社会的には死んでも君を!

社会的には死んでも君を! (MF文庫J)

社会的には死んでも君を! (MF文庫J)

ストーリー

薩摩八平は新高校一年生としての新しい始まりに色々と賭けていた。
中学時代、あることを切っ掛けに始まったと思われる謎の現象に学校生活をメチャメチャにされてしまったからだ。その謎の現象とは・・・名付けて「ラブコメ現象」。強制的にラブコメっぽいお色気現象に八平を巻き込むというこの嬉し恥ずかしな超常現象は、リアルでやらかすと人生を破壊するのだった。現実は厳しい。
そしてラブコメ現象の原因になったと思われるのが同時期に彼に取り憑いたと思われる香月という和服少女の幽霊だったりする。この少女は八平にしか見えないので、彼女の相手をしていると必然的に一人で怪しげな行動を取っていると見られてしまい、やはり世間の目は冷たいという事になるのだった。
ただし、香月としては八平に取り憑くのも迷惑をかけるのも本意ではないらしく、ラブコメ現象を回避するために色々と協力をしてくれている、八平も努力の人なので、体を鍛え、身だしなみに気を遣い、もしラブコメ現象に巻き込まれても被害を最小限にするべく日夜努力を重ねていたのだった。
そして遂には新しい暮らしを始めるための第一歩である高校入学である。意気込みも新たに新生活を始める八平だったが、そこには白眼視された中学時代とは違った困難が待ち受けていたのだった・・・。
という感じで始まるライトノベルです。

ライトすぎるノベル

ですね。というか最近(?)のMF文庫全体がそういう傾向の気がするので、個人的にはMF地雷文庫という感じになりつつあるんですけどね。冗談みたいに文字数が少ないので読みやすいのはいいんですが(いいのか?)、何しろ物語に骨らしい骨がないのでもうフニャフニャです。当然背骨なんてある訳がないので無脊椎MF文庫としても全く問題ないです。
だからと言って世間様的に人気が無いわけでもないみたいなので、ボクシングの階級を一つ下げる感じでライトノベルから「フェザーノベル」に変えたらどうでしょうか。別に私もこき下ろしたくてこういう事を書いているわけではなくてですね・・・なんというか他の作品と同じ評価軸で評価するのが困難になりつつあるとかそんな気分なもので。ハイ。

作品の方は

非常に分かりやすく基本ハーレムスタイルのライトノベルです。
主人公の薩摩八平は幽霊らしき和服姿の少女・香月に偶然取り憑かれて以来、謎の「ラブコメ現象」と呼ばれる超常現象が発生する体質になってしまい、それによって中学時代を棒に振ったという苦い過去を持つ少年だったりします。・・・まあ普通に考えれば偶然チチ揉んだりこけて股間に顔突っ込んだりすれば、白い目で見られるようになるわな・・・という変なところでリアルな過去の設定です。
で、この話は八平が高校に入学する初日からスタートする訳ですが、八平は努力の人なので(変に好印象ですね)、ラブコメ現象に対抗するために体を鍛えて力尽くで手がチチを揉んだりするのを避けようとしたり、足腰を鍛えてこけたりしないようにしていたりするわけです。八平は今までのラブコメ現象の傾向と対策をまとめた「ラブコメ現象対策マニュアル」などというものを自作しており、ラブコメ現象に人生を破壊されないよう涙ぐましい努力を見せてはいたりするんですが、まあそんな努力も空しく色々と起こる・・・というのがこの本の流れです。

ただし

八平の中学時代と一つだけ違うのは、このラブコメ現象がもの凄くいい方向に作用する事ですかね。
まあそうじゃないと色々と痛いだけの本になってしまいますし、いつ主人公が警察のお世話になるかという別の意味でドキドキする作品になっちゃいますのでね。まあそう言うことです。
で、この手のフェザーノベルの例に漏れずヒロイン(群)も色々取りそろえておりまして、ストーカー気質バリバリの美女で義理の姉(!)の薩摩霧子、イキナリ好感度MAX少女の染谷佳乃、男っぽく見せつつも実は・・・という女の子生徒会長・北見鈴音といった所です。でもま基本的にメインヒロインは幽霊の香月なので、ラブコメ現象に巻き込まれる平八を見て色々と悶々とする香月の姿を愛でるというスタイルも充分にとれます。
まあ派手にぶっちゃけると平八の本命は香月なので、他の女性陣からは一歩腰が引けた状態です。しかし幽霊が本命とは・・・業の深い少年ではありますな。

後は

難しいことは何もないです。ハーレムスタイルのラブコメにありがちな事に主人公の八平は見事なまでのツッコミですし、少女達は次々とボケ(色ボケ?)をかましてくるので、そのやりとりを見ているうちに気がついたら読了です。
ただし八平自体はそれなりにスケベですけど努力家で見所のある少年なのでそこらへんはまあプラスですね。ヒロインの香月も単に迷惑を振りまいている類の幽霊ではなくて、八平がラブコメ現象に負けずにまともな生活を送れるようにと協力を惜しまない少女なので、読んでいてなんか気分がいいのも確かです。
でもやっぱり主人公が女の子の好意にニブチンなのはお約束過ぎるほどお約束なので、その辺りはもう少し新しい路線を模索して欲しいところですね。もちろんこの本に限らずラブコメを書いている作家さん全員への永遠の宿題ですけど。
・・・うん、まあそんな作品ですかね?

総合

このままだと永遠の星3つ。
「コーラを飲んだらゲップが出るくらい確実」な展開を期待しつつ読む分には安心な作品として仕上がっていますが、それ以上でも以下でもないので過度な期待は禁物です。ただ、作者の人は新人らしいのにキャラクター描写にブレが無かったように感じたのでそこはプラスのポイントですね。
で、個人的に結構上手いなと感じたのがタイトルでして、死んでいるらしき香月が本命という展開と、八平にしか見えない香月を相手にしているという端から見たら異様な行動を取っているであろう八平の姿と、ラブコメ現象に巻き込まれて社会的に死にそうな状況を掛け合わせて一つのタイトルに上手くまとめたな、という感じです。あまり長いタイトルは好きじゃないんですが、まあ上手いものは上手いのかなと。
イラストは明星かがよ氏です。カラーイラストで差を付けるのはなかなか難しい昨今、ポイントの稼ぎ場所と言えば本文内の白黒イラストなんですが、背景が白いということも殆どなく、充分に頑張ったと言えるんじゃないでしょうか。少なくとも及第点はあげられる出来になっていると思います。

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