10歳の保健体育

10歳の保健体育 (一迅社文庫 た 1-2)

10歳の保健体育 (一迅社文庫 た 1-2)

ストーリー

姫武静姫。高校一年生。
長くのばした髪に美しく整った顔立ちの魅力を存分に発揮して、颯爽と高校に通学し始めたところ、最初の一週間目にしてようやく男子生徒である事が周囲に発覚。いきなり停学を喰うという伝説的な所行を行った強者である。
彼がなんでそんなキテレツな事をぶちかましたかというと「入学後に行われる身体測定で女生徒の体を堂々と覗きたかった」という至極野郎臭い理由からだったりする。イケメンであるが容赦の無い変態、はたまた欲望に忠実な英雄として学校内で注目を集める存在であるそんな彼の所に、ある日突然一人の少女が訪れたのだった。

「こんにちは。今日からここの子供になります。はみる、と言います」

十歳の少女は健気にもそういって姫武家の扉を叩いたのだった。聞くところによると死んだ母親がここの家のお父さんがはみるのお父さんだから頼りなさい、と言い残したらしい。性的な意味でかなりアブナイ静姫の所に可憐な十歳の少女となれば、虎口に新兵を放り込むような損耗率100%に達しそうな状況であったが、一応人として最低限の倫理観は備えもっていたらしい静姫は、妹としてはみるを家に受け入れたのだった。
幼馴染みで縦ロールお嬢様の似鳥翠蓮や、いとこのお色気お姉さんである姫武綾音、可愛いけど何故か人一倍マッチョな少女の荘川乙海など、賑やかな面々に囲まれながら、静姫とはみるを中心にした日常が始まったのだった・・・という感じの作品です。

話題になってたかしらん?

まあタイトルからして明らかに特定の嗜好を持った人を狙い撃ちに来ている感じの一冊だったので、とりあえず読んでみたんですが・・・うーん、タイトルは釣りですね。まあそういった側面が作中で無いわけでは無いですが、多分本編の内容を正しく表現したタイトルは「10歳の社会学習」とかそんな感じです。そもそもはみるはヒロインと言い切るには微妙な位置づけですし・・・。
キャラクターの役所を簡単に言えば、主人公である静姫がボケ倒して、それを突っこむのが翠蓮やはみるといったキャラクターになっている感じです。基本的に主人公の静姫はかなり頭がおかしいのですが、突っ込み役の翠蓮や乙海(はみるは唯一常識人:ただし突っこみ)もかなりの案配でキちゃっているキャラクターとして設定されているので、ぼんやりと読んでいると頭のおかしい人しか出てこないというライトノベルに仕上がっています。

「静姫ちゃん。カレー味のうんこと、うんこ味のカレーとどっちが好きですの?」
「うんこ味のうんこ」
「このスカトロ好きさんめ〜」
しかし、なんでカレー食うといつもこのやりとりをしたがるんだろな、こいつ?
「はみるちゃんは、カレー味のうんこと、うんこ味のカレーとどっちが……」
カレーを食いづらそうにしているはみるちゃんに、翠蓮が嬉々として尋ねる。
「うっさいわっ、メシ食ってるときに、うんこの話すんな! 氏賀○太か風船クラブみたいな目にあわせるぞ!」

基本的にこんなノリです。
変態しかいないような話の挙げ句、授業中に主人公の方からバイブ音がすると先生方から「姫武、授業中くらいアナルバイブの電源を切っておけ」というような冷静な指摘が入るようなキャラクターを主人公に据えてしまった作品です。主人公達の外見が良くなかったら恐らく大変な事になっているであろう一冊ですが、概ね平和な話なのでまああんまり心配いりません。

ただし

上で書いたようなバカでふざけた内容しかない話なので、それに別段魅力を感じないという事であればもうどうでもいいような作品でもあります。お色気ネタは多めですが、どっちかというと下品な展開をするので、作中に「尿道」やら「女陰」やら「ちんこ」などといった単語が行き交っています。間違っても高校生活を送る上で参考にしてはいけない本だという事ですね。
そうそう、ナチュラルに下品なノリを作中に展開するにあたって一つだけ珍しいところがあると言えば、静姫と翠蓮が付き合っていたという過去がある関係で多分非処女に非童貞だという事でしょうか。まあ一通りかなりの所までヤッっちゃっている感じです。ライトノベルで主人公とヒロイン(?)が姦通済みという設定には久しぶりに遭遇しましたね。
しかもどうやら翠蓮の方は未練たらたらという感じで、さらには従姉妹の綾音も静姫を狙っており、後輩の乙海もどうやら気がある様子・・・といった感じで「やっぱり世の中顔か」という認識を一段と強くしてくれる作品になっています。フィクションなのでどうでもいいっちゃあいいんですけどね。でも、どうせならイケメンに生まれたかったよね?

総合

星3つかな。
バカ臭くてアホらしくてどうでもいい話で構成された一冊ですが、それなりにテンポが良かったり下らないなりに読めたりするので、まあこんなもんかなという感じですかね。でも本当に下らない一冊ですよ。
いや、これはバカにしているとかいうことではなくて、バカにはしていませんが作品としては徹頭徹尾下らなくて、ライトノベルから骨とか芯を抜いたらこんなクラゲのような本になってしまったという、ある意味で「読んでも読まなくてもどっちでもよくて、例え読んだとしても俺の人生には何の影響も与えない一冊」だという事です。ライトノベルらしいといえばらしいですが、それにしてもこれはグニャグニャですね。ま、お金に余裕があるようでしたらどうですかね?
イラストは高見明男氏です。カラー、白黒イラスト共になかなか堅実な仕事ぶりのような気がします。とりたてて目立つ感じではありませんが、表紙のデザインの勝利でしょうか? 本屋で平積みにしてあるとやたら目立つ一冊のような気がします。

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