく楽しみにしつつ待ちたいと思います。

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