魔女の生徒会長
魔女の生徒会長 (MF文庫 J あ 2-7) | |
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ストーリー
ここは第三大日本帝国にある帝都世紀末学園。天才から最悪の連中までを広大な敷地に詰め込んだ、およそ「なんでもあり」と言える学院。
で、そこに一人の生徒会長がいた。名前を剣シロオ(つるぎしろお)といい、自称「魔女」の少女である。そして物語の語り部は恋塚ミミクロ(こいつかみみくろ)という少年。幼き日にシロオが魔女になるための生け贄に捧げられ、生死の境を彷徨った結果、シロオに「死んだと思われ」、その存在を「シロオにだけ」認識されなくなった少年である。彼も生徒会関係者として学院で活動していた。
変な若者がこれでもかと詰め込まれた学院の中にある一つの掟——曰く、
『この学園では何をするのも自由だ。
ただし生徒会長には逆らうな!』
魔女の生徒会長と、学園の問題児達が巻き起こすトンデモアクションストーリーの1巻です。
いかにも
日日日といった感じの作風ですね。
ぶっ飛んだキャラクター設定と世界設定に引きずられるようにして作られる学園ものは「アンダカの怪造学」などを始めとする作品群を見れば分かる通り日日日のお得意の路線ですね。
違っているようで同じような学園を舞台にして作品を作っている割には、ちゃんとそれなりに面白い所が見事と言えるんじゃないでしょうか。
ちょっと主人公を始めとするキャラクターを追いかけてみたいと思います。
剣シロオ
自称・魔女。
恋塚ミミクロの幼なじみであるのだが、彼を生け贄に捧げて魔女になったと思い込んでいるため、ミミクロの存在だけを認識出来ないちょっと壊れた所がある生徒会長。自称・魔女なので本当に魔女の力があるのかというと・・・疑問ではある。
しかし、少女とは思えないほどの超絶戦闘能力の持ち主であり、北斗の拳に出てくるモヒカン系の雑魚なら瞬殺でき、中ボスクラスも概ね瞬殺出来る恐るべき少女であります。
嫌いなモノベスト3は「嘘、不正、苛め」となっており、それをやらかした奴には容赦しないという恐るべき少女でもあります。
「一度でも嘘を吐いた子はぁッ……いずれまた嘘を吐くのよ! 信じない! もう信じない! 許す? ダメ! 蹴らない? ダメ! ダあ————ッメ! 蹴るぅ! 蹴る蹴る蹴る蹴る蹴るぅぅうウウッ!」
・・・まあ普段はもうちょっとマトモなんですけどね・・・。
恋塚ミミクロ
物語の語り部。
取り立てて変わった所はないような・・・あるような・・・なんだか謎めいた語り部です。剣シロオの幼なじみで彼女を心配したり手伝ったりしているのだけど、剣シロオには一切認識されないという悲しい状態の主人公(?)。
「あいつの幼なじみの恋塚ミミクロは死にましたよ」
俺は吐き捨て、嘲笑う。
「あいつの手で悪魔の生け贄に捧げられてね……だからあいつは悪魔と契約した魔女で、俺は……なんだ、悪魔の食い残しってわけですよ。あいつの目には俺が見えない——あいつが魔女でいるかぎり、あいつが魔女になるために生け贄にされた俺も死人なんですよ」
捻くれているのかいないのか、ちょっとはっきりしない所のある少年ですが、基本的に悪人ではないようです。生徒会の同僚(?)の少女の淀川ドロシーを弄って遊ぶのが好き。
淀川ドロシー
生徒会においては普通人・・・のような・・・そうでもないような・・・怪しい所のある生徒会書記です。特殊能力らしきものは持っていないようですが、時々性格が豹変し、もの凄い戦闘力を発揮する事があったりしますが、基本的に良い感じの少女です・・・かね?
「ひゃ……ひゃんでっ、ひょいひゅかくんっ……あたひっ、いひめっ」
「あれぇ? 先輩、どうしたんですか涙浮かべちゃって? 泣くんですか? 泣くんですか? ははは! ほぅら泣くぞ! そら泣くぞ! 先輩のくせに後輩に苛められて泣いちゃうなんて——」
「——————………………死ねッ」
豹変したら殺人技が自動発動します。相手はミミクロですが・・・まあ殺人技が発動するのを知っていてつっついているミミクロが悪いんですけどね。
ストーリー的には
学園異能バトルもの、という感じですね。
主人公達の学園は、
- A校舎『天国』(成績優秀者達があつまる天才達の楽園)
- B校舎『無法地帯』(プチ北斗の拳的世界。校舎の中でバイクが走り回ったり)
- C校舎『魔界』(?)
- D校舎『汚染区域』(?)
というような通称がついておりまして、今回の舞台はA-B校舎です。それでも血で血を洗うような闘争が発生してしまうので、CやらD校舎が舞台になったら一体どんな話になってしまうのか、想像すると訳が分かりませんね。
まあともかく
日日日氏の学校に対する鋭い認識が冴え渡っている所もあったりして、楽しめたりする作品ですね。ちょっと魅力的に感じた部分をピックアップしてみます。
「背の高さ低さ、体型に髪の色、瞳の色、同性愛者や障害をもつひと——マイノリティ、そういう、大衆とわずかでも違っていると思われる部分を、個性でなく欠点とみて、そこを責める、貶める、罵る、……苛める。そうすることで、自分が優れているという自信を得て、安堵する。それが苛めのメカニズムなのでは?」
村社会と言われるはてなでも、こんな行動をとっていると思える人、いますね。・・・俺も気をつけよう。他人事じゃない。