幻想譚グリモアリス5 天の座に咲け叛逆者
幻想譚グリモアリスV 天の座に咲け叛逆者 (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 海冬レイジ,松竜
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2010/01/20
- メディア: 文庫
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ストーリー
目に入れても痛くない程に可愛がっている妹の祈祝(いのり)を知謀と戦いの末に取り戻した桃原誓護は、つかの間の平穏をいまだ冥府で過ごしていた。結果として冥府の住人にまでシスコン野郎と言われまくっていたが。
しかし、そんな平和な時間は長くは続かない。霊廟に対して叛旗を翻したアコニット率いるアネモネ王家に対して使者が遣わされたからだった。
そしてその使者としてアコニットたちの治める十三星樹にやって来たのは、かつてアコニットが全幅の信頼を寄せていた十三星樹の元太守・ドラセナ。彼女に対する気持ちの整理が付けられないままのアコニットに対してドラセナは、霊廟側からの講和条件を口にする。
「生涯、お独りで、煉獄につながれていただきたく」
アコニット一人の全てと引き替えに、十三星樹の民全ての反逆の罪を許そうというものだった。しかしそれは――事実上の宣戦布告であった。つまり、遂に冥府の行く末を戦いにて決定する時が来たということだった。
通算で8巻目になるんですかね。物語も最終局面です。
面白いんですが
絶対何かどこかで間違ってると思うんだよねこの話。
間違っているというか・・・この話は根っこにミステリを仕込んであるんだろうなあと。ダシがミステリで取られているというか、そんな感じ。でも出来上がってくる料理そのものは何故かフレンチとかなので、口に含んだとき「???」という奇妙な違和感が出てくるんじゃないかと思うんです。
まあ元はといえば今は無き(まだあるか?)富士見ミステリー文庫でミステリとして始まったシリーズであるから、当たり前と言えば当たり前なのかも知れませんけどね。途中での方向転換はやっぱ無理があったんかなー。
うん、純粋ファンタジー作品としてはキャラ立ちが弱すぎるんですよね。登場人物は多いけれども没個性にならずに目立っているのって五本の指で足りそうな気がします。誓護、アコニット、軋軋、アザレア、オドラ・・・そんなもんでしょうか。ミステリとしては正しいのかも知れませんが、今やただの弱点になっているような気がします。
んでもって
その弱点を助長しているのが相変わらずまともに更新される気配が見えない白黒ページの登場人物紹介欄ね!
登場人物は増える一方なのに6人ばかしダラダラ〜っと載せてハイおしまい。とにかく酷い。アコニットはいつまでたっても「教誨師」と紹介されているし(間違いでは無いけど今やアネモネ王家の王としての振る舞いがほとんど)、この巻には登場すらしない人物が堂々と場所を取ってたりするし、伊吹伶人はクリソピルムというのも書かれないし、本当に誰だよここ作ってるの。やる気が無いにも程がある。
・・・例えば短編集的なものが既に出ていて、そこで他のキャラクターの個性が補完されているならまだいいですけど、それも無いし・・・。見せ方に失敗しているせいで物語の面白さというか没入のしやすさというか、そういったものをもの凄く削いでいると思うんですけどね。私だけですかねそんな風に思うのは。
そういったところをちゃんとしていれば、もっとずっと人気が出ていたんじゃないかと思えるだけに残念です。
話の方は
まあアコニットを筆頭に、誓護を軍師として戦争を始めるというのが今回のお話しですね。
だからといって大軍でワーワーという感じでは無くて少数精鋭による一点突破という形を取るわけですが、あっちこっちで敵と味方の大物が潰し合いの大激闘という感じです。宿命の対決があちらこちらで同時進行と言えば分かりやすいですかね。それぞれの戦いはどれもなかなかに個性的で読んでいて楽しいですね。
・・・読んでいて思うんですが、設定が非常に良く作り込まれている作品なんですよね・・・感覚的には全20巻位のシリーズとして書いていけるくらいには。でもそれを上手く表現できていないというか、あっちの秘密もこっち謎も少しずつ小出しにしている感じなので、何が判明していて何が不明なのかが分かりにくくなってます。
ですので、今までの既刊本を再読してからこの新作に臨んだ方が楽しめるのは間違いないと思います。
総合
星3つだバカ。
単純に面白さで言ったら星4つでいいんですけど、余りの見せ方の下手さ加減にムカついたので星が一つ減ってます。あとがきのページなんか少なくしてもいいから読者に対してのフォローをしっかりしろよ! 「この本を作ったのは誰だぁっ!」(書いたのは誰だ、に非ず)と言いたくなるような出来でした。
次で最終巻となるとのことですが、ちゃんと使用されないまま埋もれることになりそうな設定・登場人物が大量に出そうな予感がひしひしとします。というか未公開の設定とか全部織り込んだら恐らくメチャクチャになるのが目に見えてるというか、実際どうするんだろう・・・?
ところで、私が言ってどうなるもんでもないですが、本当に他の出版社に移籍した方が良いですよ作者の人。とにかく扱いが酷いと思います。富士見ミステリーからファンタジアへ無理矢理変わって、挙げ句の果てにこの適当な扱い・・・ちょっと聞いたところによるとMF文庫で新シリーズを始めるとのことですが、もう富士見ファンタジアなんてすっぱり見捨ててMF文庫とか電撃文庫あたりに完全に身柄を移しちまえ。その方が絶対幸せになれると思う。・・・そう思いません?
絵師は松竜氏ですが、まあ何気に良い仕事しているんじゃないかと思います。ちょっともったりとした重たさと古さを感じる絵柄ですが、まあ丁寧ですよね。個人的にはカラーより白黒イラストの方が気に入っています。