魔法科高校の劣等生(2)入学編<下>
- 作者: 佐島勤,石田可奈
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2011/08/10
- メディア: 文庫
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ストーリー
魔法という存在が科学的に解析され、才能のあるものであれば教育によってその能力を伸ばすことが出来るようになった未来世界。
そこには「魔法師」としての将来を嘱望されるエリートたちが集う教育機関があった。国立魔法大学付属第一高校。通称「魔法科高校」。司波達也(しばたつや)と司波深雪(しばみゆき)はこの春からその「魔法科高校」に通うことになった兄妹である。しかし、兄は補欠の「二科生」、妹は成績優秀者として「一科生」としての入学だった。
ただ、兄に心酔する妹の深雪はその事実が気に入らない。本当に優秀なのはお兄様の方なのに――。そんな憤懣やるかたない気持ちを隠そうともしない妹に対して、兄の達也は苦笑しながら深雪の頭を撫でてやるのだった。そうしてやれば怒っている妹はまあ、満足げな顔をして一時的には大人しくしてくれるのだ。
しかしなし崩しと言うべきか、兄の達也は時として魔法に対しての実力行使すら必要とされる風紀委員としてスカウトされ、妹の深雪は生徒会に参加することとなっていた。そして、入学早々と言っていい時期にもかかわらず、達也は既に学内での有名人になりつつあった。まず一つには、二科生からの異例とも言える風紀委員への抜擢、そしてさらにはトラブルを起こした生徒を多対一で叩きのめしたという戦闘能力の高さを妬んだものだった。
切っ掛けとなった暴力事件はある意味で魔法科学校としては些細とも言えるはずの出来事だったが、いつの間にか学校外部の勢力を巻き込んだ事件へと発展していく。そしてその渦中には司波兄妹の姿があったのだった・・・。
という感じで上巻から続いての下巻です。
うーん・・・
期待はずれというのが本音です。
いや、世界観は魅力的ですし、主人公を取り巻く状況も入り組みつつも説明が丁寧で良い感じです。・・・なのになんですかねこの面白くない感じは。つまらない、ではなくて、面白くないというのが語感的に近いとか個人的に思うんですが、どうでしょうかね。
とにかく強烈に感じるのは主人公を含めた登場人物たちの魅力の無さです。特に主人公、若者らしい魅力が全くないですよ。まあ、「クールでイケてて頭もいいし強い、でも本人はそんなこと鼻にもかけない」という感じのアリアリの主人公が大活躍する作品が読みたい場合には全力でおすすめしたい所です(ライトノベルを読む動機の中にはそういう気持ちがなくもないでしょう?)が、そうでない場合は避けて通るべきです。
読んだことある人にしか通用しない説明ですが、秋せつらを中高生向けライトノベルで半端にリメイクしたらこうなったという感じです。つまり「全く可愛げがありません」。まあ別に可愛げがあればいいってもんでもないですけど、なんかもうちょっと人間的な隙を作ってくれないと愛せませんねこの主人公。少なくとも大きなお友達(私の世代って事ですが)受けはしにくいんじゃないかと思います。
というかタイトルに「劣等生」と付いていますけど、それを読者に感じさせる部分がほとんど無い所がまた微妙です。作中の登場人物は達也が「劣等生である」という事をある程度納得出来るのかも知れませんが、物語を俯瞰で眺めている私からすれば、ちゃんちゃらおかしいですね。だって、達也くんイケメンでチョー優秀なんだもん!
まあ
主人公だけじゃないと書いたとおり、他の登場人物も総じてそんな感じです。
強いて言えばヒロインの深雪は重度のブラコンが目立つので魅力があるかな? と思うくらいで、後はイマイチですね・・・。西条レオンハルトや千葉エリカといったクラスメイトは上巻から登場してきていますが、西条の方はどうもふわふわと印象が定まりません。口が悪いと言うことだけは確かなようですが・・・。
またエリカの方は気がついたら敵とチャンバラを堂々とやっていたりして(作中ではそれなりに裏もあるようですが)、なんだか突然表舞台に出てきたという印象が拭えませんでしたね。というか私闘が平然と認められる状況なら、風紀委員とかあろうがなかろうがどうでもいいんじゃ? とか思ったんですけどその辺りはどうなんすかね。
まあそうした展開も作中に隠された背景によって正当化されるのかも知れませんが、そこまで追う気持ちになれません。ライトノベルというのは多かれ少なかれご都合主義に満ちているものですが、この作品は「作者が気持ちよくなるためのご都合主義」が多すぎます。ご都合主義でも「読者を気持ちよくするためのご都合主義」なら許せるんですがね。
所詮は「Webで趣味で書いていた作品」だな、とか思いました。3000万PVって凄い数字だと思うんですけど、このブログで星に換算すると・・・?
総合
3000万PV=星3つです。
いくら数字をたたき出しても商業ラインに乗っていない数字は参考になりませんね・・・というのが今回はっきりと分かったことでした。まあもちろんこの物語を楽しく読む人も多くいるんでしょうが、私ははっきりと「面白くない」と言いたいですね。少なくとも、一冊500円以上の価格を取ることが出来る内容だとは思えませんでした。そうですね・・・200円くらいが妥当な価格設定じゃないでしょうか。
映画で言えば劇場で観させられたら不満たらたらになりますが、レンタルDVDなら新作価格でもまあアリじゃないか・・・? という所でしょうかね。だから「つまらない」とは言いません。良く出来ていることは良く出来ているからです。ただそれは=「面白い」ではないという事です。少なくとも、私にとっては。
逆に、高く評価したいのが石田可奈氏のイラストです。丁寧に描かれたカラーイラストはもちろんですが、作中に挿入されている白黒イラストの表現の多彩さは最近余り見ないレベルに達していると思います。凝った構図の絵があるかと思えば、漫画的なコマ割を利用した多角的な人物の描写があったり、あるいはコミカルな表現を使用していたりと見る側を飽きさせない努力、作品を面白く切り取ろうとする意欲をビシビシと感じる絵が多かったです。今後もこの調子で頑張って欲しいですね。