東京レイヴンズ(1)SHAMAN*CLAN

東京レイヴンズ1  SHAMAN*CLAN (富士見ファンタジア文庫)

東京レイヴンズ1 SHAMAN*CLAN (富士見ファンタジア文庫)

ストーリー

まだ何も分かっていなかった幼い頃、土御門春虎は親戚の女の子と一つの約束を交わした。
その女の子はよく何もないところを見ては「何かいる」と言って、一緒にいる春虎の後ろに隠れるようにして怯えた。春虎にはそんな「何か」は見えなかったので、その女の子を「恐がり」だと言って責めたりした。そうするとその女の子はぐっと我慢をして、怖いのを押さえつけて春虎と遊ぶことを選んだ。
その子が「特別」で「見える子」だというのを知ったのはその後のことだった。そして春虎は今までの事を素直に女の子に謝ったのだった。そしてその子が言ってきた「シキタリ」やら「シキガミ」やらというよく分からない話をした後で、春虎はその女の子に約束をしたのだった。
いいよ。ぼく、なつめちゃんのシキガミになる。それでずっと一緒にいて、ずっとなつめちゃんを護ってあげるよ。
・・・そして時は流れ、今彼は高校生になっていた。シキガミが式神であることも、シキタリが旧家の約束事であることももう分かっていた。さらには、あのなつめちゃんが土御門夏目と呼ばれる将来を期待された天才陰陽術師のタマゴであることも。そして陰陽術師としての才能のない自分に彼女と交わる道はまずないし、その必要もないだろうと。
そうして春虎は夏目とは遠く離れ、高校のクラスメイトと仲良くやっていた。阿刃冬児というクールが売りの友人がいるし、春虎が男女と呼んでいる不思議な少女の北斗もいた。春虎はなんの変哲もない今の暮らしが気に入っていたし、それを変える気も全くなかった。――その日、ある出来事が起こるまでは。
という感じのバックグラウンドを持って始まるあざの耕平氏の新シリーズです。気がつけばもうじき2巻が出る訳ですが、今まで私は一体何をやっていたのでしょう・・・? という1巻の感想です。

和風ですか

なんとなくリスキーな気がするのは私だけですかね?
最近のライトノベルで、和風テイストで話を作って大成功した話って何かありましたっけ・・・? と思ったときちょっと考え込んでしまったからなんですが、まあ私が読んでないだけですかね。陰陽の京(だっけ?)とかあったような気がしますが、えー読んでないですすいません。でも大人気って訳でもないから(作者の人には悪いですが)いいよね・・・? そういえば刀語とか化物語とかは和風ネタを元に話を作っていましたが、アレは和風テイストというより西尾テイストなのでこの話からは除外してもいいかしらん? などと一人で考えてみたんですけど皆さんはどう思います?
あ、こんな前振りから書いてますが、この話がつまらなかったという話ではありませんので念のため。

とにかく

なんとなく「ライトノベルで和風は受けない(含む時代劇)」という印象を持っているんですが、どうなんでしょうか。個人的には「なんとなく身近な存在なので、いまいち夢がもてなくてのめり込めない」って感じなんですが・・・。いや陰陽師とか陰陽道なんてフツー身近じゃねえだろとか思うと思いますが、まあちょっと待ってください?
なんか聞いたところによると、ゴミが不法投棄されて困っているような場所に簡易的な鳥居とか設置したりすると不法投棄が止まる、なんて話があるそうです。お稲荷さんは祟ると困るから壊せないとかも聞きますよね・・・。つまり頭からは信じていなくても「そういうのってなんかあるんと違うか」と思っているところが日本人には確かにあって、で、21世紀にもなったというのに未だにそういう「よく分からないけどなんかある」的な信仰以前の原始的な恐怖感みたいなものと隣り合わせで生きているんだと思うんですよ。
つまり逆に言えば「そういうのってなんか怖いけど、実際にはない」という事を体験的に知っているから「夢がない」のかな〜とか思う訳です。陰陽道も古くから日本にあって様々なところに影響を残していたりするので、あらためて陰陽道とか言われても、今日の運勢とか占いといったレベルに無意識に落とし込んでしまって、興奮するまでには至らなくなっているのかな〜なんて思うのです。
まああくまで個人的な印象ですけどね? まあ以上のような理由から「ライトノベルで和風はリスキー」という感じを持っていたりするのです。

で、この話ですが

面白いかどうかと言えば面白いです。
富士見ファンタジア文庫でのあざの耕平氏の前シリーズ「BBB」程にはいきなりのめり込むような感じはありませんでしたが、話の筋を追いかけているだけでも普通に楽しいです。色々と世界設定とかもあったりしますが、そうした説明も過不足なく取り入れているのでストレスなく読み進めることが出来る感じです。
ただちょっと拍子抜けだったのが、主人公の春虎が他のライトノベルでも見かけるような熱血系+鈍感系という「ありがち」なキャラクターだった事と、基本的に主人公の春虎視点のみで話が語られているので話に奥行きが感じられなかった事と、春虎の友人の冬児のキャラ作りと配置にちょっと無理があるような・・・といった所が気になりました。
まあお陰でヒロインである北斗と夏目の「本当の気持ちが読者には分からない」という事になって、その不足部分を妄想で補った結果として、何やら色々と萌えたりする部分が多々あったりする訳ですが。でも「BBB」のミミコのような人間くさい魅力には欠ける感じです。どちらがいいって訳でもないんですが、拍子抜けしたのは事実ですね。

総合

う〜ん・・・星・・・3つ?
次も購入するのは決まりなんだけど星は3つです。面白い話とは言えると思いますが、何しろ作家があのあざの氏というだけで色々と期待してこちらのハードルを勝手に上げてしまっていますので、その分だけ評価が厳しくなってしまっているのかな? という気がしますが、勘弁してください。
まあ「スロースターター」と言われることもあるらしいあざの氏の作品なので、じっくり腰を据えてこの作品とも付き合っていく予定です。何しろ本当に始まったばかりですからね。でも、全部読んだけど結果として「合わないなー」とか思った「Dクラッカーズ」という作品もあったりしますので、油断は出来ませんけどね。
あと作品と全然関係ないし誰かのせいでもないんですが、陰陽師で「セーマン」とか聞くと自動的にアレな動画である「レッツゴー陰陽師」とかを思い出してしまって、緊張感のあるシーンなのに力が抜けてしまう私の脳が残念でした。誰かあの動画の記憶を消してくれー!
イラストはすみ兵氏です。カラー・白黒イラスト共に頑張っているという感じです。特にカラーでの色使いは独特で魅力がありますね。本文イラストの方はもうちょっと背景とかを描き込んで欲しいなとか思いましたが、悪くないです。

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