聖刻1092(1)〜(3)聖都編

聖刻1092聖都編 I (ソノラマノベルズ)

聖刻1092聖都編 I (ソノラマノベルズ)

聖刻1092 聖都(弐) (ソノラマノベルズ)

聖刻1092 聖都(弐) (ソノラマノベルズ)

聖刻1092 聖都 (参) (ソノラマノベルズ)

聖刻1092 聖都 (参) (ソノラマノベルズ)

本当は文庫のサイズで出ていた表紙が幡池裕行の旧版をお勧めしたい所ですが、非常に手に入りづらい状況にあるようなので、新装版のリンクを張っておきます。

前書き

聖刻1092は「ワースブレイド」というテーブルトークRPGのルールを踏まえた世界観で展開する「ワースブレイド」の案内書のような作品だったはずですが、多分本家のTTRPGよりも有名なはずです。
この話は「中原」と呼ばれる乾燥地帯を舞台の中心とした物語です。聖刻1092の世界では「操兵」と呼ばれる「聖刻(古く神話の時代から続く力)」によって動作する人型兵器や、「聖刻」の力を加工して「操兵」の製造などを行う軍産複合体(多分現代的に表現すればこんな感じ)の東方聖刻教会西方工呪会などが国々に対して権力の根を張り、さらにその裏で暗躍する「錬法」と呼ばれる魔法体系を利用した「錬法師」達や、各地に根を張るラマス教などなどなどの第三勢力があります。
正直語り出したらきりがありませんが、「ワースブレイド」の設定をそのまま利用した非常に奥深い世界観を背景に主人公のフェンと、彼と出会い、旅を共にする仲間たちの冒険の物語です

簡単なストーリー紹介

フェンは中原の辺境の村・カロウナで育った大男です。実はラマス教(イメージとしては少林寺みたいな感じか?)の見習い僧侶で、まだ若いですが騎士に憧れている無鉄砲かつ強靭な若者です。ある時幼馴染の娘・リムリアが謎の傭兵団(もちろん操兵付き)に攫われてしまう事で、彼女を追うように父親譲りの白い操兵・ヴァシュマールを駆って旅に出ることになるのですが・・・という導入です。そしてフェンはリムリアを捜し求める旅の過程で中原全土を巻き込む大きな陰謀と謎に巻き込まれていくことになるのですが・・・。
物語の当初から結構多くのキャラクターが出てくるのですが、それぞれのキャラが非常に良く立っていて魅力的に描かれており、非常に読ませます。また下地にTTRPGの世界観を持っているため、風土や交易の様子、人々の暮らしなどがかなり細かく書き込まれていてそれも魅力の一つです。

おすすめですが注意

個人的におすすめ出来るのは旧ソノラマ文庫における「旋風の狩猟機」〜「光風の快男児」までの「聖都編」と呼ばれている誘拐されたリムリアの奪回と、「聖華八門」と名乗る錬法師達との争いを描いたシリーズです。正直冒険活劇物として文句の無い面白さです。当時出版されるのが待ち遠しくて、出版されると即買っていた事を思い出します。
ただし! この作者は物語を作り出した当初はいわゆる「少数パーティの血沸き肉踊る痛快冒険ファンタジー」を書いてくれるのですが、物語の舞台や登場人物が一通りそろいだすとなぜか大風呂敷を広げ始め、大軍同士が激突する戦乱物や権力闘争を書きたがる傾向があって、大抵グダグダ・・・というか話の作りが大きく変わるので、従来のファンを置いてけぼりにする傾向があります。
「聖都編」が終わった後には「東方編」「黒き僧正編」と呼ばれる続編があるのですが、個人的にはだんだんつまらなくなってしまいました。そもそも主役が活躍しなくなるし・・・。多分避けて通った方が吉でしょう。まあ読みたい人はもちろん止めませんが・・・微妙に茨の道だと思います。まだ続編も出版されているはずです。
ちなみに同作者の聖刻群狼伝と聖刻群龍伝も同じような関係にあって、「狼」は冒険ファンタジーと呼べるでしょうが「龍」は国同士の戦乱物となってしまいます。まあ好きな人はついて行けるのでしょうか、私は途中でギブアップしました。
しかし聖刻1092の「聖都編」までは間違いのない面白さだと思いますので、読んだ事が無ければ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。おすすめです。