ハイスクールD×D 旧校舎のディアボロス
ハイスクールD×D1 旧校舎のディアボロス (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 石踏一榮,みやま零
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2008/09/20
- メディア: 文庫
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ストーリー
若き性少年・兵藤一誠はモテなかった。女性の方が多い学校に苦労して入学したにもかかわらず、モテる気配が全くなかった。
彼に残された身の振り方は「モテない者同士で集まってもの凄くエロい方向に突っ走る」という逃避行動だけであった。悪友と集まって入手したエロDVDの鑑賞会を開き、満たされぬ現実に滂沱の涙を流しながら、不遇な青春を呪っていたりした。
しかしある時一誠にとんでもない転機が訪れる。可愛らしい女の子に「付き合ってください」と言われたのだ! 有頂天になった一誠はデートを計画し、張り切って彼女をエスコートした。しかし、何故か彼は告白してきた女の子に殺されることになってしまった。
突然の展開に付いていけず、なすすべもなく致命の一撃を受けてしまう一誠。腹に大穴を開けて死を待つばかりとなった一誠は幻覚のような紅い髪をみて意識を失った。そして彼は「人間をやめる」事になる・・・。
「あなたは悪魔として転生したの」
再び大けがを負うことになった一誠が目を覚ましたとき、何故かとなりに全裸で寝ていた少女は大した事でもないように一誠にそう告げた。彼女はリアス・グレモリーという名の学校の先輩であり、しかも自分を甦らせた悪魔の公爵だというのだ・・・。
なし崩し的に下っ端悪魔となってしまった一誠のちょっと捻れた悪魔生活と戦いを描くライトノベルの1巻です。本屋で見かけたとき「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のリプレイ集か・・・と思って華麗にスルーしていたんですが、どうやら違うようで。
これは匂う!
なんというの? ライトノベルを良く知らない人が印象だけで「ライトノベルってこんな感じじゃねーの?」というテンプレートを馬鹿にしつつ作り、それを間違って実体化させちゃったらこの話になった、という感じの匂いがプンプンします。
決してつまらないという訳でも無いんですが、余りにも露骨で陳腐な設定や展開にちょっと苦笑いが浮かぶ感じと言えば伝わりますかね? 悪魔という設定はもちろんですが、それに堕天使や天使、さらには神器(セイクリッド・ギア)なんて設定までもが出てくるという事になると、なんというかお腹いっぱいです。
しかも主人公の一人語りで話が進むとなれば、もうザ・ライトノベルと言ってしまっていいかも知れませんね。
何が悪い!
スケベで何が悪い!
俺の人生だ! 誰にも文句は言わせない! 俺はこの学校でハーレムを作る!
と、これが俺の入学時に掲げていた目標だ。
いまでは空しい。これだけ女子がいれば彼女の二、三人楽にできるだろうと思った俺が甘かった。
こんな感じ。
なんつーか、正直言って良く鍛えられたライトノベル読者でも、いや鍛えられていれば鍛えられているほど読むのが辛いかも知れないですね・・・。この作品の「どっかで見たことある」感じはかなりのものです。俺尺度で80%位です。
そうは言っても
つまらなくはない・・・と言うのにはそれなりに理由があって、設定やネーミングセンスなどが陳腐なかわりに、それなりにユニークなライトノベル的悪魔生活をこの作品が書くことに成功していると思ったからなんですが。
下っ端悪魔となった一誠は駆け出しの飛び込み営業をやっている営業マンみたいな活動を通じて、悪魔としての生活をしていくことになるのです。ついでに言えば彼を悪魔にしたリアスは「優しくて有能な上司」という感じで一誠に接する事になります。登場シーンが登場シーンだったので(つまり全裸で初登場)、ありがちなお色気展開まっしぐらかと思ったらそうでもなかった、というのは意外と言えば意外でしたね。
ちなみに他にも優しい先輩がいたりします。悪魔の仕事の先輩な訳ですが・・・イケメンやら美少女やらを取りそろえてなかなかに充実したラインナップです。それぞれのキャラ立ちも意外に悪くありません。
・・・なんというかこの本くらい良いところと悪いところが露骨に区別できる話も珍しいような気がしますね。
んで
中盤以降になると敵なんかも出てくるわけですが、これは良い感じです。
ビックリするくらいに胸くそが悪くなるキャラクターを用意してくれているんです。中盤付近に到るまで基本的にコメディーっぽい展開をするので、このギャップは良かったですね。分かっちゃいるけどついつい熱くなりました。
後はそうですね、熱血しちゃった主人公と敵のバトル展開をライトノベル的に楽しめばいいんじゃないかと思います。ぶっちゃけ驚きの展開とかは一切無いと言ってしまっていいような気がしますが、逆に言えばそれだけ安心して読めるライトノベルとして出来上がっているという事でもあります。
中盤まで読めたのなら、もうこの本が用意している「ライトノベルテンプレート」にも十分慣れていると思いますので、最後まで読み抜けてしまいまししょう。たまには完全にレールの上を外れない話というのも悪くないかも知れませんよ?
総合
星は3つですね。
どうしてここまで酷くなるまで放っておいたんだ・・・とか言いたくなります。が、開腹手術をして患部を実際に見てみたら良性の腫瘍だった、とかそんな感じの本です。
でも富士見ファンタジア文庫の凋落の理由がこの本から何となく垣間見えるような気がするのは・・・気のせいですかね? そりゃドラゴンマガジンも隔月化しちゃうよ・・・とか思いました。面白いつまらないは別として、完全に時代についていけてない感じがする作品です。ある意味で「生きた化石」として貴重な存在かも知れませんね・・・。
ああ、あと話とは全然関係なく気になったのが、表紙のデザインセンスの無さ、ですかね。デザインセンスもなにもあったもんではない私が言っても説得力皆無ですが、個人的にはこの表紙をデザインした人、色彩感覚が狂っていると思います。派手な色づかいのイラストに黄色の文字と朱色にライムグリーンの縁取り文字って・・・。
みやま零氏のイラストってどちらかと言えばクドい系なんだから、もうちょっとなんとかした方が良かったんじゃないかって思いました。