くくるくる

くくるくる (ガガガ文庫)

くくるくる (ガガガ文庫)

ストーリー

語木璃一(かたるぎりいち)は日常を変えたくてこの街に引っ越してきた。親元を離れて一人暮らしも強引に始めた。一年ほど前に人工衛星が墜落してきたというこの街・東陽町でなら、ガチガチに固められた自分の現在と未来を変えられるかも知れないと思ったからだった。
何かが起きるかも知れないという理由のない期待に胸を膨らませての新生活。その「何か」は意外な方向から訪れた。通学路を変えての登校の最中、彼は一人の少女が見事なまでの首つり自殺を行おうとしている場面に遭遇する。あっけにとられた璃一だったが、逆にその首つり少女は璃一にこう言ってきたのだった。

「なんで、そこであたしを見つめているの? そうじっとじろじろ見られてるとまるであたしが銀幕のスターになったみたいな気がしてくるの」

通学路でどうみても首つり自殺をしようとしている女の子と出くわしたらそりゃ凝視してしまうだろうと思うのだが、結局彼女はこう言って納得したようだった。

守護天使さんなのね?」

・・・意味不明の台詞を口にしながら堂々と自殺を決行する女の子。しかし、それが実現することはなかった。切れるはずのない荒縄がぶっちんと切れて、少女は地面に落下したのだった。つまり、自殺失敗。しかも少女――名前は密森なゆたというらしい――が自殺に失敗するのはこれで通算百二十二回目だというのだ。
奇妙な出会いから始まる奇妙な少年と少女のつながり。恋物語なのかなんなのか? 自殺少女とそれを観察することに決めた少年。二人を中心として物語は回る――という感じの物語です。

ええー?

また「死にたがり」が出てくる話を引っ張ってきてしまったのかー? という事実に気がついたのはなんかこう読み出した後だったので何もかも手遅れな訳ですが(表紙をみて気付よ)、そっち方面では痛くもかゆくも無かったのでなんの問題もありませんでした。なにやら都合良く出来てますな、私の怒りセンサー。
話はヒロインの少女である密森なゆたが桜の木から荒縄を使って今まさにぶら下がろうとしている姿を主人公である語木璃一に発見される所からスタートします。白昼堂々の首つり自殺決行をヒロインがやらかしている訳ですが、どうやら彼女は「全力で死のうとしているのに死ねない」という悩みに悩まされている希有な少女だったりします。
百二十二回目の自殺をほぼ超常現象に邪魔されるような形で失敗した直後に、彼女はこう言い放ちます。

「そりゃあ、いまは死ねないけれど――」
何を勘違いしたのか、ぼくを勇気づけるように親指を立てていう。
「いつか必ず死んでみせるの」

イラストまで参照すると、どうにもニコニコしている状態でこう口走っている訳です。このポジティブな宣言に対して、今まで彼を取り巻いていた日常生活に倦みきっていた璃一は即座にこういったりしてしまいました。

「ぼくと結婚してくれませんか」

・・・うーん、こんな少女に何か一言だけ声をかけるのが許されているとしたら、こう言うしかないような気もしますが・・・。

しかし

なんなんでしょうこの「物語そのものがボタンを掛け違えていますよ感」。
話の展開に上手く没入出来ません。書かれているのは平易な言葉の羅列ですし、突拍子の無い展開なんかもライトノベルとしての要件をきっちり満たしているとも思えるんですが、なんですかこの異次元空間。ヒロインの真意も、主人公の真意も、はたまた作者がこの話で提示したいテーマもさっぱり想像がつきません。つーか、それが書かれた後もピンと来ませんでした。
これは話に責任があるのではなくて――私の感情と全く別次元で綴られた物語だという事を意味しているんじゃないかと思います。まるでエイリアンの書いた話を読んでいるみたいですね。でも不思議と読めなくはありません。心理的な衝突も追従も無いかわりにするすると読み進められてしまう所がまた何とも不思議ですね。
話の中に当たり前のように自殺が組み込まれているのに、そこには陰の気配(いわゆる太宰的な)が全くないという・・・ちなみに殺人犯とかも作中に出てくるんですが、それにも陰惨な気配がないどころがいっそ陽気ですらあります。変な話ですね。

お話の方は

うん・・・まあまあ?
キャラクターはなかなかに魅力的です。この話が璃一の語りで全ての出来事が綴られるせいでしょうか、ヒロインのなゆたは実に可愛らしい女の子です。彼の妹のありすという女の子とかも出てきますがこちらもとにかく魅力的です。話の長さの割には登場人物が少ない話になっていますが、それもまた一つの魅力ですかね。最少人数で上手くやっつけた感じがあります。
んで、最後まで読むと・・・おやおやおや? これはつまりある種の叙述トリックというヤツになるのかしらん? なんて思うのですが、どうなんでしょ? それともらしくどんでん返しとでも表現するべきか? まんまと騙されたー! とひっくり返るべきなのかも知れませんが、ひっくり返るほどの事はされてないような気もしますし、果たして作者がそういうつもりで書いていたのかどうかも定かではないというか、定かなんだけど本当に予定していたとおりなのか良く分からないというか、そんな感じです。
ミステリーでこれに引っかかると「やられたー!」って気分になりますが、この話ではそんな気分に全くならなかったです。何故かは良く分かりません。「分かってたまるか」というのと「分かったからなんじゃい」という両方の気分が同居していたからのような気がします。まあいいです。
とにかく終盤には「どんどんでんでん返し」って感じのアレがあります。ナニ? どんとでんが多い? でもまあそんな気分なんですよ。

総合

星3つなのかなー?
恋物語なんでしょうけど、ときめくとかそんなこっぱずかしい感情は全くなくて、うん、さっぱりだ。読む本を間違えたというか不思議な程の場違い感が最後まで一杯でした。つまり私は物語の出来が悪いという事を言いたいのではなくて「この話を読んだ俺が悪かった」という感じです。私でなければ全く違う感性で読むことができるでしょうから、全然違う感想がありそうです。
これから他の人の感想でもあさってみようと思いますが、そこで作者の人を真意にちゃんと寄り添った楽しい感想とか発見したら、なんか妙に劣等感を刺激されそうな感じです。そんなことになったら「ふん、どうせ俺は感情移入できませんでしたよ、低級な読み手でどうもすいませんねーこんちくしょう!」とか言ってふて寝しようと思いますので、どうかこの辺で勘弁して下さい。
イラストは大朋めがね氏です。透明感のある色遣いが魅力的ですね。本編中の白黒イラストも特別凝っているとは思えませんでしたが、悪くないんじゃないでしょうか。いつもだったら「背景の余白が気になる」とか言ってそうですが、作品に入れなかった関係でそこまで思えませんでした。ぶっちゃけ本編よりイラストの方が入りやすかったからじゃないかと思います。・・・なんかすみません。

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