ラ・のべつまくなし ブンガクくんと腐思議の国

ラ・のべつまくなし (ガガガ文庫)

ラ・のべつまくなし (ガガガ文庫)

ストーリー

ただひたすらに文学を愛してしまっている若者がいた。特に純文学と言われる分野への傾倒がもの凄い小説家の若者がいた。彼の名は矢文学(やぶみまなぶ)。通称ブンガク。彼はとにかく純文学馬鹿であり、暇さえあれば小説を書いているという位に文学が好きだったのだ。しかし、まあ、売れなかったのだが。
それでもへこたれずひたすらに小説を書き続けていたブンガクだったが、担当編集から最後のダメ出しをもらってしまう。それは、もう自分の書いた小説は出版される見込みが全くなくなった、というものだった。何故なら出版社が純文学の出版から撤退することが決まったからだという。
しかしその事実に呆然とする暇もないままに、ブンガクは思いもしない言葉を編集から投げかけられる。

「ねえ、キミさ。ライトノベル、書いてみる気ない?」

全く畑違いとも言える分野への誘いではあったが、小説が書けなくなるよりはマシということで飛び込んだライトノベルの世界・・・だったのだが、世の中何がどう転ぶか分からない。ブンガクの書いたライトノベルはあっという間に評判になり、メディアミックスも決まって恐ろしいくらいに順調に走り出してしまったのだった。
そんな現状を上手く消化できていないブンガクだったが、ある時一人の少女に一目惚れしてしまう・・・。しかもその女の子は自分の書いたライトノベルのファンだというのだ!
とまあそんな感じで始まる創作ライトノベルの1巻ですね。

最近

2巻が出たのを切っ掛けにしてこの1巻を手に取ったんですが・・・序盤から中盤にかけてはノりきれなかったですねぇ・・・。
決してつまらないという訳でも無いんですが、取り立てて魅力も感じないというか、そんな感じでした。とにかく主人公のブンガクこと矢文学に魅力を感じなかったんですよね・・・。キャラクター設定としてはなかなかユニークで良いと思ったんですが、もう一つリアリティが無いというか、そんな気分でした。
よく分かりませんけども、ブンガクなのに文学青年っぽさが足りないというか、いや最初からライトノベル的なキャラだろというか・・・まあ作品の中でも純文学じゃなくてライトノベルで成功しているわけですから、あながち間違った指摘では無いとは思うんですが、とにかく説得力に欠けましたね。
ライトとついてもノベルなんだから、突拍子もない設定でもそれなりの説得力は必要なのよ? と思ったとか思わなかったとか。

中盤以降も

そんな気分を引きずったまま読み続けることになりましたね。
ブンガクの一目惚れした相手は椎名明日葉という女の子なんですが、このキャラクターがまあ・・・いわゆる「腐」の付く女子でして・・・。これがまた私が話に入りこみにくかった理由の一つですね。
いや当方男ですからして、根本的に腐のつく女子の生態というか思考回路を理解できない訳ですよ。そんな女の子が中盤を牽引する感じで話が進んでいくもので、どうしても「よく分からん……」という気持ちが出てきちゃうんですよね。まあ純文学馬鹿と腐女子という凸凹の組み合わせはそれなりにユーモラスなので、読むのに苦痛は無かったですが。
それに、時々思い出したように作り手側の創作に対する想いなんかが書かれたりするのが、なんというかムズムズするような気持ちになりましたね。シリアスなのかコメディなのかはっきりしてくれよとでも言いたくなるというか・・・そんな気分でした。

ですが

終盤付近で物語が加速してくるといきなり面白くなります。
なんというか・・・キャラクターが自分の手元まで近づいてきてくれたというか、私という読み手にも分かる所まで降りてきてくれたというか、そんな気分でした。作家だろうと一般人だろうとオタクだろうと腐女子だろうと、恋に落ちたら皆同じ、ということなんでしょうね。主人公のブンガクが恋に没頭し始めてやっと面白く感じるようになりました。
最終的には創作活動とかも交えてすったもんだをした挙げ句、彼女の気持ちの在処なんかもはっきりすることになって一件落着という事になるわけですが・・・いやあ、最後のアレは分からなかったですね。そんなのってアリなのか!? という気分でしたが・・・腐女子の人なら容易に想像可能なオチだったんですかね? どうなんでしょう?

総合

星・・・3つかな。
後半は良かったですが中盤までは微妙だったのでこの星になっています。全体的な話の作りは良くできていると思うんですけれども、キャラクターに感情移入出来なかったせいで終盤近くまで楽しめなかったというのがやっぱり大きかったですね。
周囲を固めるキャラクターもまあ悪くないし、今話題のWebサービスなんかを話に絡めてくるところも悪くはないんですが、もう一つインパクトに欠けた感じはありますね。うーん・・・ある種の生々しさはあるのかも知れませんが(といってもこの話で取り上げられていることは私の守備範囲外の事だらけなのでよく分かりませんが)、ちょっと見せ方が微妙だったかな? という感じですかね。
でも、同人活動をやっていたり、腐女子だったりする人だったら楽しんで読めるのかも・・・なんて思いました。
絵師は裕龍ながれ氏です。目を引くカラーイラストを描く人ですね。本文中の白黒イラストも決して悪くはないですが、やはり表紙と口絵が良い感じですね。この本に限った話では無いんですが、ガガガ文庫は全体的にイラストが丁寧で好感が持てますね。

感想リンク

今日もだらだら、読書日記。」のうららさんが女性の立場からヒロインの明日葉について「共感できる部分もおおい」と書いてますね。自然で良く書けているという事なんでしょう。そう考えると、ちょっとアレな女性の人に向いている作品なのは間違いなさそうですね。