東京レイヴンズ(2)RAVEN"S NEST

ストーリー

土御門春虎の人生が一変する事件が起きてからしばらくの後、彼の姿は東京にある陰陽師育成機関である「陰陽塾」にあった。
親戚の少女である土御門夏目式神となった彼は普通の高校生であることを止め、陰陽師になることを目指し始めたのだった。「陰陽塾」という今までと全く違う環境に身を置くことになった春虎だったが、持ち前の性格で彼は順応しようとしていた。何故ならそこには元々の友人である阿刃冬児の姿があったし、なにより彼の仕えるべき主である夏目がいたからだった。夏目は土御門の「しきたり」に従って男装をして陰陽塾に通っていたが。
そうは言っても「陰陽塾」での春虎の立場は初日から難しいものだった。良くも悪くも彼の持つ「土御門」の名前は陰陽師にとっては無視できない名前であったし、中途半端な時期に編入してきたという事もその特異性を目立たせていたからだった。転校初日から同級生に絡まれる春虎と、そしてそれを不器用ながらも支えようとする夏目。幾つかのトラブルには見舞われたものの、とにかく新しい日々のお膳立ては整ったのだった。
そうして陰陽塾での日々が始まったのだったが、夏目と春虎は徐々にすれ違い始める。夏目の特殊な生まれは彼女を陰陽塾の中でも孤高の存在へと追いやっていたが、春虎は持ち前の人当たりの良さで陰陽塾の中に溶け込みつつあったのだった。同じ陰陽師を目指しながらも噛み合わない二人のリズムはやがて大きな軋轢を生むことになり・・・。
そうした行き違いは、ただの学生だったらちょっとしたケンカで済んだことかも知れなかった。が、夏目は最強の陰陽師である土御門夜行の生まれ変わりと言われる少女である。彼女の存在を危険視するものがいるのと同時に、その真逆の思想を持った危険な集団も存在したのである。そんな状況での夏目と春虎の行き違いは本格的な危険を呼び込むものでしかなかったのだった。
なんか1巻の感想書いてからすぐ2巻の感想ですが、うーん、無難にまとめてきたというか・・・。

新キャラ登場

という感じの新刊ですかね。今後メインになっていくキャラクターたちの顔見せというかキャラ立てというか、そんな感じの2巻ですね。1巻がつかみだったらこの2巻は本格的に話を広げ始めた最初の1冊という事になるような気がします。
新登場のキャラクターの一人目はコンですね。これがもう・・・なんというか思いっきり狙ってきているキャラクターでして、獣耳+尻尾+幼女という三連コンボの式神です。しかも春虎に仕えることになる式神という最初から非常に美味しいポジションにつけているキャラクターです。

「わわわ、わたくしこのたび、祖狐葛の葉が御末裔、つつ、土御門春虎様の護法たるを仰せつかりました、コン、と申します。ふふ、ふつ、不束者ではございますが、なにとぞ、よしなに――」

まあこの台詞だけで色々と分かるような気がしますが、春虎に絶対服従というか絶対的な忠誠を誓っている和装幼女という・・・まあとにかく今後の活躍が楽しみなキャラクターでもあります。基本装備としてドスとか持ってたりするのでなかなかに侮れません。得意技はヤクザアタック。かけ声は「命ァ獲ったるわ!」って感じですかね。ルックスは獣耳幼女ですが。
・・・春虎との間でお色気イベントっぽいものを起こしてくれたりして、夏目の嫉妬心とかを煽ってくれたりもするので一粒で二度美味しいのはまちがいありません。

で、

もう一人は倉橋京子という少女ですね。
春虎が転校初日にめざとく見つけた美少女な訳ですが、優れた陰陽師のタマゴであるのと同時に、夏目や春虎を敵視(?)しているというこれまたストライクど真ん中を狙ったっぽいキャラクターです。髪型はツインテールではありませんが、魂的にはツインテール(場合によっては縦ロールも追加)という感じがひしひしとする「お嬢様+高いプライド」というキャラですね。

「あなたのことを話してるのよ! なんとか言ったらどうなのっ? 土御門春虎!」

ライトノベル的には主人公との間に全力で「ある特定のフラグ」を立てに来ていると思われる発言をしたり行動をしたりする少女な訳ですが、まあおおよそ間違いはありません。ただしプロローグで色々と微妙な前振りがされるので、それが今後いつ爆発するのか興味津々という感じではあります。
この二人以外にも先生やら生徒やらで何人か出てくるんですが、基本野郎&オバサンなので略。・・・それにしてもこの二人、あざの耕平氏の作品としてはもの凄くステレオタイプなキャラクターを追加してきたな〜というのが本音です。まあ上手く使ってオリジナリティを出していくとは思いますけど、ここまでは凄く王道ですね。

物語ですが

こちらもシンプルに作っているという感じですね。上手く言えませんが・・・少年漫画的とでも言えばいいんでしょうか。白黒が比較的はっきりしている話になっています。
春虎と夏目がケンカしたりはしますが、敵味方が入れ替わるような事は起きませんし、敵は敵としていかにも敵らしいキャラクターを配置しています。まあ取りあえず雑魚っぽいけどそれなりに手強い敵を配置して様子見、といったところでしょうか。現時点では色々と不明な部分が多すぎるので善悪についてはなんとも言えませんが、安心して読んでいられる作りです。・・・ただしその分話の展開にスリルが足りていないような気がしますが・・・。
ああそれから、この2巻でやっと春虎視点以外で話が描写されるシーンが出てきます。それでもほんの少しだったりするんですが・・・。でもまあ、これがどんどんと増えてくるようになると、あざの耕平氏の本領発揮という感じになるんじゃないかな〜とか今は思っています。主人公クラスのキャラクターの魅力は当然として、その周囲にも良い味を出すキャラを上手く作るのには定評がある作家だと思ってますので、今後に期待というところですね。
個人的にはなるべく早いうちに春虎の相棒である阿刃冬児を魅力的に仕上げて欲しいとか思っています。なんかよく分かりませんが、彼がこの話を面白くする中心を握っているような気がするので・・・。

総合

う〜んやっぱり星3つかなあ?
決してつまらなくはないし、どちらかというと安心感すら感じられるんですが、ちょっと安心感がありすぎるという感じです。もうちょっとスリル+シリアス成分を増量しても良いんじゃないかなとか思ったんですが、どうですかね。まあ、星は3つですがあざの耕平氏の作品で途中で投げ出したくなるような大外れに会ったことはないので、今後も購入が確定している星3つです。
あ、そういえばこの話、氏の作品としては珍しく、少女キャラクターに素直に萌えて楽しめる作品になっています。とにかく素直になれないけど一途すぎるくらいに一途な少女である夏目を筆頭にして、コンと倉橋京子という面白そうなプラスアルファが登場したので、そういう路線だけでも充分に及第点はもらえるはずです。特に夏目の可愛らしさはちょっと今後が怖い感じです。シリアス萌えとでも言えばいいのか分かりませんが、今後もこの調子でやられ続けると、話が進んだら大変な萌え度になりそうです。
イラストはすみ兵氏です。カラーイラストの表現は結構好きですが、白黒イラストはもう一つ・・・な感じがしました。なんというか、絵にもうちょっと奥行きが欲しいところですね。背景なんかももう少し書き込んでくれると読者としては嬉しいところです。

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