紅〜ギロチン

紅―ギロチン (集英社スーパーダッシュ文庫)
紅―ギロチン (集英社スーパーダッシュ文庫)山本 ヤマト

集英社 2006-07
売り上げランキング : 3574

おすすめ平均 star
starベタな展開が好きだ
star挿絵・・・イイ 
starすばらしいバランスの良さ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

「紅」の続刊にあたる「紅〜ギロチン」を今回は取り上げます。「電波的な彼女」シリーズについても追々取り上げる予定ですが、まあこっちから。
以前書いた「紅」の感想はこちら
「紅」はもちろん紅真九郎の物語なのですが、沢山のサブキャラクターが登場する本でもあると思っています。実は片山憲太郎はキャラの書き分けとか使い方が意外と上手な作家なんじゃないかな、なんて印象を持っています。「紅」はテキスト量から考えると台詞のあるキャラが大量に出る作品だと思いますが、その割には読んでいて「あれ、これダレだっけ?」と言った事が起こりにくいように感じます。正直その辺りについては良く引き合いに出される西尾維新の「戯言シリーズ」よりも優れているかななんて思っていたり(西尾ファンの人ごめんなさい)。
いかにもラノベといった感じのキャラクター設定ももちろんなのですが(例えば「闇絵」とか「武藤環」とか)、それにも増してキャラクターの使いどころがうまいと思います。「紅〜ギロチン」では闇絵が主人公の真九郎を偶然助けるシーンが出てきますが、唐突な登場の割にはあまり登場シーンにわざとらしさを感じません。環についてもそうです。殆どストーリー的には役に立ちませんが。
(追記)「紅」の時にも上記と似た様な事書いてた・・・うーん。
まあ前書きはこの程度にしておいて、本編の感想です。今回は真九郎が揉め事処理屋としての岐路に立たされる話です。「悪宇商会(無茶な名前だ!)」からのスカウトを受けて、それの試験を受ける事になるのですが・・・そこに今回のサブタイトルにもついている「ギロチン」こと「斬島切彦(これも無茶な名前だ!)」が登場する事になります。ギロチンと呼ばれるだけの事はある戦闘能力を持った経験豊かな斬島切彦と、まだまだ駆け出しの揉め事処理屋の真九郎。一つの依頼を挟んで彼らの血なまぐさい戦いが始まります。
しかし、相変わらず血の気の多い作品です。「勧善懲悪」とか「一人の人間の命は星より重い」とかの美しい希望や理想を心の中に抱えている人は読まない方が良いでしょう。これは人が死ぬ話です。自ら死を選ぶ人間すら出てきかねない話ですので不快な気分になると思います。それ以外の人にはおすすめ出来ると思います。
一通り読んでみてはっきりする事は、「ああ、この話のヒロインはやっぱり九鳳院紫(7)なんだなあ」でしょうか。子供の癖にその存在感と重要度が並ではありません。子供とは言え九鳳院、といった所でしょうか。しかしまだ7歳なので真九郎の目の前で平気で生着替えもしますし、可愛いパンツを選んでもらう事にも全く抵抗を感じていません。真九郎がロリコンだった場合にはこの作品は別のレーベルから出版される事になったであろう程の無邪気っぷりです。よし、おじさんがあめ玉をあげよう。
・・・変態的な発言はこの位にして、幾つかキャラクターの印象的な台詞をピックアップしてみます。

九鳳院紫

「この部分も、よく分からん。ここで女が言っている『わたしの中にぶちまけて!』とは、男に何をぶちまけてほしいのだ?」

こんな事を突然美幼女に聞かれたら普通の青少年は心臓が止まります。

崩月夕乃

「真九郎さんが来てくれたらうれしいなって、ずっと思ってたんですけど、そんなことあるわけないですよね。夕乃さんお疲れさま。夕乃さん頑張ってるね。夕乃さん可愛いね。そんなふうに、真九郎さんが働いているわたしを励ましに来てくれるなんて甘い話、あるわけないですよね。わたし、バカだな。自分勝手な夢を見ちゃってました。恥ずかしいなあ……」

こういう発言をする夕乃さんも凄い(怖い)ですが、年上の美人のおねえさんにここまで言わせる真九郎はほんとうに馬鹿だな。一秒でも早く押し倒せ。

村上銀子

「幼稚園のとき、一緒にお風呂に入ったあたしの胸を触りたがった紅真九郎くん。ちゃんと触らせてあげたあたしに、何か文句でも?」

銀子は実に良い性格をしていますが、このツンツン感が今の所堪らない魅力ですね。
いずれにしても、真九郎は立場をはっきりさせて紫と駆け落ちでもするか、崩月家の跡取りの道か、村上ラーメン屋の店主を目指す道かを一度真剣に検討した方がいいと思う。というか検討しろ。これオジサンからの助言。愛されているってのはね?大事よ?マジで?
実は後一人、引用したい台詞を吐く人物がいるのですがそのまま作品の楽しさに関連しますので割愛。
色々ごった煮感のある片山作品ですが、「紅」は実は意外と安心して楽しめるシリーズです。今回もこの一冊でストーリーは一応纏まりますし、最後はびしっと真九郎が締めてくれます。
最後に一言。「7歳でも恋する女は強ぇ〜な」
うん、楽しい本ですよ。難しく考えずに読んでみると良いんじゃないかな。おすすめです。

感想リンク
booklines.net