カンピオーネ!(5)剣の巫女

カンピオーネ! 5 剣の巫女 (カンピオーネ! シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

カンピオーネ! 5 剣の巫女 (カンピオーネ! シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

ストーリー

神を殺したものは、その神の持つ力の簒奪者となるという。
神殺しという偉業を達成した者達はいずれにしても強大な力を手に入れ、人として上ることの出来る最大の力を持つに至る。人は彼らの事をカンピオーネと呼んだ。王、魔王、堕天使、混沌王、羅刹——あらゆる剛力を持つものを二つ名とした恐るべき人間の事である。
そして現代の世には6名のカンピオーネがいる。それぞれ東欧の老侯爵、中国南方の武侠王、妖しき洞窟の女王、新大陸の異形の英雄、大英帝国の漆黒の貴公子・・・そして欧州最強の剣士。
しかし、それに連なるもう一人のカンピオーネが東洋の島国に生まれたことを知るものは少ない。その人物の名は草薙護堂。先日までは当たり前の高校生だったのだが、魔術師・エリカ・ブランデッリと関わることで人ならぬカンピオーネとなった者だった。
イタリアでの神を交えた大騒動を経て、なんとか激動の夏休みを乗りきった護堂だったが、日本に帰ったからといってカンピオーネである彼の周りが静かになることなどありえないのだった。エリカ・ブランデッリはもちろん、姫巫女として類い希なる能力を持つ万里谷祐理と、そうそうたる美少女が彼を取り囲んでいることに加え、さらに護堂の”騎士”となるべく欧州より訪れた魔女・リリアナ・クラニチャールが彼の一番近くに立つべく火花を散らすことになったからである。
そして、さらなる火種は向こうからやって来る——その災厄の名前は清秋院恵那。剣の巫女と呼ばれる能力者であり、万里谷と旧知の間柄の”美少女”である・・・という感じの5巻です。

( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

いやあ、今って1月ですか!? でもってこの本が出版されたのが昨年の11月ですか!? ついでに言えばその本を読了したのが昨日だってか!? 誰かな〜!? オジサンの時間を奪ったのは誰かな〜!? 怒らないから手を挙げてごらん〜!? ん〜!?
・・・というまあ冗談はこの位にしてですね、いや本当に時間が空きましたなおい。すいませんねおい。更新を待ち焦がれてた奇特な人はそう多くは無いと思いますが、とりあえずごめんなさいねおい。

で、さっそく

このシリーズについですが、まず読んでいてしみじみ思ったのが、ここ最近のライトノベルでここまで「主人公ハーレム状態」を作中で正当化することに成功した作品は無いんじゃないかな〜? というところです。コメディ作品ではハーレム状態もちょこちょこと見かけますが、基本はシリアスの異能バトル物では多分これ以外はないんじゃないかと思います。

「古来、英雄色を好むと申します。草薙護堂のまわりが美姫ばかりなのは、ある意味で彼の器量の証でもあるのです。あまり目くじらを立てるべきではないでしょう」
「ふうん。そういう考え方もあるのか」
「ええ。つまるところ、女がもとで身をあやまるような事態を避ければいいのです。そしてそれは、おそばに控えるわたしの役目。わたしが必ず兄上をお守り申し上げてみせます。静花さんもこころを広くお持ちください」
「お兄ちゃん、よかったね。リリアナさんが女遊びにも理解があって」

なんですがこの会話。なんというか人間関係が有耶無耶なままハーレム化することが珍しくないライトノベルですが、ここまできっぱりすっぱり二股三股を許容している作品は本当ないですよ。なんですか女遊びに理解のあるヒロインって。台詞では分かりやすいリリアナをピックアップしましたが、彼女だけでなくエリカや万里谷まで似たような塩梅ですからして・・・それどんな天国ですか。

それから

「ハーレムの正当化」という言葉を使っていますが、それは単純に女性陣に理解があるからではないところがこの本の魅力でもあります。主人公の草薙護堂がそれだけの力を持っている存在、として描かれているところがまた上手いのですね。
彼に傅こうとするのは何も女性陣だけではありません。性別を問わず、洋の東西を問わず、神を屠る者である彼を”王”として迎えたがる人・組織・団体には枚挙にいとまが無く、それらの勢力争いも熾烈を極めているという状態です。
まあその結果として今回の展開があるわけですが。つまりエリカ、リリアナといった国外の魔術師に一歩先を行かれてしまっている日本の組織が手を伸ばしてきたという事です。まあ万里谷が既にいると言えばいるんですが、貢ぎ物は多ければ多いほど良いと考える輩は珍しくないという事ですね。しかもその”貢ぎ物自身”が”王に所有される事”を望んでいるとなってはもう止めるものなど何もないわけで・・・。

「あ、でも、祐理と相談したんだ。Hとか出産とか、そういう仕事はまず祐理の方を優先してもらおうって。だから恵那は二軍みたいな感じでさ……。草薙さんもそれでいい? それとも、恵那の方が好みだったりする?」
「ままま、待て。待ってくれ。話の進み方がおかしい。おかしすぎる!」
「そんなことはないよ。むしろ、ここがいちばん重要なところかもしれないし。——じゃあ質問。どんな女の子が好みですか? おとなしい子と元気な子ならどっちがいい?」

結果として護堂はこんな新キャラに色々と追い立てられることになる訳です。エリカやリリアナも積極的ですが、恵那はそれとはまた違った積極性を発揮して、どちらかと言えば態度を決めかねて一歩後ろに引いたところにいた万里谷を焚きつけるような所があります。

「祐理。一度口にしちゃったら、取り返しのつかなくなることってあるからね」

「ここで降りるなら、止める気は全然ないよ。その代わり、二度とチャンスはあげない。恥ずかしがるだけなら可愛いけど、何も自分で決められないのはダメ。許さない。欲しいものがあったら、自分の手でつかみ取らなきゃ」

こういうヒロインもある意味珍しいですよね。清々しいというか・・・。まあ結果としてもう一つ魅力に欠けるところがあるんですが、それもまあこれからという感じでしょうかね。

総合

星4つは固い。
今回はこのシリーズで初めて「神さま関係のあの蘊蓄」が出てきません。が、それでも十分面白く仕上がっているので全く心配いりませんね。というか今までの既定路線を崩して物語を作ってきたことについては、逆に作者の意気込みみたいなものを感じるようでした。あるいはこう・・・人気が出て長期シリーズ化する見通しが立ったので、いよいよ本腰を入れてきたという事かも知れません。
あ、そう言えば皆さんもお楽しみのレロレロシーンはちゃんとありますよ! なんというかもう描写がアレ過ぎて、少年少女向け小説では入ってはいけないモノが入ってはいけないトコロに入ってしまっているような感じですが、そんなシーンに限って護堂が逞しくて格好良く描かれるものだから、私も護堂になら抱かれてもいいとか思いそうでした(ウソ)。
とにかくこれで主要なキャラクターの配置も終わったって所でしょうか。あとがきによると次は激闘が繰り広げられるような事も書いてありましたので、期待は増すばかりです。個人的には続きが出るのが楽しみな作品のうちの一つですので、このまま順調に話を作り続けて欲しいものです。

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