狼と香辛料

狼と香辛料 (電撃文庫)
狼と香辛料 (電撃文庫)支倉 凍砂

メディアワークス 2006-02
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おすすめ平均 star
star薫る本
star若さとアイディアを評価する。
star良作と言っていい作品

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あ、適当なカテゴリが無い。まあしょうがない。
いまさら感がもの凄くある「狼と香辛料 (電撃文庫)」の感想を、一応書いてみようと思う。既に山ほどネット上に感想やらレビューが存在する訳で、まあ、あまり、意味があるとも思えないのだけど、書かないなら書かないで悔しい。ああ、謎心理。
とりあえず幾つかの切り口で「狼と香辛料 (電撃文庫)」の感想を書いてみようと思う。

商業ミステリ?として

ライトノベルにはこの「商業ミステリ(いま勝手に考えた)」なる分野は今までなかったと思う。まさしくこの作者が新規に発掘したといっていい分野だと思います。現代的に一番分かりやすいのはネットトレーディングにまつわる金儲けの悲喜こもごも、謎の銘柄の高騰に右往左往する投資家達、円高/円安に直撃を受ける輸入/輸出業者、といった感じでしょうか。
物語の舞台は中世の西洋的世界観で語られますが、金が無くなるかも/金が凄い儲かるかもという緊張感は時代を超えてリアリティがあります。もしかしたら明日になったら銀行の預金残高がゼロになるかも知れない、なんて緊張感は。他人事じゃないものね。正直、戦乱絵巻物で鎧武者が何人死んでもピンとこない(来る筈が無い。似た様な経験なんてあったら怖い)のだが、金が減るのは良く有る事だものね。もの凄くドキドキする。手に汗を握ってしまう。

ファンタジーとして

上記の「商業ミステリ?」を西洋的ファンタジー世界観に上手く包んで表現して、読者を引き込む作者の手腕がまた評価出来ます。商取引が街と街の間で普通に成立する様な世の中でありながらもファンタジックな過去の怪異の類いがまだまだ残っており、人々の中に決して否定出来ないような伝承となって生き残っています。
少し詳しく言い直せば、政治的には王侯貴族の類いが十分な勢力を持って支配しており、民主主義などは成立していない物の、税金や関税に関する特例などは現実に力を持って人々の生活に影響を及ぼしている程度には近代的なのですが、同時に古いものも渾然一体となって存在している、そういう世界観。
この世界では、盗賊が街道にはびこるのと同時に、まだ山奥や深い森には何かがいるのです。もちろんトトロのような甘っちょろい相手ではない。明らかな魔法のような類いが飛び交う様な事は無いのだけれど、人々の間では真夜中に囁かれるように魔法が存在する、そういう世界。この辺りの新旧入り交じる感じの描写が絶妙。大人気になるのも頷けます。

萌え本として

言わずとしれた2chの「支倉凍砂スレ」に大量の抱き枕梱包業者を生み出す事となったホロの可愛さは異常。同時に「ホロ語」を口走るレビュアーが大量に出現する事となった。「〜でありんす」「〜してくりゃれ?」「わっちは〜」などなど。実際には吉原あたりで昔使われていた花魁や遊女の言葉なのだろうけど、これが耳付き+しっぽふさふさ+賢狼ホロの口から語られるとその破壊力たるや凄まじい。死屍累々。一体どんだけの人間がホロのせいで道を踏み外したか・・・。
もちろん言葉使いだけではない。ホロは豊穣の神と呼ばれる力のある存在でありながら、日本的八百万の神々の様に人との距離が近い。簡単に怒りもすれば、泣きもする。不安になったりもするし、リンゴ一つで簡単に喜んだりもする。男を一発でK.O.する必殺技を大量に持った見事なヒロインです。まあ、萌えというキーワードに反応する人は読まない手はないでしょう。
あ、もう一人の主役のロレンスは? まあ「狼と香辛料 (電撃文庫)」は彼の語りで進行する彼の話でもあるから、まあいいか。非常に標準的な男で、ということは女心の分からない朴念仁で、比較的踊らされやすく、金儲けのために商人なのに悪人にはなりきれないという実に、ああ、標準的で可愛いと言えば可愛い所のある青年です。意外と女性読者にもウケているのかも・・・。この辺りは女性の意見を聞きたい所ですね。

総評

とにかく楽しい本ですので、権威主義的な有名文学賞受賞者の変な若造の書いた無駄にこねくり回した純文学のフリをしたつまらない挙げ句一冊あたりの単価が高い作品読むんだったらこっちを読みましょう。損しません。文倉十の書くイラストのホロも最高に可愛いですよ。本屋のラノベエリアで、不思議な笑顔を浮かべながらこちらをじっと見る赤い瞳の少女がいたらそれがホロです。読んだ事の無い方は、手に取ってレジに行きましょう。
この本買い占めたら利益が出るかって? いや、それは無理かな・・・どんどん重版かかるだけだって。作者と出版社は喜ぶだろうけどねぇ、銀貨じゃないんだから。え、うんうん、「買い占め」とか思う段階でもう十分「狼と香辛料 (電撃文庫)」にやられちゃってるから、どうせ2巻も3巻ももう持っているでしょ。うん、ホロが家にいるって? ホロは俺の嫁? ああ分かってる分かってる、それは抱き枕のホロだから。じゃあ、俺と一緒にホロの抱き枕の梱包作業に戻ろうな?