藍坂素敵な症候群

藍坂素敵な症候群 (電撃文庫)

藍坂素敵な症候群 (電撃文庫)

ストーリー

千歳井高校に転校してきた那霧浩介(なぎりこうすけ)は何にでも熱中するがすぐに冷めてしまうという傾向のある高校生で、その頃は「近隣の自分専用便利マップ」を作るのに熱中していた(どうせすぐに飽きるのだが)。
そんな地図作りの最中、彼は奇妙な少女と偶然に遭遇する事になり、突然に彼女のスカートの中に頭を突っ込むことになり、ある光景を目撃して唖然とし、必然的に彼女に殴られて失神した。彼が目撃したもの。それは――少女と一緒に降ってきた首がパックリと裂けた男の死体。
しかし気絶状態から回復した彼が見たものはただの昏倒した男だった。実際頭をフラフラと振って呻いていたりするが死んだりはしていない。浩介は自分が何か見間違えたんだろうと思い、その時出会った奇妙な少女の事と一緒に忘れることにしたのだが・・・学校に通い始めてみるとその出来事は彼のことを追いかけてきていた。あの少女はクラスメイトだったのだ。

「話があるわ。始業式が終わったら顔を貸しなさい」

出会っていた少女の名前は藍坂素敵(あいさかすてき)。彼女が連れて行ったのは「医術部」という奇妙な名前の付いた部活だった・・・という感じで始まる学園異能物語の1巻です。

グロ水瀬

ですね。私は好きですが。
「C3」からこの作者のシリーズを読み始めた場合にはピンと来ないかも知れませんが、その一つ前のシリーズである「ぼくと魔女式アポカリプス」を読んだことのある人にはなじみ深い感じの作風だと思います。なんというか頭のアブナイ人が高笑いしながら出てきて、血の凍るような事を平然と起こして、それに主人公達が巻き込まれる――という展開です。
まあ「魔女式」の場合は自分で自分の指を切り飛ばしたりしていたわけですが、作者の人も流石にそれはちょっとどうかなあと思ったのか今回はそこまで痛くありません・・・が、表紙の印象ほどにはのほほんとしている訳でもないですね。
ですが救いのないような話かというとそうでもなくて、基本的に危険なものと戦うヒロインとそれに巻き込まれる主人公という分かりやすくもオチの付けやすい構造の話となっています。

で、敵ですが

これが「耽溺症候群」と呼ばれる病気であって、「罹患するとその対象に異常なまでに執着し、全ての倫理観を放り投げてでも対象に耽溺する」という奇妙な病気です。しかもこの「耽溺症候群」には特定の対象というのが定まっておらず、人によって執着を見せる対象が異なるという・・・なんとも奇妙な設定ですね。で、藍坂素敵はその病と戦う少女という訳です。
まあ病気というちょっと陰鬱なネタをテーマにした話ですが、序盤はお笑いムードで話が進むのでいきなり精神的ブラクラを踏むような事にはなりません。・・・が、ページをめくる事に徐々にアレな展開になっていきまして、気がついたらそれなりにグロっぽい感じです。ですが上でも書いた通り今作のグロ指数はhobo_king基準で「震度2〜3」程度です。グロはグロですが中学生以上の読者なら問題無いという感じでしょうかね。

今作の場合

どっちかと言えばグロ耐性があるとか無いとかより、ヒロインである藍坂素敵を気に入れるかどうかの方がポイントになりそうですね。
「耽溺症候群」のお陰で奇人変人の数では困らない本作ですが、主役のヒロインの素敵だけがまあ・・・キャラ立ちとしては弱い部類に入ります。それだけ周りに変人が多いという事ですが。物語中盤に彼女が何故「耽溺症候群」と戦うのか、何故彼女が「耽溺症候群」と戦う事が出来るのか、と言ったところが明かされるまではただのちょっと変な少女です。
まあそれまでは他の変人たちでお茶を濁してくださいというか・・・そんな感じかも知れませんね。幸い彼女の身近には宵闇ヶ原陰子(よいやみがはらかげるこ)や黒崎空(くろさきくう)といった名前だけでももうちょっと変な少女が控えていたりするので、まあ基本的に飽きません。

総合

うーん、判断に困る星3つ。
決してつまらないわけではないのですが、さりとて面白いかと言われるとちょっと困る感じですね。今後面白くなっていく余地は大いに残されていると思いましたのでこの星ですが、もうちょっと細かい部分に説得力があると良かったかなあと思ったりしました。
なんだか違和感があるというか・・・どこがしっくりこないのか上手く表現できないのですが、話の展開が腑に落ちなかったというのが正直な感想です。うーん、ですがこの作者の作風は好きですので一応次に期待してみましょうか。
イラストは東条さかな氏ですね。カラーイラストはなかなかに美麗です。白黒イラストはちょっと漫画チックではありますが、及第点と言ったところでしょうかね。

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