絶望同盟

絶望同盟 (一迅社文庫)

絶望同盟 (一迅社文庫)

ストーリー

第九高等学校には昼休みになると来客用の下駄箱前に集まってくる小さな集団があった。
しかし彼らは特別親しいから集まっているという訳ではない。一人一人が校内での居場所を探した結果、フラフラと漂着したのがそこだったというだけ。彼らは大なり小なり集団からはみ出した少年少女だった。
当真ネンジ、蓮井カオル、木羽ミキオ、雫石サナ。彼らはそれぞれの理由で集団から孤立し、それぞれの理由で「絶望」していた。この話はそんな4人の主観で語られる、青春ストーリーである。

この本って

前半と後半で綺麗に分かれるな〜というのが読了後の感想だったりするわけですが。
前半はネンジとカオル、後半はミキオとサナという具合ですか。一言で言うと「絶望に名前がある/ない」で区別できるという事です。絶望する理由がはっきりしてるかしていないか、という区別ですね。前者は「ロリコン」と「性別」という一言で言語化可能な「敵」がいますが、後者はそれがいません。実体のない絶望とでも言うか・・・「絶望している」という症状は同じでも病名が付かない、そんな感じです。
なので、読んでいると二つの別の話を読んでいるような気分になりますね。前半はライトノベル的で、後半は純文学的な印象を受けます。あくまで印象なので証拠はないですけど。

んで

肝心の面白いかどうかって事なんですけど・・・正直微妙というのが本音です。
ライトノベルとして見た場合は後半部が爽快感や楽しさに欠け過ぎるような気がするし、一般文芸作品として見た場合には前半部が表層的過ぎるような気がするんですよね。まあそれは必ずしもつまらないという事を意味しないんですが・・・。
よく分からないけれども個人的な印象を言えば、作者の人はライトノベルというある意味で「ぬるま湯」な環境ででグダグダするのはもう止めた方がいいのかも知れないって事ですかね。自分向けの市場が既に存在する世界で、中途半端に文学するのはそろそろ潮時だと思うのです。
読んでいて感じたのがとにかくそれですね。「あなたはいつまでもここにいてはいけない」という気持ちです。

という訳で

ファンの人以外にはこの作品はお薦めしないですね。
表紙や口絵イラストは「ぷりるん」以来続くキャッチーな感じですが、内容は青春のドロドロと性的なカサカサが充ち満ちた作品なので、この作者特有の性的に不安定な精神こそが大好物という人や、高度に中二病を発症している自覚的な強者以外は手を出さない方が幸せなんじゃないかと思います。
うーん、上手く言えませんが、読まなくても問題ない・・・いや、読まない方がラッキー・・・いや・・・上手い表現が見あたりませんが、無理にばくだん岩で経験値を稼がなくてもいいというか・・・そんな感じ?

総合

うーん評価不能ライトノベルとして敢えて星をつけるなら星3つ位かな。
やっぱりこういう作品はライトノベルに紛れ込ませるような作品ではないのかなあと思ったりします。一冊なら「つい書いちゃった」「何があるか分からないからライトノベルは面白い」という事で仕方がないとも思いますが(例えば桜庭一樹の「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」みたいに)、「ぷりるん」「ヴァンパイアノイズム」「絶望同盟」と続けて3冊ともなるとちょっといただけない・・・かな。
絵師はま@や氏です。ちょっと見てみると分かりますが、なかなかに良い仕事しています。イメージが広がる仕事ぶりというか。本編に書かれていないところを作者と相談の上描いているというか、そういう丁寧な仕事ぶりを感じますね。まあ116〜117ページの見開きの一枚だけはどうしてもマヌケですけど。

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